二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第52話

「事の始まりは殷の紂王が原因なんだ。」

 

老師の話を俺なりに解釈していくとこうなる。

 

現在の中華の大半は殷という国が支配しているのだが、その殷の王である

紂王がある時、酔っ払いながら女媧様の像が奉置されている神殿に訪れた。

 

そこで女媧様を象った像をみた紂王は、女媧様に一目惚れをしてこう言った。

 

『後宮に欲しい』

 

後宮というのは、要するに愛人を囲う場所のことだ。

 

国産みの神を愛人に欲しいというだけでも不敬極まることなのだが、

あろうことか紂王はその思いを神殿の壁に墨で書き残したのだ。

 

神殿を管理する者達は紂王が帰ると即座に落書きを消そうとしたが、

間が悪いことに女媧様が神殿に降臨してしまった。

 

女媧様は中華の大半を支配する殷の王が来訪したことで多くの貢ぎ物を期待していたのだ。

 

だが、そこには侮辱としか見えない落書きだけしか残されていなかった。

 

女媧様は激怒した。

 

そして女媧様は紂王に罰を与えようと思ったのだが、国産みの神である自分が直接手を

下せば、中華のみでは収まらない色々な問題が発生するかもしれないと考えた。

 

そこで女媧様は配下の道士や仙人を動かそうと思ったのだが、中華の大半を支配する

殷の紂王に手を出すには配下の者達では力が足りないかもしれないと危惧した。

 

そこで女媧様は『力が足りぬのなら宝貝で補えばよい。』と思い付いた。

 

だが、女媧様の手元には配下の者に行き渡らせるだけの宝貝は無かった。

 

そこで女媧様は『移動』の為に大量の宝貝を集めている伯父上の蔵に目をつけた。

 

『神々が生きられぬ程に神秘が薄まるまで後千年は猶予がある。

 ならば多少持ち出しても問題なかろうて。』

 

そう考えた女媧様は、蔵を守護する伯父上の配下に国産みの神としての

権威を持ち出して蔵を開けさせた。

 

そして宝貝を大量に持ち去った女媧様は配下の者に宝貝を配って、

殷の紂王に罰を与えるようにと指示を出したんだとさ。

 

「二郎が五百年掛けて集めた苦労を無にしてしまった。すまぬ。」

 

そう言って伯父上が俺に謝った。

 

「伯父上、気にしないでください。また集めればいいのですから。」

 

俺は笑顔でそう言ったのだが、伯父上達は渋い表情をしている。

 

「二郎よ、出来ればそうしたいのだが、そう出来ぬ事情があるのだ。」

 

俺が首を傾げると伯父上が腕を組んで話し出す。

 

「女媧様が宝貝を持ち出す前に『移動』の件を、世界の各天界に

 通達してしまったのだ。」

「うわぁ…間が悪いですね。」

 

もしここで俺がまた宝貝集めを再開したら、中華の外の天界から事情を聞かれるだろう。

 

そこで事の事情を話せば伯父上の面目丸潰れである。

 

しかもそれだけで済む問題では無い。

 

『移動』は中華の神々の生き残りが掛かっているのだ。

 

今回の一件を各所に知らせるにしても、せめて『移動』の準備を再度整えてからの

事後報告にしないと色々と面倒が起こってしまうのだ。

 

「伯父上、俺を呼び出したという事は何か対策を思い付かれたのですよね?」

「うむ、女媧様の配下の者達が起こす混乱に便乗する形にしようと思っている。」

「便乗?何をするのですか?」

「『封神計画』だ。」

 

封神計画?

 

俺が首を傾げると、伯父上に代わって元始天尊様が話し出した。

 

「女媧様の配下が殷の紂王に罰を与える。これは生半可な罰ではなく殷を滅ぼす

 規模になるじゃろうな。その時の混乱を利用するのが封神計画じゃ。」

 

元始天尊様の話を俺なりに解釈していくとこうなる。

 

女媧様の配下である道士や仙人が中華の人々の間に混乱を起こす。

 

その道士や仙人達が人々の間に混乱を起こした事を理由にその者達の討伐の指令を出す。

 

そして、討伐した道士や仙人達の魂を贄として『移動』の為の力とするそうだ。

 

だが表向きの話は混乱を起こした者達に反省を促す為に、

転生出来ぬようその魂を封印するという形にするらしい。

 

「その者達から宝貝を回収するのではダメなのですか?」

「それが出来れば一番いいのだが、その者達は宝貝を手放すと思うか?」

 

伯父上が懸念する通りに俺も宝貝を手放すとは思えない。

 

宝貝は神秘の塊であり、その力は神の権能にすら匹敵する物もある。

 

どんな理由であれ一度手にしたのなら己の意思で手放すのは難しいだろう。

 

「宝貝だけ奪っても恨みが残り面倒な事になるでしょうねぇ。」

「うむ。故に犠牲を少なくする為にも、討伐した者達の魂も利用せねばならぬ。」

 

なんというか、本当に面倒な事になってきたなぁ…。

 

俺が頭を掻きながらため息を吐くと、伯父上達も同じ様にため息を吐いたのだった。




これで本日の投稿は終わりです

体調を崩してしまい5話目を書けませんでした…

また来週お会いしましょう

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