「さて、士郎よ、それでは話を聞かせてくれるかのう?」
姜子牙が二郎達の手合わせで気絶した翌日、姜子牙と四不象は士郎に話を聞くことにした。
「そうだな…先ずは私の立場から話そう。私は老師…二郎真君の弟子だ。」
「二郎真君様の弟子になれたっすね?士郎さん、おめでとうっス!」
「いや、四不象。私は老師の弟子になれたのではない。既に弟子になっていたのだ。」
士郎の言葉に四不象が首を傾げると、姜子牙が口を開く。
「つまり、儂とスープーに会う前から士郎は二郎真君様の弟子だったという事かのう?」
「あぁ、それで合っている。」
「僕達と会う前から二郎真君様の弟子だったんすか?それじゃ、士郎さんの目的は何っすか?」
「おそらくは、儂達の手伝いと監視…といったところかのう?」
士郎は姜子牙の言葉を首を縦に振って肯定する。
「二郎真君様が弟子を取ったって聞くのは初耳っス!」
「そうだのう。士郎よ、どのような経緯で二郎真君様の弟子になれたのだ?」
「その事を話すと少し長くなるが?」
「構わんよ。」
士郎は『世界の守護者』だった頃の事を姜子牙に語っていく。
話を聞いていた姜子牙と四不象は何度も驚きの表情を見せた。
「正直、なんと言っていいかわからぬのう。」
「昔の私が愚かだったというだけの事さ。」
「そんな事ないっすよ!士郎さんは立派っス!」
「そうだのう。弱っている所に甘言を投げ掛けた『世界』がろくでもなかっただけだのう。」
そう言うと姜子牙と四不象は神水で作った白湯を口にする。
最初は二郎が作った神水と聞いて恐縮して口にしなかったのだが、士郎が慣れた様に口にするのを見ると好奇心に負けて口にするようになったのだ。
「さて、私は君達を騙していたのだが…尚、君に名を返した方がいいかね?」
「士郎が儂達に近付いたのは元始天尊様を始めとした仙人達の指示故であろう?ならばあの腹黒仙人に文句の一つも言いたくなるが、士郎の責任ではないのう。」
「そうっすよ!士郎さんは僕達の友達で仲間っス!」
そんな姜子牙達の言葉に、士郎は気恥ずかしさを誤魔化す様に苦笑いをする。
「さて話は変わるが、二郎真君様が修行をつけてくれるそうだが…どうなるのかのう?」
姜子牙の疑問に士郎は白湯を一口飲んでから答える。
「老師曰く、昨日の様な手合わせが基本となるそうだ。」
「あれが手合わせ?儂には命懸けの戦いにしか見えなかったがのう。」
「武神との戦いに勝る経験は無いと思うがね。」
「それは理解出来るが、あれでは身体が持たぬのう。」
ため息を吐きながら頭を掻く姜子牙に、士郎は意味ありげな笑みを見せる。
「安心しろ。どれ程の傷を負っても生きてさえいれば、老師の神酒で完治する。私はそうやって老師に鍛えられてきた。」
士郎はそう言うと虚空を見詰める。
そんな士郎の姿に姜子牙は苦笑いをすると、自身も味わうのだと理解して頭を抱える。
揃ってため息を吐いた士郎と姜子牙を見た四不象は、我関せずとばかりに白湯を味わっていったのだった。
次の投稿は15:00の予定です。