二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第6話

古代中華の大地を1人と1匹が歩いていく。

 

「いい天気だねぇ、哮天犬。」

「ワン!」

 

古代中華の大地を歩いていたのは、二郎と哮天犬だった。

 

ノンビリと歩く二郎は、40年以上の修行で腰の辺りまで伸びた髪を、うなじの所で紐を使って縛っている。

うなじの所で紐を使って縛っている。

 

哮天犬も生まれてから10年以上の歳月で、サラブレッド並みの大きさに成長していた。

 

そんな二郎と哮天犬は、蛟退治に向かう為に中華の地を旅していた。

 

哮天犬は空を飛べるので、哮天犬に乗っていけば直ぐに蛟の元に辿り着くのだが、

仙人としての時間感覚が身に付いてしまった二郎は、ノンビリと歩いているのだ。

 

だが、二郎達の姿は旅というよりも散歩をしているかの様な姿である。

 

二郎は仙人として修行を経た事で、非常に燃費が良く、

大抵の環境で生きていける能力を有している。

 

そして二郎のお供である哮天犬は神獣であり、精霊でもあるので食事等は必要ない。

 

もっとも、嗜好品として食事を求める事は多々あるのだが…。

 

「そういえば、なんで荒れていた川が静まったのかな?」

「ワフ?」

 

この時の二郎は知らないのだが、二郎の神としての権能は『治水』である。

 

その為、世界に存在するあらゆる水は、二郎に害を為さないのだ。

 

そして、二郎が触れれば死を齎す毒水であろうと、たちどころに清水へと変わる。

 

二郎が自身の権能に気付き、使いこなせばやがて聖水や神水にすら変えられるだろう。

 

「まぁ、いいか。時間は幾らでもあるからノンビリといこうか、哮天犬。」

「ワン!」

 

哮天犬が尻尾をブンブンと振りながら二郎にすり寄る。

 

二郎は哮天犬のモフモフとした毛並みを堪能しながら、ゆっくりと蛟退治に向かうのだった。

 

 

 

 

「哮天犬。なんだろうね、あれ?」

「ワフ?」

 

二郎達は蛟退治に向かう旅の途中、岩に刺さっているナニかを発見した。

 

「これって、剣の柄かな?」

 

気の扱いを身に付けた二郎は、岩に刺さっているナニかに嫌な気配を感じなかったので、

特に警戒する事もなく近づいていた。

 

「抜くのは面倒だし、岩を砕いちゃおうか。危ないから離れててね、哮天犬。」

「ワン!」

 

二郎は剣の柄らしきものにポンポンと触れると、剣の柄らしきものに馬歩から崩拳を放った。

 

柄から岩へと衝撃が浸透して、内部から岩を砕くと、

岩の中から3つの剣先を持つ剣が姿を現した。

 

「変わった形の剣だね、哮天犬。」

「ワン。」

 

二郎が地面に落ちている剣を拾い上げると、二郎の手にズシリと重さが伝わる。

 

「おっ?結構重い。修行前だったら絶対に持てなかったな。」

 

手に持った剣を、二郎は拳法の修行で身に付けた技術で振っていく。

 

「うん。慣れれば気にならない重さだし、頑丈そうだから持っていこうか。」

「ワン!」

 

哮天犬が相づちを打つ様に鳴くと、二郎は空いている手で哮天犬の頭をワシワシと撫でる。

 

哮天犬の尻尾はちぎれんばかりに振られていた。

 

「この剣の鞘は無いのかな?剣じゃなくて槍だったら、

 杖代わりにもなるし便利なんだけどなぁ。」

 

二郎がそう言うと剣の柄が伸び、剣は槍へと変化した。

 

「おおっ!?柄が伸びた!?もしかして、これって宝貝(パオペイ)なのかな?」

 

二郎は翳すようにして槍を見る。

 

「今回の旅が終わったら伯父上に聞いてみよっか。」

「ワン!」

 

この宝具はこの旅の後に二郎愛用の武器となる『三尖刀』である。

 

そんな事になるとは知らない1人と1匹は、三尖刀を携えて旅を再開したのだった。




次の投稿は13:00の予定です

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