士郎と哪吒の戦いは哪吒の乾坤圏の投擲から始まった。
その投擲に合わせて士郎が踏み込むと、哪吒は僅かに驚いた表情をしながら空に飛び上がる。
それに合わせて士郎が空に跳び上がって斬りかかると、哪吒は身を捩って避ける。
士郎の攻撃を避けた哪吒は手元に戻って来た乾坤圏を無防備に落下していく士郎に目掛けて投擲する。
すると、士郎もそれに合わせて干将と莫耶を投擲した。
乾坤圏と干将・莫耶がぶつかると互いに弾かれるが、乾坤圏は哪吒の手元に戻っていき、干将と莫耶は地へと落ちていく。
士郎は素早く移動して干将と莫耶を手に取り、空にいる哪吒を見据えた。
(やはり空を飛ばれると剣だけでは決め手に欠ける。手の内を見せなければならんか…。)
解析の魔術を使って哪吒の所持する宝貝を見た士郎は、僅かに感じる頭痛に表情を変えぬ様に苦心する。
(流石は神代の宝貝、宝貝の格が高い…。この干将と莫耶でどこまで…!?)
解析の魔術を使ったまま自身の手にある干将と莫邪に目を向けた士郎は、驚いて目を見開く。
(干将と莫耶の格が上がっている…。何故だ?)
動きが止まった士郎に哪吒が乾坤圏を投擲する。
士郎は干将と莫耶を振るって乾坤圏を打ち払う。
(手応えが違う。本来なら格上の筈の乾坤圏を打ち払っても折れる気配が無い…。)
手応えの違いを確認する様に士郎はもう一度解析の魔術を使って干将と莫耶を見る。
(…そうか!この世界が原典になっているという事は、干将と莫耶はまだ存在しない宝貝…つまり、私の使っているこれが原典となっているのか!)
三度哪吒が投擲してきた乾坤圏に、士郎は干将と莫耶を投擲して対応する。
すると、干将と莫邪は壊れる事なく乾坤圏と弾き合った。
士郎は弾かれた干将と莫耶の元に駆けて手に取る。
(だが、それだけでこの格の高さは…まさか、投影で格が落ちてないのか?)
士郎の投影魔術で造り出される物は、本来の物から劣化されて投影されるのが常であった。
だが、今投影している干将と莫耶は常のそれとは違っていた。
(何故そうなった?考えられるのは原典の世界、神代、そして老師が手を加えたこの身体…。だめだ、答えが出ない。)
戦いの最中だというのに士郎は頭を抱えたい衝動にかられていた。
士郎が悩んでいると、三度の投擲を防がれた哪吒が乾坤圏を手に近接戦を挑んでくる。
悩みながらも士郎は干将と莫耶を使って哪吒と打ち合っていく。
一合、二合と哪吒と打ち合っていくと、士郎は一度距離を取って大きく息を吐いた。
「もういいのか?」
「あぁ、すまなかった。」
哪吒の問い掛けに士郎は自嘲の笑みを浮かべながら答えた。
(愚か者め。もし相手が老師だったならば、一合目で地に叩き伏せられているぞ!)
気持ちを切り替えるために調息をして集中をした士郎は、自ら哪吒の間合いに踏み込んでいったのだった。
◆
「士郎は漸く戦いに集中したみたいだね。何か気になる事があったのかな?」
「ワンッ!」
隠形の術で姿を隠しながら哮天犬と一緒に戦いを観戦している二郎は、士郎の動きの違和感を正確に読み取っていた。
「まぁ、何が気になっていたのかはわからないけど、これで少しは見応えがある戦いになるといいんだけどね。」
「ワンッ!」
二郎達の視線の先では哪吒が士郎の頭上を自在に飛び回りながら仕掛けていくが、士郎は哪吒の攻撃を誘導する様に立ち回っていく。
「現状は哪吒が空を飛ぶ利を活かしているから士郎は決定打に欠けるってところかな。」
士郎は基本的に受けに回っているのだが、その士郎が攻勢に転じようとすると哪吒は直ぐに間合いを取って機を与えない。
「さて、士郎はどうするつもりかな?楽しみだね、哮天犬。」
「ワンッ!」
二郎達と姜子牙達が見守る中で、士郎と哪吒は半刻(一時間)程打ち合い続けたのだった。
本日は5話投稿します。
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