「それじゃ士郎さん、僕はここで待ってるっス!」
「あぁ、ありがとう四不象。」
四不象に天帝の宮まで連れて来てもらった士郎はその後、衛兵に案内されて宮の奥へと向かう。
そして天帝が待つ玉座の間に辿り着くと、そこには二郎も待っていた。
士郎が膝をついて包拳礼をすると、天帝は衛兵を下がらせてから口を開いた。
「士郎よ、面を上げよ。」
「はっ!」
天帝の言葉に従い士郎が顔を上げる。
「話の前に元始天尊からのそれを受け取っておこう。」
天帝の言葉で士郎が懐から竹簡を取り出すと、二郎がそれを受け取って天帝に渡す。
天帝は竹簡を流し読むと鼻を鳴らした。
「フッ、元始天尊め、そう動くか。」
「伯父上、何が書いてあったのですか?」
「どうやら元始天尊は姜子牙に哪吒を紹介するらしいな。」
天帝の言葉に士郎は驚く。
(哪吒…確か前世の世界では7歳の時に一度死んでから蓮の化身として転生している筈だが…この世界ではどうなのだ?)
士郎は黙して話の続きを待つ。
「哪吒?…あぁ、あの子ですか。」
「うむ、二郎が助けたあの生まれながらの道士よ。」
驚きのあまり士郎は目を見開いてしまう。
(老師が助けた?生まれながらの道士?…もう、私の前世の記憶や記録は宛てにしない方がいいな。)
士郎は右手で無意識に胃を押さえながらため息を吐いた。
「天帝様、老師、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「よいぞ、士郎。」
「哪吒は生まれながらの道士との事ですが、どういう事でしょうか?」
「事は太乙真人が動いたのがキッカケだ。」
天帝は士郎に哪吒の事を語っていく。
「…では、哪吒は本来産まれる筈だった赤子とは違う者なのですか?」
「いや、哪吒は蓮の精の力を加えられて反魂された子だよ。だから生まれながらの道士ではあるけれど、間違いなく李靖と李氏の子供だね。」
士郎は二郎の言葉にほっと一息吐く。
「もっとも、常人とは違うからか、父親の李靖に嫌われておるようだがな。」
「天帝様、それはどういう事でしょうか?」
「それは二郎が助けた事にも関わる故、二郎から聞くがよい。」
士郎が目を向けると二郎は哪吒の事を話していく。
話しを聞いていく内に士郎は眉を寄せ、表情を歪め、最後に大きなため息を吐いた。
「士郎、大丈夫かい?」
「…えぇ、大丈夫です。」
士郎は無意識に眉間を揉む。
(前世での李靖はたしか、軍神と称えられた唐の時代の名将李靖が基になった人物の筈だ…。そして、如来に宝塔を与えられた人物として托塔李天王という尊格を得ていた英雄だったのだが…。)
頭を抱えた士郎はもう一度大きくため息を吐いた。
「さて、あまりあの霊獣を待たせても悪かろう。士郎よ、謹むがよい。」
天帝の言葉を受けた士郎は、包拳礼をしながら顔を伏せる。
「士郎よ、汝に姜子牙と共に封神計画を成す許しを与える。」
「はっ!」
改めて天帝より許しを得た士郎は玉座の間を後にして、四不象と共に姜子牙の元に向かったのだった。
◆
「伯父上、俺も行きますね。」
「二郎よ、哪吒の所か?」
「はい、士郎にとってもいい経験になるでしょうから。」
そう言うと二郎は玉座の間を去っていった。
「やれやれ、我が甥ながらなんと楽しそうに生きておることか。」
頭を掻きながらそう言った天帝は顔を上げて虚空を見詰める。
「黄帝より始まった中華の人類史…果たして、此度の一件でどれ程の英雄が中華に現れるか…楽しみな事よ。」
そう呟いた天帝は微笑みながら執務をこなしていくのだった。
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