二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第3話

調息の修行を始めて3年経つと、俺は老師に認めて貰える程に調息を身に付けていた。

 

そして修行が次の段階に進もうとしたその時、お腹がふっくらとした母上が、

俺達の所に姿を見せたのだった。

 

「二郎、貴方は兄になるのですよ。」

 

おおう?母上、ホントですか?

 

母上に促されて母上のお腹にさわると、調息を身に付けたおかげなのか、

母上のお腹に新たな命を感じ取る事が出来た。

 

「わかりますか、二郎?もう一度言いますが、貴方は兄になるのです。

 兄として守れる様に、修行に励みなさい。」

「はい、母上!」

 

3年もの間、ひたすら調息だけを続けて萎えかけていた気持ちが、一気に熱く燃え上がる。

 

「老師!」

 

俺は老師に向き直って片膝を着き、包拳礼の形を取って名乗りを上げる。

 

「姓は楊!名は二郎!字をゼンと申します!老師の元で、ますます修行に励んでいきます!

 その証として、老師には我が名を受け取っていただきたく思います!」

 

俺の誓いに、老師が1つ頷いてから答える。

 

「君の決意、受け取らせてもらうよ。二郎。」

「はい!」

 

こうして、俺は決意の証として老師に名を預けた。

 

なんか母上の方からパキパキと変な音が聞こえたけど、気にしない事にする。

 

老師…頑張れ!

 

 

 

 

腹を抱えて悶絶する老師を置いて、母上は大きな犬に乗って帰っていった。

 

30分程経つと老師は復活して、俺に新たな修行を教え始めた。

 

「調息を身に付けた次は、拳法を学んでもらうよ。」

「はい!」

 

拳法か…前世の封印した熱い心が沸々と蘇るぜ!

 

「それじゃ、拳法の基本を教えるよ。」

 

老師が教えてくれたのは『馬歩』と『崩拳』だ。

 

『馬歩』を簡単にいうと、馬等に騎乗するような形で地面に立つ歩法だ。脚を開いた空気椅子と言った方がわかりやすいかもしれない。

 

『崩拳』は拳法の基本となる、拳による突きだな。

 

「二郎、理解出来たかな?」

「はい!」

 

俺の返事に、老師は満足そうに頷く。

 

「それじゃ、馬歩からの崩拳を身に付けようか。取り合えず10年ってところかな?」

「じゅ、10年ですか?」

 

3年間ずっと調息をやったと思ったら、今度は10年ずっと馬歩からの崩拳をやるの?

 

「うん、取り合えず10年だね。」

「えっと…馬歩からの崩拳は、どうなったら身に付けた事になるんですか?」

 

俺の疑問に老師はニッコリと微笑むと、馬歩をした。

 

そして…。

 

パァン!

 

老師が馬歩から崩拳をすると、風船が破裂した時の様な音が聞こえたのだった。

 

「ここまで出来る様になれば、最低限身に付けたと認められるかな。」

「え?」

 

ちょ、え?

 

「老師…さっきの音は?」

「ん?ちょっと音の壁を超えただけだよ。たいした事じゃないね。」

 

いやいやいや!

 

何を言ってるの、老師!?

 

「調息をしながら馬歩をすると、自然に気を整え、練り上げる事が出来るからね。

 仙人になるには最適な修行なんだ。気を巡らせるにはコツがいるから、気を巡らせる事に

 関しては別の修行で身に付けてもらう。だから、今は気にしないでいいよ。」

 

そう言いながらニッコリと微笑む老師は、お腹を擦っている。

 

「そして馬歩から崩拳をしていけば拳法の修行にもなる…。至極効率的だよね?」

 

だからといって、10年もひたすらに馬歩からの崩拳だけって…。

 

「二郎、道士や仙人は100年、1000年と修行を続けていくんだよ?10年程度で

 怖じ気づくようじゃ、この先、仙人として悠久の時を生きるのは難しいだろうね。」

 

むむむ…。

 

えぇーい!俺も男だ!

 

やってやるさ!

 

10年がなんぼのもんじゃい!

 

俺は馬歩で立って、崩拳をしていく

 

「お?やる気があっていいね。それじゃ、1日最低でも一万回は崩拳をしようか。

 もちろん、1回1回を全力でね。」

「はい!」

 

俺は半ば自棄になりながら返事をする。

 

そして時折、老師から馬歩や崩拳の修正を受けながら、修行を続けていったのだった。




感謝の崩拳1万回!

これで本日の投稿は終わりです

また来週お会いしましょう

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