二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第7話

哮天犬との旅を続けて1ヶ月程経った頃、本能のままに暴れている蛟の元に辿り着いた。

 

「へぇ~、龍に成りかけているだけあって、蛟って結構大きいんだな。」

「ワン!」

 

俺と哮天犬の存在に気付いた蛟は、暴れるのを止めてとぐろを巻いて臨戦態勢に入った。

 

初めて蛟を見たが、かなり大きい。

 

牛でも一飲みに出来る程の大きさだ。

 

龍になったらどれだけ大きくなるんだろうな?

 

「哮天犬、ちょっとこれを持っててね。」

「ワン!」

 

哮天犬は一吠えしてから、槍(剣?)の宝貝を銜える。

 

「さて、俺の拳法はこの蛟に通じるかな?」

 

そう言ってみたものの、俺の心に不安は無い。

 

スタスタと散歩の様に近付いて行くと、とぐろを巻いていた蛟が身体を伸ばして、頭上から噛み付こうとしてきた。

頭上から噛み付こうとしてきた。

 

俺は瞬動で踏み込んで、地上に残っている蛟の身体に一歩崩拳を打ち込む。

 

ズシリとした手応えを感じると、蛟は吹っ飛んだ。

 

だけど、吹っ飛んだ先で蛟は鎌首を持ち上げて威嚇してくる。

 

「今の一撃で仕留められないのか。蛟が頑丈なのか、俺が未熟なのか、どっちにしても帰ったら老師に小言を言われるだろうなぁ。」

  

 

ため息を吐きながらそう言うと、俺は虚空瞬動で蛟の目の前に移動する。

 

そして、虚空立歩で空を踏み締めると、馬歩からの崩拳を蛟の頭部に打ち込んだ。

 

2秒程、蛟の身体が硬直すると、蛟はズシンと音を立てて地面に倒れた。

 

「よし!蛟退治完了!」

「ワン!」

 

哮天犬から宝貝を受け取りながらそう言うと、哮天犬は俺を祝福する様に鳴いた。

 

俺がお礼に哮天犬の頭を撫でてしばらくすると、哮天犬は蛟の所に向かった。

 

「どうした、哮天犬?」

「クゥ~ン。」

 

哮天犬は片方の前足を蛟に乗せると、その円らな瞳で俺を見てきた。

 

「もしかして、蛟を食べたいのかな?」

「ワン!」

 

哮天犬は俺の言葉を肯定する様に、尻尾を振りながら吠える。

 

「頭は退治した証拠として伯父上に持っていくからダメだけど、

 身体の方は俺と一緒にたべようか。」

「ワン!」

 

哮天犬は嬉しそうに俺にすり寄って来た。

 

その後、哮天犬と一緒に蛟を食って腹拵えをすると、哮天犬に乗って

蛟の頭部を退治の証拠として持ち帰り、伯父上に提出するのだった。

 

 

 

 

「二郎。蛟退治、大義であった。」

「はい、ありがとうございます。伯父上。」

 

俺は片膝をついて、伯父上に包拳礼をする。

 

「伯父上、この剣?槍?なのですが、何でしょうか?」

「ほう?それは『三尖刀』だな。」

「三尖刀ですか?」

「うむ、中華の宝貝の1つだ。」

 

へぇ~、やっぱり宝貝だったのか。

 

「それで、この三尖刀なのですが、どうしましょうか?」

「お前が使えばよい。」

「宜しいのですか?」

 

俺の言葉に、伯父上が頷いてから話し出す。

 

「その三尖刀は拾ったのであろう?」

「はい。なんであそこに宝貝があったのかわかりませんが…。」

「ならば、その三尖刀は拾った二郎の物だ。この我が認めよう。」

 

伯父上が許可してくれるなら、遠慮せずに貰っておくか。

 

「ありがとうございます、伯父上。一層精進します。」

「うむ、また今回の様に何かを頼む事もあるだろう。その時に力を

 存分に振るえる様に励むがよい。」

「はい!」

 

俺はそう返事をした後、荒れている川が静まった事を伯父上に話した。

 

「ほう?それはおそらく、二郎の『権能』であろうな。」

「『権能』ですか?」

「うむ。荒れていた川はどの様にして静まった?」

「えっと、俺が近付いたら勝手に静まりました。」

 

俺がそう答えると、伯父上は面白そうに笑みを浮かべて話し出した。

 

「なるほど。二郎の権能はおそらく『治水』であろう。」

「『治水』?」

「うむ、世界のあらゆる水は、二郎に害をなさない…。そういう権能だ。」

 

へぇ~、便利な権能なのかな?

 

「例え毒水だろうと、大雨だろうと、二郎には害をなさぬ。使いこなせばその権能は、

 泥水を清水や神水にすら変える事も出来るであろう。」

 

つまり、水分さえあれば飲み水には困らないって事か。

 

めっちゃ便利な権能やん。

 

「我の推測だが、その権能を使いこなせば酒もより上等な物に変えられるであろう。」

「絶対に権能を使いこなしてみせます!」

 

良い酒を飲めると聞いては黙ってられない。

 

なんせ、今生では娯楽が非常に少ないのだ。

 

そんな中で酒は貴重な嗜好品の1つだ。

 

全力を尽くす価値がある。

 

「うむ、なれば二郎には下界の治水を頼むとするか。」

「下界の治水ですか?」

 

俺の疑問の声に、伯父上が真剣な表情で頷く。

 

「下界では作物を育てる為に川などから水を引いているのだが、

 その際に川の流れを無理矢理変えたりするせいで、少し多く雨が降れば

 川が氾濫するといった事が日常的に起こっているのだ。」

 

へぇ~、それは知らなかったな。

 

「故に二郎よ。これからは時折、治水の任を与える事とする。」

「はい!その任、承ります!」

「うむ、大義である。」

 

伯父上は1つ頷くと、ニヤリと笑った。

 

「二郎よ、お前に褒美を授ける。」

「褒美ですか?」

「うむ。二郎よ、此度の蛟退治の功と、これから行う治水の任に先立ち、

 二郎に仙人としての名を与える事とする。」

 

仙人としての名?

 

「二郎よ、これからお前は『二郎真君』と名乗るがよい!」

「『二郎真君』?」

「昔、お前の前世がどうであろうと、我の家族であると言ったのを覚えているか?」

 

忘れるわけがない。

 

伯父上のその言葉があったから、俺は転生した事を受け入れられたんだから。

 

俺は伯父上の言葉に強く頷く。

 

「『二郎として生きた今こそが真の君の姿』…そういった思いを込めて考えた。」

 

そう言う伯父上の目は、家族としての暖かさを感じさせてくれる優しいものだった。

 

俺は両膝をついて頭を下げる。

 

そして、精一杯の感謝を込めて包拳礼をした。

 

「二郎真君の名!ありがたく頂きます!」

 

こうして俺は二郎真君と名乗り、時には下界の治水を、時には蛟や邪仙を退治しながら、

修行の日々を送っていった。

 

そんな日々を送って、そろそろ俺が生まれてから100年の歳月が経とうとした頃の事。

 

俺は伯父上から、中華の地の外へと向かう任を受けるのだった。




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