二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第4話

10年で慣れしたしんだ馬歩をして、崩拳を放つ。

 

すると…。

 

パァン!

 

俺が放った崩拳は、風船が破裂した様な音を出したのだった。

 

「おぉ!?兄上、凄いのじゃ!」

 

俺が道士として修行をしている間に産まれた妹の『蓮』の称賛が素直に嬉しい。

 

蓮は母上に似ていて、青み掛かった黒髪に、ややつり目の赤い目が特徴の美幼女だ。

 

ちなみに俺は青い髪に、赤い目をしている。

 

自分で言うのもなんだが、イケメンであると言っても過言では無いぜ!

 

老師曰く、赤い目は神の血を持つものの証なのだとか。

 

さて、老師の指導で拳法の修行をしてきたのだが、まさか10年で崩拳が

音を超えるとは思わなかったな。

 

まさに人間を止めた気分である。

 

あ、俺、半分神だったわ。

 

「母上!妾も兄上の様に道士になるのじゃ!」

「ふふ、それじゃ父上と伯父上に相談しましょうね。」

 

そう言いながら、母上はニコニコと蓮の頭を撫でている。

 

家族団欒の微笑ましい光景に、俺の頬も緩むというものだ。

 

そんな感じで俺の修行を見学に来ていた母上と妹は、大きな犬…神獣に乗って帰っていった。

 

母上と妹が帰ると、老師は咳払いを1つしてから話し出した。

 

「さて、二郎。拳法の修行は1段落したから次の修行にいくけど、

 拳法の修行は終わりでは無いよ。功を積み続けなさい。」

「はい!」

 

俺の返事に老師は頷く。

 

「二郎は気付いているかな?君の額に第3の目が開いているのを。」

 

老師の言葉に俺は首を横に振る。

 

「本来なら、気を巡らせてから食事を制限したりして色々とやらないと、第3の目は

 開かないんだけど、二郎の才はとんでもないね。」

 

そう言いながら、老師はヤレヤレと言わんばかりに首を横に振っている。

 

そして、老師はどこからともなく銅鏡を取り出して、俺に渡してきた。

 

銅鏡を覗き込むと、確かに額に何かの紋様が浮かんでいるのがわかる。

 

「それが仙人の証である第3の目だね。まだ修行の最中だけど、二郎は仙人になったわけだ。」

「仙人になると、何か変わるんですか?」

 

俺の質問に老師は待ってましたとばかりに笑顔で答えていく。

 

「仙人になって変わる事は不老になる事だね。」

 

おぉ!?マジか!

 

…あれ?

 

「老師、確か不老不死の霊薬があるんですよね?」

「あるよ。でも、僕が作る霊薬は不老になるけど、不死にはならないね。」

 

ん?道教って不老不死を推奨してるんだよな?

 

「道士や仙人が不死になるのは、『反魂の術』を極めるからであって、基本的に霊薬で

 不老不死になる道士や仙人はいないね。」

「基本的にはって事は、いるにはいるんですか?」

 

俺の疑問に老師は頷きながら、話を続けていく。

 

「確かにいるけど、霊薬による不死はオススメしないね。」

「なんでですか?」

「知識や技術は成長しても、身体的な成長はしなくなってしまう不死があるからさ。」

 

少しおどける様にしながら言う老師の言葉に、俺は首を傾げた。

 

「どういう事ですか?」

「不死にも色々と種類があるんだよ、二郎。」

 

そう言うと、老師は指折り数えながら話をしていく。

 

「不死には特定の手段でしか傷付けられない頑強な身体になるものが1つ。魂の存在を

 固定してその魂の形通りに肉体を再生するのが1つ。魂を扱い、転生させるものが1つ。」

 

老師は3つ指を折ると、ニコリとした笑みを俺に見せてくる。

 

「この内の強靭な肉体が、不老不死の霊薬が与える不死になるね。魂の固定は主に、

 神々が与える加護によるものになるかな?」

 

老師は何かを思い出す様に顎を擦りながら、話をしている。

 

「これら2つの不死は、不安定なものだから僕はオススメしないね。特に魂を固定する

 ものは、死に方によっては折角復活しても余計に悲惨な事になりかねないからなぁ。」

 

そう言いながら、老師は苦笑いをしている。

 

「それに、神々に加護を与えられて不死になった場合、その加護を与えた神の気分次第で、

 あっさりと加護を剥奪される事もあるんだ。だから、道教では『反魂の術』による

 不死を推奨しているんだよ。」

 

ウインクをしながらそう言ってくる老師に、俺はなるほどと頷く。

 

「不死についてはある程度理解出来たかな?」

「はい!」

「じゃあ、そろそろ気を巡らせる修行に移ろうか。準備があるから、ちょっと待っててね。」

 

そう言うと、老師はどこかに行ってしまった。

 

拳法の修行をしながら待ってようかな。

 

俺は馬歩からの崩拳をしていく。

 

他にも一歩踏み込んで、踏み込んだ足で地面を強く踏む『震脚』をして放つ崩拳。

 

一歩踏み込んで、引き寄せた後ろ足で『震脚』をして放つ崩拳をしていく。

 

この2つは1年程前に老師に教わった新しい崩拳だ。

 

俺は一歩踏み込んで震脚をする崩拳を『一歩崩拳』、後ろ足で震脚をする崩拳を

『半歩崩拳』と呼ぶ事にした。

 

老師はわかりやすくていいね!と言っていたので、これからはそう呼称するらしい。

 

それら3種の崩拳を修行しながら待つこと1時間。老師は何故か美少女を伴って戻ってきた。

 

「待たせたね、二郎。それじゃ、この娘と『房中術』をしてもらうよ。」

「『房中術』ですか?」

 

俺の疑問の声に、老師は『房中術』を説明していく。

 

簡単に言うと、この美少女とナニを致すらしい。

 

…はい?

 

「いやいやいや!ちょ、老師!?」

「房中術は気を巡らせるのに最適な修行なんだ。それに、その娘は調息は出来るんだけど、

 まだ気を感じ取る事が出来ていないみたいでね。だから、二郎の修行にちょうどいいんだ。」

 

ニッコリと笑う老師の笑みが、俺には悪魔の微笑みに感じる。

 

「この竹簡に房中術のやり方を書いておいたから、2人で頑張って修行をしてね♪」

 

そう言うと、老師はパッと片手を上げて何処かに去っていった。

 

残されてしまった俺と美少女は顔を見合わせる。

 

すると、美少女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

…カワイイ!

 

え?この娘と致してしまうの?いいの?

 

「えっと…よろしくお願いします?」

「は、はい!よろしくお願いします!楊ゼン様!」

 

美少女はバッと顔を上げたと思ったら、深々と頭を下げた。

 

その後、2人でギクシャクとしながらも、竹簡を見ながら学んでいったのだった。




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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