「それじゃ始めようか。二人同時に掛かってきていいよ。」
二郎がそう言うと哪吒は乾坤圏を、士郎は干将と莫耶を構えた。
二郎は姜子牙達が戻ってくるまで暇なので、哪吒と士郎を手合わせに誘ったのだ。
哪吒と士郎が武器を構えても、二郎は無手のまま自然体である。
そんな二郎に哪吒は乾坤圏を投擲した。
加減などない全力の投擲である。
だが、哪吒が全力で投擲した乾坤圏を二郎はあっさりと掴み捕る。
「中々いい投擲だね。でも、ちょっと素直過ぎるかな。」
そう話す二郎の側面から士郎が斬り掛かる。
だが、二郎は乾坤圏の輪の形状を利用して斬り掛かってくる士郎の腕を通して引っかけると、士郎を地へと投げ落とした。
そして二郎は残っているもう一つの乾坤圏を哪吒へと投擲する。
哪吒は投擲された乾坤圏を横に飛んで避けようとするが、乾坤圏はまるで意思を持っているかの様に哪吒が避けた方向へと曲がり腹に直撃した。
投げ落とされた士郎は受け身を取る事が出来なかった為に、呼吸がままならず身体を起こすことが出来ないでいる。
哪吒も二郎が投擲した乾坤圏が腹に直撃したダメージで身体を地へと投げ出していた。
そんな二人を見て二郎が微笑みながら話し掛ける。
「さぁ、神水を飲んで傷を癒したら続きをしようか。大丈夫、死なない程度に加減はするから安心していいよ。」
二郎がそう言うと哪吒はなんとか立ち上がろうともがき、士郎は遠い目をしたのだった。
◆
「あっ!?」
「どうしたのだ、スープー?」
「ご主人、あそこ!士郎さんと哪吒くんが誰かと戦っているっス!」
姜子牙と李靖は四不象に乗って元始天尊の庵から戻って来ていたのだが、士郎達の近くまで来ると、四不象が戦っている二人に気付いて大きな声を上げた。
そんな四不象の声で姜子牙は前方に目を凝らすと、そこには衣服をボロボロにして明らかに苦戦していると見える二人の姿があった。
姜子牙は驚いて目を見開くが、直ぐに腰に帯びていた打神鞭を手に取る。
しかし…。
「ちょ!?姜子牙殿!?何をするつもりですか!?」
「二人の助太刀をするに決まっておろうが。」
姜子牙の返答に李靖が顔を青ざめる。
「無理!無理無理!逃げましょう!」
「何が無理かわからぬが、三対一ならばやりようはあろう。」
「いやいやいや!絶対無理ですって!」
李靖の反応に姜子牙は疑問を持つが、名を預け友となった士郎が苦戦をしていたので先を急ぐ。
「スープー、李靖を下ろすぞ。」
「了解っス!」
姜子牙の指示に従って空高く飛んでいた四不象が高度を下げると、姜子牙は李靖を突き落とした。
「あいたっ!?」
地に強かに尻を打った李靖が声を上げると、姜子牙は四不象に指示をして直ぐに飛び上がる。
「すまんのう、文句ならば後で聞く!」
そう言って去っていく姜子牙達を見送った李靖は、両手で頭を抱える。
そして…。
「なんで二郎真君様と哪吒が戦っているんだよぉ…。李氏、どうしたらいいんだ?」
少しの間葛藤をしていた李靖は両手で頬を張ると、戦っている哪吒達の元へと駆けたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
今週はちょっと忙しかったので全体的に短めです。申し訳ございません。
また来週お会いしましょう。