第40話
ギルガメッシュとエルキドゥが亡くなってから800年程が経った。
その月日の間にウルクの王もウルから6代ほど代替わりした。
今代のウルクの王は俺にギルガメッシュ達の墓参りをするのなら墓参りの税を納めろと
言ってきたので、金輪際ウルクには関わらない事に決めた。
そんな感じでウルクからの帰り道、気紛れでギリシャに立ち寄る事にした。
そこで俺はケンタウロスのケイローンという男と出会った。
ケイローンはギリシャの地で賢者と言われているらしい。
そんなケイローンは現在武術の開発に勤しんでいる様だ。
なんでもパンクラチオンと名付ける予定らしい。
俺はケイローンに字(あざな)を名乗ったのだが、ケイローンは俺の事を知っていた。
ケイローンが言うには俺は放浪の神として知られているらしい。
治水の神であり、放浪の神であり、武神でもある。
俺のゼンという字(あざな)はギリシャの地にそのように伝わっているようだ。
ケイローンは俺にパンクラチオンについて意見を求めてきた。
パンクラチオンは打撃、投げ、極めの総合武術を目標としているのだが、
今はまだ完成に至っていないらしい。
俺は少しの間ケイローンが行う演武を見ていた。
拳法とは違う動きだが、武術としての形になっていた。
俺は1代でここまで武術を作り上げたケイローンを称賛した。
ケイローンは謙遜していたが、ケイローンは賢者の名の通りに武の理を解した賢き者だった。
幾つか俺なりの助言をすると、ケイローンは喜んでくれた。
パンクラチオンを完成させるために集中するらしいので、俺はケイローンと別れて
ギリシャの地を去る事にした。
そのギリシャからの帰り道。
中華の地に入ると俺の頭上に雷が降ってきたのだった。
◆
「おや?今のはかなり力を込めたんですけどね。流石は二郎真君といったところですか。」
俺はその声がする頭上に顔を向ける。
そこには猫のような霊獣に乗った奇抜な格好の道士がいた。
「私の宝貝『雷公鞭』が完璧に防がれたのは初めてです。お見事ですね。」
そう言いながら奇抜な格好の道士は俺に拍手をしてきた。
「あ、申し遅れましたが私は『申公豹』といいます。ちなみにこの霊獣は『黒点虎』です。」
「よろしく、二郎真君様。」
いきなり攻撃されてあれだが、名乗られた以上は俺も名乗らなければな。
「知っているみたいだけど、俺は二郎真君だよ。この子は相棒の哮天犬。」
「ワンッ!」
俺の名乗りを聞いた申公豹は手にしていた宝貝に力を込め始めた。
「それじゃ、続きをしましょうか。」
そう言って申公豹は宝貝から雷を放ってきた。
俺は最初の一撃を防いだのと同じ様に水鏡の守護結界で雷を防ぐ。
「お~、今のは小さな山1つは吹き飛ばす威力があった筈なんですけどね。」
申公豹は感情の起伏があまり感じられない表情で驚いた様な声を上げる。
「天帝様が自慢するだけはありますね。」
「伯父上を知っているのかい、申公豹?」
「先日、私の師である元始天尊様と天帝様が貴方の事を話していたのですよ。
それで興味を持って貴方を待っていました。」
そう言いながらも申公豹は宝貝から雷を放ってくる。
「う~ん、効かないですねぇ。相性が悪いのでしょうか?」
申公豹は顎に手を当てて首を傾げるが、攻撃を止める様子は無い。
「やれやれ、伯父上と元始天尊様の話を聞く前に滅するわけにもいかないか。」
そう言ってため息を吐いた俺は瞬動で申公豹の側面に踏み込む。
「おや?」
俺が近付いたのに気付いた申公豹が宝貝を振るう前に、虚空立歩で空を踏み締めて崩拳を放つ。
「…ゴフッ!」
崩拳を食らわせてから離れると、申公豹は血を吐いた。
「これが吐血ですか。血を流したのは生まれてから初めての経験ですね。」
口周りの血を手で拭った申公豹は、その手についた血を興味深そうに見ている。
「それに、殴られたのも初めてです。殴られると眠くなるのですね。
黒点虎、私は寝ますので後はお願いします。」
そう言うと申公豹は黒点虎に身を預けて気を失った。
「…二郎真君様、ごめんね。申公豹を見逃してくれないかな?」
「命は助けるけど、伯父上の所まで一緒に行ってもらうよ。」
「うん、わかった。」
中華に帰った早々に申公豹に襲撃を受けた俺は、その襲撃者である申公豹と、
霊獣である黒点虎と一緒に伯父上の所に向かうのだった。
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殷周革命は紀元前1100年代なので封神演義の舞台もそこからですが、
拙作では殷が興る1600年代から話を始めていきます。
まぁ、封神計画が始まるのは紂王がやらかしてからですが…。