二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第66話

「ふぅ、士郎、馳走になったのう。」

「士郎さん、美味しかったっス!」

 

姜子牙と四不象の言葉に士郎は笑みを浮かべる。

 

「口に合った様でなによりだ。」

 

そう言った士郎は鍵の宝貝を使って波紋を造り出すと、その中に匙や椀を

収納する振りをして投影を解除した。

 

「腹も膨れた所で一つ聞きたいのだが、士郎よ、お主は何が目的で中華に来たのだ?」

 

姜子牙の質問につられて四不象が士郎に目を向ける。

 

「ふむ、姜子牙は放浪の神ゼンを知っているかね?」

「放浪の神ゼン?」

「あ、僕知ってるっス!中華の外で二郎真君様はそう呼ばれているっス!」

 

四不象の言葉に姜子牙は興味深そうに目を向ける。

 

「二郎真君様が?」

「そうっス!二郎真君様は千年以上前から世界中を巡って治水をしたり、冒険をしたりしていたそうっス!その時に二郎真君様は字のゼンを名乗っていたみたいっス。それで中華の外では放浪の神ゼンと呼ばれる様になったそうっすよ。」

「ほう、四不象は博識だな。」

 

士郎に誉められた四不象は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「僕は哮天犬の様に立派な神獣になるために日々勉強していたっス!」

 

ふふんと鼻息荒く胸を張る四不象を見る士郎に、姜子牙は話の続きを促す。

 

「それで、士郎は二郎真君様に何用があるのかのう?」

「私は師のお墨付きを得る程の非才の身でな。生涯を賭しても魔術師の悲願を達成出来ぬと、師に宣告されてしまったのだ。」

「魔術師の悲願?」

「魔術師の悲願…それは、『根源』への到達だ。」

 

士郎の言葉に姜子牙と四不象が同時に首を捻る。

 

「「根源?」」

「そうだな、なんと説明すればいいのか…。世界の全てを知る事が出来る場所…、

 とでも言えばわかるだろうか?」

 

姜子牙と四不象は顔を見合わせて同時に首を傾げる。

 

「宇宙の真理とは違うんすかね?」

「どうかのう?」

 

主従は共に疑問を持ったまま士郎に目を向ける。

 

「それで、その根源とやらに到達するのに、何故に二郎真君様が関係するのかのう?」

「私も又聞きでしか知らぬのだが…放浪の神ゼンはかつて、ウルクの王であるギルガメッシュに不老不死の薬を与えたと聞いた。私は、私の一生涯で成せぬのなら、成せるまで生き続ければいいと考えたのだ。」

 

そう話す士郎の姿を姜子牙は余すことなく観察していく。

 

(士郎が魔術師である事は本当であろうが、果たして才が無いというのも本当かのう?

 四十年は道士として生きた儂よりも強そうなのだが…。まぁ、儂は怠けていたしのう。)

 

姜子牙がそう考えながら頭を掻くと、四不象が話し出す。

 

「それはおそらく『練丹術』で造った霊薬の事っすね。」

「ほう?本当にその薬はあるのかね?」

「仙人の二郎真君様なら不老不死の霊薬くらい簡単に造れるはずっすよ。」

 

ニコニコと笑顔で士郎と話す四不象の姿を見ながら姜子牙は思考を巡らせる。

 

(スープーは正直者過ぎるのう。まぁ、おかげで士郎の話も聞けるのだが…。)

 

和気藹々と士郎と四不象は話を続けていく。

 

「ところで姜子牙は道士だそうだが、仙人とはどう違うのかね?」

「簡単に言えば仙人の見習いが道士っス。」

「ほう?では、姜子牙も不老不死の薬を造れるのかね?」

「ご主人、どうなんすか?」

 

四不象に話を振られた事で姜子牙は思考を中断した。

 

「スープーよ、儂に造れると思うか?」

「居眠りして修行を怠けているご主人には無理っすね。」

「うむ、儂は如何に怠けるのかを考えて全力を尽くしていたからのう。」

「胸を張って言う事じゃないっス!」

 

そんな主従の会話に士郎は苦笑いをする。

 

「それで、放浪の神ゼンにはどうすれば会えるかわかるかね?」

「儂の様なまだまだ駆け出しの道士では会うどころか顔を見ることすら出来ぬだろうのう。」

 

姜子牙の言葉に士郎はため息を吐いて肩を落とした。

 

そんな士郎を見た四不象が助け舟を出すように話し出す。

 

「でもご主人、僕達の目的の途中で二郎真君様に会う可能性はあるんじゃないっすか?」

「君達の目的?」

「僕達は封神計画というのを成す為に旅をしているんすよ。」

 

顔を上げた士郎に四不象は笑顔で話を続ける。

 

「封神計画は悪い事をする道士や仙人を退治するのが目的っス!そして、それは二郎真君様がいつもされている事なんすよ!だから、僕達と一緒に来れば会えるかもしれないっス!」

 

この四不象の言葉に姜子牙は驚いた。

 

姜子牙は士郎へと目を向ける。

 

「それは本当かね、四不象?」

「当ての無い旅をするよりはいいと思うっス。それに、旅の仲間は多い方が楽しいっス!」

「そうか…。という事なのだが姜子牙、私も旅に同行しても構わないかね?」

 

姜子牙は一瞬の間を置いてしまうが、直ぐに返答をする。

 

「まぁ、よかろう。ついでに士郎に手伝ってもらえば儂も楽が出来るからのう。」

 

そう答えながらも姜子牙は思考を巡らせる。

 

(もし、士郎がこの話の流れを意図的に造り出したのだとしたら、相当な知恵者だのう…。まぁ、士郎が悪い者で無い事はわかっておる。ならば、これでよかろう。)

 

そう考えた姜子牙は旅の仲間が増えて無邪気に喜んでいる四不象を見ると、笑みを浮かべながら肩を竦めたのだった。

 

 

 

 

(やれやれ、どうにか同行する事には成功したな。)

 

士郎は無邪気に喜ぶ四不象を見る姜子牙に意識を向ける。

 

(おそらくだが…いや、姜子牙は確実に違和感を感じ取っている。流石は前世の世界において『大公に望まれた者』と言われる人物…といったところか。)

 

士郎は無邪気に喜ぶ四不象を見ると、自身もつられて笑顔になる。

 

(さて、非才のこの身でどこまでやれるか…。不謹慎ではあるが、楽しみだ。)

 

春風が草を舞い上げると、舞い上がった草が四不象の鼻先を撫で上げる。

 

そしてくしゃみをした四不象を見た士郎と姜子牙は、顔を見合わせてから揃って大きな笑い声を上げたのだった。




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