二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第86話

「よう来たのう、姜子牙、李靖。」

 

崑崙山にある元始天尊の庵にて、姜子牙と李靖は元始天尊に会っていた。

 

姜子牙は常と変わらずに気楽な様子で包拳礼をするが、李靖はブルブルと全身を震えさせながら包拳礼をしている。

 

「して、姜子牙の方は見当がつくが、崑崙山から逃げ出した李靖は何用かのう?」

 

この元始天尊の問いに、李靖は顔を青くしながら冷や汗をダラダラと流す。

 

そんな李靖を姜子牙は肘でつつく。

 

「こ、この度参りましたのは、い、今一度崑崙山で修行をす、することをお許し願いたく…。」

「ほう?あの根性なしが随分と変わったのう。」

 

震えながら話す李靖を見た元始天尊は髭を撫でながら笑う。

 

元始天尊が焦らす様に時間を置くと、李靖は吐きそうな程の緊張感に気を失いそうになる。

 

そして、李靖が緊張から喉の渇きで唾を飲み込んだ時…。

 

「よかろう。今一度、崑崙山にて修行をする事を許す。」

 

この一言で、李靖は力が抜けて地にへたり込んでしまった。

 

そんな李靖は見て元始天尊は愉快そうに笑う。

 

「ほっほっほっ!中々に男を見せたな、李靖よ。」

「意地が悪いのう…。」

 

心底楽しそうに笑う元始天尊を姜子牙はジト目で見る。

 

「元始天尊様、そろそろいいかのう?」

「うむ、姜子牙よ、仲間の件か?」

「話が早くて助かるのう。」

「ふむ、その件だが、今しばらく待て。」

 

そう答える元始天尊に姜子牙は首を傾げる。

 

「次に紹介しようと思った相手なのだが、方々に話を通さなくてはならんのでな。今しばらく時が掛かる。なので修行でもして待っておれ。」

「方々に話を?一体、誰を紹介する気だったのかのう?」

「竜吉公主という仙女よ。」

 

元始天尊の言葉に姜子牙はまた首を傾げるが、李靖は驚いて目を見開く。

 

そんな李靖の反応に目敏く気付いた姜子牙は李靖に話を振る。

 

「李靖、知っておるのか?」

「天界などではなく中華の地に居をおいて多くの弟子を取る仙人…って、何で姜子牙殿は知らんのですか!?」

「儂は修行を怠けていたからのう。元始天尊様に他の道士や仙人に会わせてもらっておらんのだ。」

 

そう答える姜子牙に李靖はどこか親近感の様なものを感じた。

 

「修行を怠ける。うんうん、気持ちはわかりますぞ!」

「うむ、怠けて貪る惰眠は最高だからのう。」

「わかります!わかりますぞ!」

 

意気投合する二人を見て元始天尊は深いため息を吐く。

 

「まったく、お主達ときたら…。少しは成長したと喜んだ儂の気持ちを返さぬか!」

「それとこれとは話が別だのう。」

「えぇ、姜子牙殿の言う通りです。」

 

胸を張って言う姜子牙と李靖を見て、元始天尊はもう一度ため息を吐く。

 

「馬鹿弟子達め…もうよいからさっさと修行に行け。」

「む?元始天尊様が修行をつけてくれるのではないのかのう?」

 

そう言う姜子牙に元始天尊は意味ありげに笑みを浮かべる。

 

「今、崑崙山にお主達に修行をつける丁度よい相手が来ておってな。」

「丁度よい相手?」

「気になるのならば哪吒達の所に戻るがよい。ほれ、さっさと行かんか。」

 

元始天尊が庵から二人を追い払う様に手を振ると、姜子牙と李靖は四不象に乗って哪吒達の所に向かったのだった。




次の投稿は15:00の予定です。

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