ギルガメッシュに続きエルキドゥも亡くなった事で俺はウルクを離れる事にした。
ウルにもイナンナという伴侶が出来たのでギルガメッシュとの約束を果たしたからな。
俺は時折ギルガメッシュとエルキドゥの墓参りをする許可をウルに貰うと、哮天犬に乗って中華にある俺の廓に帰った。
それからはギルガメッシュに会う以前の生活に戻った。
仙人として修業をして、蛟や邪仙を退治して過ごしていった。
そんな日々を過ごしていた時に、ふと思い立ってメソポタミアの冥界にギルガメッシュとエルキドゥに会いにいく事にした。
だが…。
「ギルガメッシュとエルキドゥなら『座』に行ってしまったのだわ。」
と、メソポタミアの冥界の主人であるエレシュキガルが言う。
「『座』?」
「一言で言えば『世界』の外側にある、もう1つの世界なのだわ。『星』に生前の偉業を 認められたギルガメッシュとエルキドゥは『星の守護者』になって、その魂の在所を 自分達の『座』に移したのだわ。」
守護者?メソポタミアの神々との戦の時にあった白髪の男とは違うのかな?
俺はそれをエレシュキガルに聞くと、エレシュキガルは全くの別物だと答えた。
「二郎真君が会ったのは『世界の守護者』なのだわ。世界の守護者は一言で言えば『世界』の奴隷なのだわ。対して『星の守護者』は『星』の客人だから扱いは言葉通りに雲泥の差なのだわ。」
どうやらギルガメッシュ達はあの白髪の男の様にはならないようだ。
うん、安心した。
もしあの白髪の男の様になっているなら、可能な限りの手段を使ってギルガメッシュ達を解放しにいくつもりだからな。
しかし、エレシュキガルは詳しいな。
「私は冥界の主人よ。その役割上、多くのメソポタミアの英雄達と出会ってきたわ。 そして死後の英雄達が『英霊』となって座を作ったり、座に招かれたのを見てきたの。だから、少しだけ『座』について詳しいのだわ。」
なるほど、中華に『座』に関する知識がほとんど無いのは、仙人達は死んでも『座』に招かれる前に転生をしてしまうからか。
「それに、最近はギルガメッシュの『座』で面白い事が起きてるからよく見ているのだわ。」
ん?面白い事?
俺の疑問を察したエレシュキガルが笑みを浮かべながら答える。
「ギルガメッシュが天地開闢の力で『世界』に穴を開けて、並行世界の自分の『座』に 戦を仕掛けているのだわ。」
「並行世界の自分に?」
ギルガメッシュはなんでまたそんな事を?
「私も詳しくは知らないけど、並行世界の自分が気に入らないみたいだわ。なんか、並行世界のギルガメッシュは暴君になったりしたみたいね。」
賢君として世界中に名を知られるあのギルガメッシュが暴君?
並行世界のギルガメッシュは何をどうしてそうなったんだ?
「そう言うわけでギルガメッシュはエルキドゥと一緒に並行世界の自分を尽く滅して、 自分を『正史』にするつもりなのだわ。」
「よくわからないけど、ギルガメッシュがやろうとしているのなら出来るんだろうね。」
どうやらギルガメッシュは死後も色々とやって楽しんでいるみたいだ。
「そうそう、ギルガメッシュから伝言があったのだわ。」
ポンッと手を叩いてエレシュキガルが話を続ける。
「『友よ、また会おう。』って言っていたのだわ。」
あぁ、ギルガメッシュは変わらないな。
俺はなんか可笑しくなって笑った。
ギルガメッシュとエルキドゥが亡くなってから初めて腹の底から笑った。
俺は悠久の時を生きる仙人だ。
幾百、幾千の時の流れでまた2人と巡り会う機会もあるだろう。
「あぁ、友よ。また会おう。」
俺はそう呟くと、ギルガメッシュの『座』に届く様に大きな声で笑ったのだった。
本日は5話投稿します
次の投稿は9:00の予定です
これでウルク編は終了となります。次話からは封神演義編です。