「士郎、それじゃ咸卦法の修行を始めようか。」
「咸卦法?」
哪吒との手合わせを終えて休憩していた姜子牙が二郎の言葉に疑問を持つ。
「二郎真君様、咸卦法って何っすか?」
「咸卦法は士郎に調息の修行をさせていた時に偶然見つけたものなんだ。名付けたのは太上老君様だけどね。」
素直に疑問を投げ掛けてきた四不象に二郎が説明をしていく。
「咸卦法は道士や仙人が扱う『気』と士郎の様な魔術師が扱う魔力を用いて大きな力を手にする技法だね。」
「二郎真君様、魔力とは何かのう?」
二郎の言葉に今度は姜子牙が疑問を投げ掛ける。
「魔力を一言で言えば、姜子牙が打神鞭を扱う際に使っている力だよ。」
「なるほどのう。」
合点がいった姜子牙は何度も頷く。
その後半刻(一時間)程士郎は咸卦法の修行を続けたが、一度も咸卦法に成功しなかった。
その修行の様子を見ていた二郎が腕を組みながら首を傾げる。
「う~ん、やっぱり『気』を扱える様にならないと難しいかな?」
二郎がそう言うと、調息で息を整えていた士郎が二郎に顔を向ける。
「すまない、老師。」
「気にしないでいいよ、士郎。」
二郎がそう言うが士郎は自嘲する様に皮肉気な笑みを浮かべる。
(士郎が『気』を扱える様になるには『アレ』をさせるしかないかな?)
神水を飲んで一息ついている士郎を見ながら、二郎は更に考えを進めていく。
(うん、士郎は『気』を整えられる様になって身体も成長したし、そろそろ『アレ』をさせても問題無いか。)
そう考えて二郎が笑みを浮かべると、士郎は何故か首筋に寒気を感じ身を震わせたのだった。
◆
士郎の咸卦法の修行が上手くいかなかった後日、二郎は殷の都の妲己の元を訪ねていた。
「楊ゼン様がまたいらしてくださるなんて…妲己、嬉しいわん♡」
そう言いながら両手を頬に当てた妲己が顔を朱に染める。
「それで、此度は何用でしょうか、楊ゼン様?」
「おや、察しがいいね、妲己。」
「ふふ、殿方の機微を察するのがいい女というものよん♡」
茶目っ気たっぷりに片目を瞑った妲己は二郎に身を寄せる。
「妲己、士郎のお相手を紹介してくれないかな?」
「士郎というと、楊ゼン様の弟子のあの男の事よねん?」
「うん、そうだよ。」
人差し指を顎に当てた妲己が首を傾げる。
「う~ん…そうね~ん…。」
少しの間悩んだ妲己はパッと笑顔になる。
「そうだわん♡王貴人ちゃんなんてどうかしらん♡」
「王貴人?彼女は『アレ』を知ってるのかい?」
「知識だけはあるわん。でも、王貴人ちゃんはまだ経験が無いのん♡」
そう答えた妲己は愉快そうにクスクスと笑いだす。
「これで真面目過ぎる王貴人ちゃんも少しは軟らかくなるといいわねん♡」
「うん、士郎もちょっと真面目過ぎるところがあるからちょうどいいかな。」
そう話して顔を見合わせた二郎と妲己は揃って愉快そうに笑うのだった。
◆
「…クシュン!」
二郎と妲己が愉快そうに笑っていた頃、紂王に幻術を掛け終えた王貴人がくしゃみをしていた。
「あれれ~?王貴人ちゃん、疲れて体調を崩しちゃったのかな?」
「いえ、大丈夫です、胡喜媚姉様…クシュン!」
王貴人がくしゃみをする姿を心配そうに見詰める胡喜媚に、王貴人は笑顔を返す。
(妲己姉様の指示で紂王に幻術を掛け続けて私も成長をしてきた。次の機会、必ず姜子牙と士郎に勝ってみせる!)
そう意気込んだ王貴人だが、不意にまた鼻がムズムズとして可愛らしいくしゃみをしたのだった。
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