「なるほどのう。それで、その後はどうなったのじゃ?」
「李靖が姜子牙達を家に案内をして話し合いをしたんだ。そこで李靖がもう一度道士として修行をし直すと宣言をしてね。哪吒と二人で崑崙山に修行に行くことが決まったんだ。」
士郎と哪吒の戦いとその後の話し合いも見届けた二郎は、竜吉公主の屋敷を訪れていた。
「李靖が一端の道士になれば哪吒と上手くいきそうじゃのう。良かったのじゃ。」
竜吉公主は自身と似た生い立ちの哪吒の存在を少し前に知ってからずっと気に掛けているのだ。
「それで、姜子牙達はこの後どうするのじゃ?」
「他に仲間の当てが無いからね。姜子牙達も哪吒達と一緒に崑崙山に行って、元始天尊様と話をしてみるそうだよ。もしかしたら、姜子牙達はここに来るかもね。」
「それは楽しみなのじゃ。」
竜吉公主は笑顔で二郎にしなだれかかる。
「二郎真君、妾も封神計画に参加出来るのかのう?」
「さて、どうかな?竜吉公主の弟子の参加を求めるかもしれないし、竜吉公主自身の参加を求めるかもしれない。どちらにしろ、答えが出るのは姜子牙達が崑崙山に行ってからだね。」
そんな二人のやり取りを見ていた哮天犬は欠伸をすると、丸くなって眠ったのだった。
◆
「それじゃ士郎と哪吒はここで待っておってくれ。李靖、何をしておる。早く行くぞ。」
「うう…姜子牙殿、大丈夫だろうか?」
「そんな事はわからぬのう。まぁ、どちらにしろお主が元始天尊様に頭を下げねば始まるまい。」
「はぁ…不安だ…。」
士郎と哪吒の戦いの後、領主の屋敷にて話し合いをした姜子牙達一行は三日後に崑崙山を訪れた。
李靖の領地は李氏が代理として治める事になったのだが、姜子牙が女傑と評する李氏ならばなんら不足無く政をする事が出来るだろう。
唯一哪吒だけが李氏を一人にする事を不安に思っていたが、李氏に背中を押され、こうして崑崙山にやって来ていた。
「スープー、頼むぞ。」
「了解っス!」
「あぁ…行きたくない。」
「お主のあの覚悟は何だったのかのう?」
「それとこれとは別の話ですよ、姜子牙殿。」
そんな会話をしながら離れていく姜子牙達を見送った哪吒は、一緒に残っている士郎に話し掛けた。
「一つ聞いてもいいか?」
「あぁ、構わんよ。」
「あの時、お前は本気だったのか?」
そう問い掛けてくる哪吒に士郎は探る様な目を向ける。
「何故そう思ったのかね?」
「お前があの方の弟子だからだ。」
哪吒の言葉に士郎は驚きの表情を浮かべる。
「いつから知っていたのかね?」
「お前が領地に来る前に、あの方が俺と母さんの所に来て教えてくれた。」
「…そうか。」
士郎はため息を一つ吐くと、観念した様に話始める。
「正直に言えば、まだ余力は残していた。」
「そうか。」
士郎の答えに哪吒は納得した様に頷いた。
「お前から見て、俺はどうだった?」
「どれだけ低く見積もっても、私よりは才があるだろう。」
「だが、お前に勝てなかった。」
「経験の差だ。あの時に感じた事だが、君は手合わせの経験が殆ど無いだろう?」
哪吒は士郎の言葉に頷く。
頷いた哪吒を見た士郎は小さくため息を吐いた。
(殆ど実戦経験が無いのにあれだけ戦えるのか…呆れる程の才だな。もっとも、老師に比べればまだ常識の範囲なのだろうが。)
腕を組んでそう考えている士郎に、何かを考えていた哪吒が声を掛けた。
「士郎…だったな?一つ頼みがある。」
「何かね?」
「俺は強くなりたい。あの方の元で修行出来ないか?」
哪吒の頼みに士郎は驚きの表情を浮かべる。
「老師に弟子入りするのかね?君は太乙真人様の弟子だった筈だが?」
「あいつは宝貝造りは出来るが拳法は出来ない。」
太乙真人は仙人である。
なのである程度は拳法を修めているのだが、戦士としての才には恵まれていなかった。
その為、太乙真人は哪吒に戦い方を教えず宝貝の使い方しか教えなかったのだ。
「すまないが、老師がどこにいるのかわからないのでどうにも出来…。」
「いいよ、士郎と一緒に哪吒も修行をしようか。」
士郎の言葉を遮る様に二郎が虚空から姿を現す。
そんな二郎を見た士郎は頭を抱えながら大きくため息を吐いたのだった。
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