二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

42 / 308
本日投稿3話目です


第41話

「二郎、よく帰った。」

「伯父上、二郎真君、ただいま戻りました。」

 

片膝をついて包拳礼をすると、伯父上に立ち上がる様に促されたので立ち上がる。

 

「二郎よ、しばし待て。配下の者に元始天尊を呼びに行かせているのでな。」

 

伯父上はそう言うと、黒点虎の背で気を失っている申公豹に目を向けた。

 

「して、いかがであった?」

「彼は実戦の経験が不足していますね。」

「そうか。」

 

俺の返答に伯父上は納得した様に頷いた。

 

その後、ギリシャのケイローンの事を伯父上に話していると、

元始天尊様が伯父上の宮にやって来た。

 

「待たせたのう、天帝殿。」

 

そう言って頭頂部が見事に磨きあげられた老人が部屋に入ってくる。

 

この老人が元始天尊様だ。

 

元始天尊様は黒点虎の背で気を失っている申公豹を一瞥すると、大きくため息を吐いた。

 

「賭けは我の勝ちだな、元始天尊。」

「はぁ…約定通りに宝具を融通いたそう。」

 

2人の会話に俺が首を傾げていると、伯父上が笑いながら話をした。

 

「我と元始天尊が二郎の事を話していると、その時に一緒にいた申公豹が姿を眩ましたのでな、

 二郎に興味を持って会いに行ったと察したのよ。そして申公豹の性格から二郎を試す

 だろうと思ってな、元始天尊とどちらが勝つのか賭けをしたのだ。」

「申公豹は儂の弟子の中でも一番の才を持つ者だが、武神である二郎真君には敵うまいと

 思ってはいたのじゃ。じゃが、師である以上は弟子を信じねばなるまいて。」

「ハッハッハッ!相も変わらず弟子思いだな、元始天尊。」

 

そんな感じで中華で最高峰の神である二柱が話をしている。

 

まぁ、この2人とは千年以上付き合いがあるから俺の前では普段通りに話すのだ。

 

いつもはもっと威厳がある2人なんだけどね。

 

「さて、二郎よ。1つ頼みがある。」

「何でしょうか、伯父上?」

「二郎には世界を巡って宝貝を集めてきてもらいたいのだ。」

 

宝貝を?

 

「また蓮に…三聖母に宝貝を渡すためですか?」

「ふむ…二郎には話した方がよかろうな。」

「うむ、話した方がよいじゃろうよ、天帝殿。」

 

何やら伯父上と元始天尊様が頷きあっている。

 

どうしたんだ?

 

「二郎よ、気づいておるか?『世界』から、『星』から少しずつ神秘が

 失われてきているのを。」

「神秘がですか?」

 

俺が首を傾げると伯父上は肯定する様に頷く。

 

「うむ、今はまだ『気』を扱う仙人である我らにしか気付かぬ変化だが、

 確実に神秘が失われてきているのだ。」

「伯父上、神秘が失われると『世界』や『星』はどうなるのですか?」

「人には大きな変化は起こるまい。英雄となれる者が減る程度であろう。」

 

腕を組んで話す伯父上の表情は真剣だ。

 

「だが、我等神々は『世界』の内側に存在出来なくなる。」

「神々がですか?」

「そうだ。故にその対策の為に二郎には神秘の塊である宝貝を集めてもらいたいのだ。」

 

対策?

 

「何をするのですか?」

「崑崙山などの仙人や道士が集う場所を『世界』の外側に移動させる。」

「『世界』の外側?」

「二郎は『座』と呼ばれる場所を知っておるか?アレと同じ様な場所を作るのだ。」

 

『座』というのは確か、ギルガメッシュとエルキドゥが行った場所のはずだ。

 

それを作る?

 

「『星』や『世界』が用意した理想郷には選ばれた者しか行けぬのでな。

 故に中華の天界を統べる者として、中華の天界の者達を救う為に成さねばならぬのだ。」

 

なるほど、納得した。

 

しかし…。

 

「地上に居られなくなるのですか…それは残念ですね。」

「いや、二郎は問題無く居られるであろう。」

 

え?

 

一応俺も神なんだけど?

 

「二郎は半神半人であるからな。純粋な神で無ければ神秘が失われても

 世界の内側に居られるはずだ。」

「そうですか、それを聞いて少し安心しました。退屈をせずに済みそうですからね。」

 

俺の言葉に伯父上と元始天尊様が大きな声で笑う。

 

「それで伯父上、時間はどれほど残されているのですか?」

「二千年は問題無かろうが、余裕を持って千年とする。」

「わかりました。千年は世界を巡って宝貝を集めてきましょう。」

 

伯父上が頷いたのを見た俺は、ふと疑問を持った。

 

「ところで伯父上、俺が世界を巡っている間、蛟や邪仙の退治はどうするのですか?」

「それは申公豹に任せる。実戦経験が不足している申公豹にはちょうどよかろう。

 名目は天帝たる我の外甥を襲撃した罰だな。」

 

そう言うと伯父上は元始天尊様に目を向ける。

 

「そういうわけで申公豹を借りるぞ、元始天尊。」

「今まで申公豹を色々と自由にさせ過ぎましたからのう。ちょうどよい罰でしょうな。」

 

そう言うと伯父上と元始天尊様は笑い出した。

 

話を聞いていた黒点虎はこれからの事を考えたのか、げんなりして項垂れたのだった。




次の投稿は13:00の予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。