二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第58話

廓に戻った俺と哮天犬を士郎が出迎えてくれた。

 

「お帰り、老師、哮天犬。」

 

士郎の言葉に哮天犬が哮えて返事をする。

 

「それで、天帝様の用とは一体何だったのかね?」

 

首を傾げながら疑問の声を上げる士郎に俺は哮天犬の頭を撫でながら答える。

 

「あぁ、封神計画の話だよ。」

「…封神計画?」

 

封神計画という言葉に士郎は驚いた様に反応した。

 

「知っているのかい?」

「あぁ…。いや、『この世界』では既に私の知るそれとは別物の可能性があるな…。」

 

顎に手を当てた士郎は少しの間思考を巡らせていく。

 

「老師、確認をさせてもらってもいいだろうか?」

「あぁ、いいよ。」

「封神計画とは、中華の国産みの神である女媧様の配下を退治する…

 これであっているかね?」

「表向きはそうだね。」

「表向き?」

 

俺は士郎に封神計画の真の目的を話していく。

 

すると、話を聞いた士郎はコメカミに手を当てながら項垂れた。

 

「これはまた…『世界』が守護者を派遣しそうな問題だな…。もっとも、この先に派遣される

『世界の守護者』はもういないのだろうがね。」

 

そう言って士郎は大きなため息を吐いた。

 

「士郎、『世界』が動く基準は何かな?」

「『世界』は矛盾を嫌う。」

「矛盾?」

「あぁ、まだこの言葉は産まれていないのか…。この場合は中華にあるべき場所が無くなる事を

 『世界』が嫌うとでも言えば理解出来るかね?」

 

俺は頷いて士郎に話の続きを促す。

 

「例えば、崑崙山という多くの人々が認識している場所が『世界』の内側から無くなる。

 こういった事を『世界』はひどく嫌い、それを修正しようとするのだ。」

「なんで修正しようとするんだい?」

「これも一例だが、数千年先の未来において『人理』が崩壊して

 『世界』が滅びる事があるんだ。」

 

人理?

 

俺が首を傾げると士郎が苦笑いをする。

 

「まぁ、今の一例は極端なものだ。それに、『この世界』ではそういった問題は

 もう起こらないだろう。」

「なんでだい?」

「原初の王とその妻が『この世界』そのものを正史に変えたからだ。」

「ギルガメッシュとエルキドゥが?」

 

俺の疑問の声に士郎が頷く。

 

「私があらゆる『世界』や時代に『世界の守護者』として送り込まれた事は

 老師も知っているだろう?」

「あぁ、そうだね。」

「その理由は、その二人が起こした『並行世界の歴史の修正』が原因なんだ。」

 

士郎は腕を組むと思い出すようにして話をしていく。

 

「『世界』には原典と呼ばれる『世界』が存在する。」

「原典?」

「無数に存在する並行世界の元になった『世界』…始まりの『世界』だ。」

 

俺は頷いて士郎に話の続きを促す。

 

「私も『世界の守護者』になって初めて知った事だが、数多の並行世界は原典と近い歴史を

 なぞる様に『世界』が修正を加えていく。その修正をする者が『世界の守護者』なのだ。」

 

俺は話をする士郎の喉を潤す為に神水を差し出す。

 

転生してからの十年で慣れた士郎は戸惑わずに神水を飲んだ。

 

「老師、私が守護者として老師と戦った時を覚えているかね?」

「最初はウルクの天界、次はケイローンを救って中華に帰った時だったね。」

「あぁ、その時が『原典』と歴史がずれた時なのだ。まぁ、今では『この世界』が原典と

 なっているので、この先の歴史がどう変わるのかは私にはわからないがね。」

 

俺は士郎の話で以前にエレシュキガルが言っていた話を思い出した。

 

「そう言えば以前にエレシュキガルが、ギルガメッシュとエルキドゥが並行世界の

 自分の『座』に戦を仕掛けたって言ってたね。」

「私が転生をする少し前に『この世界』のギルガメッシュが『原典』を含む全ての並行世界の

 自分を打倒した事で、原初から先の歴史が崩壊してしまった。それにより数多の『世界』は

 滅びてしまい、残ったのは『この世界』のみなのだ。後数百年転生をするのが遅ければ、

 緩やかに崩壊していく『世界の座』に巻き込まれて私の魂は消滅していただろう。」

 

士郎はため息を吐くと神水を一口飲んだ。

 

相変わらずギルガメッシュとエルキドゥがやる事は大きいなぁ。

 

変わらぬ二人の友の在り方に、俺は自然と笑顔になる。

 

だがそんな俺を見た士郎は、片手でコメカミを押さえながら大きなため息を吐いたのだった。




本日は5話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

今話を簡単に書きますと、拙作のリア充ギル様が拙作世界が特異点になる前に
原典世界にエアをブッパした…といった感じになります。

ガチャで爆死するマスターなんていなかったんや!…いなかったんや!

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