二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第89話

「士郎!」

 

二郎の崩拳で殴り飛ばされてきた士郎に姜子牙が声を掛ける。

 

「くっ…尚、策は出来たかね?」

「正直に言えば、士郎の魔術頼みと言ったところだのう。」

「それは策と言えるのかね?」

 

姜子牙が二郎に目を向けると、二郎は動かずに微笑んでいた。

 

「儂達と二郎真君様では力の差があり過ぎて策が意味を成さぬ。となれば、未知に頼るしかなかろうて。」

「やれやれ、随分と期待されたものだ。」

 

そう言うと士郎はため息を吐いた。

 

「士郎よ、妲己の時の魔術…あの剣は同時に幾つまで造れる?」

「尚、あれは私が使える唯一の魔術の一端なのだ。」

「一端?」

 

二郎へと目を向けながら姜子牙が疑問の声を上げると、士郎も二郎へと目を向けながら頷く。

 

「すまないが、少しの間持ちこたえてくれ。」

「二郎真君様が手を抜いてくれる事に期待するしかないのう…。」

 

頭をガシガシと掻いた姜子牙が四不象の上で打神鞭を構える。

 

「哪吒よ、聞いていた通り、時間を稼ぐとするかのう。」

「俺に指図をするな。」

 

そう言いながらも、哪吒は乾坤圏を構える。

 

「相談は終わったかな?それじゃ、そろそろ再開しようか。」

 

二郎が瞬きの間に姜子牙達との距離を詰めると、それを見越していたかの様に姜子牙が打神鞭を使って巨大な風の渦を造り出し、二郎を風の渦に閉じ込める。

 

それと同時に士郎が詠唱を始める。

 

「哪吒!」

 

姜子牙の声で哪吒が二つの乾坤圏を風の渦へと投じる。

 

風の渦に乗った乾坤圏は十二分に加速してから二郎へと向かう。

 

しかし…。

 

「う~ん、もう一つってところかな?」

 

打神鞭の風で加速した二つの乾坤圏をあっさりと掴み取った二郎は、乾坤圏を哪吒と姜子牙に投じる。

 

風の渦を突き破った乾坤圏が姜子牙と哪吒に直撃し、両者の腕の骨を砕いた。

 

「ぐっ!?」

 

痛みで呻いた姜子牙だが、打神鞭にさらに力を注ぎ込み風の渦を強化する。

 

「中々の暴風だね、でも…。」

 

気楽な様子で話す二郎がこの戦いで初めての構えである馬歩を見せる。

 

そして…。

 

「天地開闢の力には程遠いかな。」

 

そう言って二郎が崩拳を放つと、風の渦は消し飛ばされてしまった。

 

その一撃を見た姜子牙は驚きながらも、もう一度打神鞭に力を注いで風の渦を造りだすが、力を使い過ぎた為に血を吐いてしまう。

 

「おや?大丈夫かい?」

 

二度風の渦に閉じ込められた二郎が姜子牙に声を掛けるが、姜子牙は力を注ぎ込み過ぎて薄れる意識を繋ぎ止めるのに精一杯だった。

 

そんな姜子牙を援護しようと、哪吒が砕けずに残った腕で自身の腕を砕いた乾坤圏を二郎の背後から投じる。

 

それでも、乾坤圏は二郎にあっさりと掴み取られてしまう。

 

だが、この一手が貴重な時間を稼いだ。

 

「So as I pray,」

 

戦いの場に士郎の詠唱が響き渡る。

 

そして…。

 

「unlimited blade works.」

 

士郎の詠唱と共に、戦いの場は剣に埋め尽くされたのだった。

 

 

 

 

儂は自分の目を疑った。

 

何故なら、見渡す限りの果てまでが剣で埋め尽くされていたからだ。

 

「これは…?」

 

儂は力を使い果たし、スープーの背に身体を預けながらも周囲に目を凝らす。

 

「固有結界。それが、私が使える唯一の魔術だ。」

 

士郎が手を頭上に上げると、それに呼応する様に数十の剣が浮かび上がる。

 

それを見た二郎真君様は虚空に手を翳すと、剣先が三つに分かれた剣を掴み取った。

 

おそらく、あれが音に聞く三尖刀だろうのう。

 

二郎真君様が掴み取った三尖刀を一振りすると、その柄が伸びて槍へと変わった。

 

「貴方に武器を取らせた事を、誇るべきだろうな。」

 

そう言いながら士郎が手を振り下ろすと、数十という剣が次々と二郎真君様に向かって飛んでいった。

 

だが…。

 

「うん、面白いね。でも、ギルガメッシュのあれと比べたらまだまだかな。」

 

二郎真君様が目に見えぬほどの速さで三尖刀を振るっていくと、士郎が放った数十という剣が次々と弾かれ、砕かれていく。

 

そして二郎真君様は剣の雨の中でも変わらずに、ゆっくりと儂達に向かって歩を進めてきた。

 

前後左右を問わずに士郎は剣を飛ばしていくが、それらは二郎真君様の歩みを一瞬たりとも止めることはかなわない。

 

その姿は…まさに武神だった。

 

あぁ…これはダメだのう…。

 

士郎は数十もの剣を放ち、時には剣を自壊させたりしながら自らも剣を取って二郎真君様に仕掛けていく。

 

だが、力の差は歴然としていた。

 

「すまんのう、士郎。儂に今少しの力があれば、お主を逃がすぐらいは出来たやもしれんのに…。」

 

全霊を持って立ち向かった士郎が二郎真君様に一蹴されたのを見て儂が完全に諦めたその時…。

 

「お待ちください!二郎真君様!」

 

戦いの場に一人の男の声が響き渡る。

 

「愚息が何をいたしたのかわかりませぬ!ですが!どうか私めの話をお聞きください!」

 

両膝を地につけて包拳礼をする李靖の訴えが、二郎真君様の動きを止めた。

 

それを見て僅かに気が緩んだ儂は、あっと思う間もなく気を失ったのだった。

 

 

 

 

封神演義の一節にはこう綴られている。

 

『二郎真君との手合わせを討伐と勘違いした姜子牙と李靖は慌てふためいた。』

 

『姜子牙は友である士郎のために直ぐに駆けつけたが、士郎と哪吒と共に二郎真君にあっさりとやられてしまった。』

 

『満身創痍の三人をまだ戦えると判断した二郎真君は手合わせを続けようとするが、懸命な李靖の訴えを聞き入れて手合わせを止めたのだった。』

 

戦う力を持たぬ李靖が戦いの場に姿を現し、武神である二郎真君に命懸けで訴えたこの一事は、後の時代に【李靖の包拳礼】と称されることになる。

 

これは命懸けで忠言、諫言をする勇士の事を指す故事となり、後の中華の歴史に名を残す多くの英雄達に影響を与えたのだった。




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