「…うっ、ここは、どこかのう?」
「あっ、ご主人、気が付いたっすか?」
姜子牙は気怠い身体を寝台から無理矢理起こすと、目を覚ますために頭を振る。
「スープー、李靖が来た後はどうなった?生きておる事を見れば、最悪の事態にはならなかったようだがのう。」
「ご主人、話はご飯の後にするっすよ。」
そう言うと四不象が寝台の上にいる姜子牙の元に膳を持ってくる。
膳を見た姜子牙の腹の虫が盛大な大合唱を始める。
「では、馳走になろうかのう。」
膳の一つの粥を啜った姜子牙はあまりの上手さに舌鼓を打つ。
(これは本当に旨いのう。作ったのは士郎か?)
粥を一口啜った後に姜子牙は竹の器に入っている水を口にする。
(この水も凄く旨いのう。喉が渇いておったからか?)
そこからは思考が入り込む余地も無いぐらいに、姜子牙は一心不乱に食事に集中した。
膳に乗せられた料理を余すことなく平らげた姜子牙は、一気に水を飲み干す。
「ふぅ~、旨かったのう。」
「口にあった様でなによりだね。」
姜子牙は驚きながら声のした方に顔を向ける。
そこには二郎の姿があった。
動揺を表に出さぬ様に苦心しながら、姜子牙は二郎に包拳礼をする。
「二郎真君様とお見受けいたします。」
「うん、そうだよ。」
姜子牙は気を失う前の事を思い返しながら言葉を選んでいく。
「二郎真君様、何故に哪吒と士郎の二人と戦っておられたのでしょうか?」
「あの二人とは手合わせをしていただけだよ。」
「…手合わせ?」
二郎の言葉を聞いた姜子牙は、二郎の言葉の真意を探ろうと首を傾げて思考する。
(あれが手合わせ?士郎と哪吒は掛け値無しの全力だった筈だが…。)
腕を組んで悩む姜子牙に二郎が声を掛ける。
「あれ?元始天尊様に聞いていないのかい?君達には俺が修行をつける予定なんだけど。」
そこまで言われて姜子牙はようやく思い至った。
(あの腹黒め…。何がちょうどいい相手だ!二郎真君様が修行をつけてくださるのなら最初から言わぬか!おかげで肝が冷えるどころか潰れかけたぞ!)
内心で元始天尊に文句を言い続ける姜子牙に、二郎が声を掛ける。
「色々と聞きたい事はあるだろうけど、今はゆっくりと休んだ方がいいね。明日には士郎が君の疑問に答えてくれるからさ。」
そう言うと二郎は部屋から去っていき、姜子牙と四不象が残された。
姜子牙は一度大きくため息を吐いてから話し出す。
「スープーよ、士郎から何か話を聞いておらぬか?」
「僕も詳しくは聞いていないっス。でも一つだけわかるのは、僕達は勘違いをして二郎真君様の手合わせを邪魔したって事っス。」
そう言う四不象の顔は青醒めている。
「まぁ、二郎真君様も楽しんでおったようだし大丈夫だろう…多分のう。」
「多分ってなんすかぁ!?」
「もし討伐されるのなら、既に儂達は討伐されておるわ。さて、儂はまだ身体が怠いから寝るとするかのう。」
そう言うと姜子牙は寝台に身体を預けて早々と寝息をたて始めた。
そんな主人の姿を見た四不象は、大きくため息を吐いたのだった。
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