二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第36話

エレシュキガルにメソポタミアの冥界に連行された俺は、しばらくの間エレシュキガルの手伝いをする事になった。

 

その手伝いの内容は主に冥界にいる神々から権能を剥奪する事だ。

 

権能は魂に刻み込まれている為、それを剥奪するのはそれなりに労力が必要だ。

 

ニヌルタの配下だった神の戦士は権能の剥奪に協力的だったが、エンリルとイシュタルはもの凄い反抗をした。

 

まぁ、エレシュキガルはこうなる事がわかっていたので俺に手伝わせたのだが…。

 

曲がりなりにもメソポタミアで最高級の神だったエンリルとイシュタルから、力付くで権能を剥奪するのは困難を極める。

 

なのでエレシュキガルは俺に手伝わせるのだ。

 

エンリルとイシュタルから権能を剥奪しようとすると、冥界の地形が変わる程の戦いとなった。

 

俺とエレシュキガル、そしてニヌルタの配下だった神の戦士達が協力をして、なんとかエンリルとイシュタルから権能を剥奪する事に成功した。

 

権能を剥奪されたエンリルは虚脱状態になったが、イシュタルはさほど変わらずに

冥界の男達を漁っていた。

 

ここまで来るとイシュタルに逞しさすら感じる。

 

手伝いを終えた俺はイシュタルの矛先が俺に向く前にメソポタミアの冥界を去る事にした。

 

去り際にニヌルタの配下だった神の戦士達から再戦を挑まれたが、ギルガメッシュとエルキドゥの婚姻の儀に参加する為に断った。

 

その後、ウルクに戻った俺はギルガメッシュとエルキドゥの婚姻の儀を見届けた。

 

2人の婚姻の儀はウルク全体で7日に渡って祝われた。

 

7日に渡ったお祝いが終わると、夫婦になったギルガメッシュとエルキドゥの邪魔をしない為に俺は中華に帰る事にした。

 

「二郎、いつでもウルクに来るがいい。友たるお前に対して閉ざす扉を我は持たぬ。」

 

俺はギルガメッシュと握手をすると、そっと霊薬を渡した。

 

もちろんこの霊薬は夫婦の営みに役立つ物である。

 

それを見通したギルガメッシュは鼻を鳴らしながらも、俺に感謝の言葉を言ってきたのだった。

 

 

 

 

中華に帰った俺だが、それからもギルガメッシュとエルキドゥとの友誼は変わらなかった。

 

時折俺がウルクに訪れると、3人で冒険の旅に出たりして以前と変わらぬ日々を過ごしていった。

 

ギルガメッシュとエルキドゥは夫婦になったが、しばらくの間は子供を作らずに夫婦としての時間を楽しむらしい。

 

そんな感じでギルガメッシュが王になってから200年程が経った頃、中華の地を統一した英雄が現れた。

 

その男は『黄帝』と名乗り、ギルガメッシュと同じく、初めて人の帝となったのだ。

 

黄帝は伯父上である天帝や、妹の三聖母から宝貝を貸し与えられて中華を統一した様だ。

 

それだけなら他の男でも中華を統一出来たかもしれないが、黄帝が成したのはそれだけでは無かった。

 

メソポタミアの神々との戦の際に出会った白髪の男が使っていた道具である『弓』を開発し、更に中華の人々に医術や教育を教えた上に、仙術の『練丹術』を元にして、道士ではない人々にも作れる様に簡素化した『漢方薬』を世に広めたのだ。

 

そんな黄帝を知ったギルガメッシュは、中華の地に訪れて黄帝に称賛の言葉を送った。

 

「我以外に王に相応しき者はおらぬが、お前以外に帝に相応しき者もおらぬだろう。」

 

この称賛の言葉に俺とエルキドゥは本当に驚いた。

 

ギルガメッシュもエルキドゥと夫婦として過ごした事で少し変わったのかもしれないな。

 

中華が統一されるという変化により忙しくなった俺だが、それでも暇を見つけては

ウルクに訪れてギルガメッシュ達と会っていった。

 

そんな日々を送っていたある日、ギルガメッシュとエルキドゥの間に息子が産まれた。

 

ギルガメッシュは息子を『ウル・ルガル』と名付けた。

 

会う度に成長を見せるウル・ルガルの姿に、俺もギルガメッシュやエルキドゥと同じく目を細めた。

 

そして更に時間が過ぎ、ギルガメッシュが王となってから300年程が経った頃の事。

 

ついにギルガメッシュの栄光の日々は終わりの時を迎えるのだった。




次の投稿は13:00の予定です

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