二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第63話

「こんにちは、貴方は姜子牙ですね?」

 

姜子牙と四不象の前に奇抜な服を着た男と猫の様な霊獣が立ち塞がる。

 

「そうじゃが…お主は誰じゃ?」

「私は申公豹、貴方の兄弟子ですね。」

 

いきなり申公豹が現れた事で四不象は驚愕の表情をした。

 

「な、なんで申公豹様がこんなところにいるんすか!?たしか、貴方は天帝様の命で

 邪仙の討伐をしていた筈っすよね?!」

 

四不象の言葉を遮る様に申公豹が乗る霊獣である黒点虎が睨む。

 

黒点虎に睨まれた四不象は怯えて言葉を出せなくなった。

 

「黒点虎、睨んじゃダメじゃないですか。カバ君が怯えてますよ。」

「カバじゃないっす!四不象っス!」

 

怯えていた筈の四不象が素早くツッコミを入れる。

 

そんな中で姜子牙は目に映るあらゆる状況を元に思考を巡らせていたのだった。

 

 

 

 

「老師、姜子牙と思わしき道士の前に現れたあの奇抜な格好の者は何者だろうか?」

 

二郎と士郎は哮天犬に乗り隠行の術で姿を隠して姜子牙と変な姿形の霊獣を観察していたが、

姜子牙達の前に申公豹が現れたのだった。

 

「彼は申公豹。元始天尊様の弟子だね。」

「申公豹?」

「士郎、申公豹を知っているのかい?」

 

二郎の疑問の言葉に士郎は少し考えてから話し出す。

 

「老師、確認させて欲しいのだが、申公豹は姜子牙の弟弟子だろうか?」

「違うよ。申公豹は姜子牙の兄弟子だね。」

 

二郎の返答に士郎は右手で眉間を摘まむ。

 

「士郎、どうかしたのかい?」

「いや、何でもない。」

 

士郎はそう答えるが内心では頭を抱えたい思いだった。

 

士郎の知る申公豹は彼が言った通りに姜子牙の弟弟子であり、色々と姜子牙の行動を

邪魔するような存在だった。

 

だが、遠くに見える奇抜な格好の者が申公豹であり、しかも彼は姜子牙の兄弟子である。

 

これだけで士郎が知る封神演義とは別物になっているのだ。

 

(これも『この世界』が原典になった影響なのだろうか?)

 

士郎はそう考えたものの、ある事を思い出した。

 

(かの『騎士王』も女性であった事を考えれば、このぐらいの差違は許容範囲なのだろうか?)

 

士郎は姜子牙の前にいる申公豹に目を向ける。

 

(いや、『この世界』が原典であるならばどのような変化があっても不思議ではない。

 私の持つ記憶や記録に頼り過ぎるのは危険だ…。)

 

士郎は気を落ち着ける様に息を吐く。

 

(前世の常識を捨てろ。私は三千年以上先の世を生きた衛宮 士郎ではない。

 今は古代中華を…いや、今を生きる衛宮 士郎なのだ!)

 

目を瞑り調息をした士郎は、強い意思を持って目を開けた。

 

「すまない、老師。前世の影響で混乱したようだ。」

「そうかい?まぁ、それもその内慣れるさ。」

 

肩を竦めてそう言う二郎の姿に士郎は苦笑いをする。

 

(この器の大きさ…流石は武神だな。)

 

いつかは自身もこの様な動じぬ自信を持てる様になりたいと感じた士郎は、

思考を切り替える様に頭を振った。

 

「老師、申公豹とはどういった者なのだ?」

「残念ながら、俺も申公豹の事はあまり詳しくはないよ。」

 

そう言うと二郎は申公豹の事を話した。

 

「アルケイデスを三度殺した…だと?」

「まぁ申公豹の力というよりは、申公豹が持つ宝貝『雷公鞭』の力だと言えるけれどね。」

 

二郎はそう言うが、士郎はあのギリシャの大英雄と渡り合ったという事実に戦慄する。

 

士郎は驚愕しながらも目に強化の魔術を行使して申公豹を見る。

 

(あれが雷公鞭か…。『今の』私には投影出来んな…。)

 

そう考えた士郎は目を細める。

 

そして…。

 

(だが、私は老師の…二郎真君の一番弟子だ。いずれは『それ』も投影してみせるさ!)

 

そう考えた士郎は不敵な笑みを浮かべた。

 

その士郎の笑みを横目で見た二郎はニコリと微笑む。

 

そしてしばらくの間二人が姜子牙達を見守っていると、申公豹が雷公鞭を用いて

造り出した雷に、姜子牙と四不象が飲み込まれたのだった。




本日は5話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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