二郎になりました…真君って何?   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第96話

「い、一夜を共にしたからといって、気を許すと思うな!私達は敵なのだからな!」

 

房中術をして士郎と一夜を共にした王貴人が、寝台の上にて薄い掛け布団で身体を隠しながら士郎を威嚇する様に睨んでいる。

 

もっとも、そんな王貴人の顔は真っ赤に染まっているのだが…。

 

「…わかっているさ。」

 

苦笑いをしながら答える士郎に王貴人は不満気な表情をする。

 

「貴様、房中術は初めてと言っておきながら、妙に行為になれてなかったか?」

「魔術にも似たようなものがあってな。それでだろう。」

「ふんっ!ふしだらな奴め。」

 

頬を少し膨らませながらそっぽを向いた王貴人の姿に、士郎はまた苦笑いをする。

 

「さて、水浴びでもして身体を清めるとしようか。もっとも、私はこのまま君と一緒に寝台にいても構わんのだがね。」

「だ、誰がこれ以上貴様と一緒になどいるか!」

 

そう言って薄い掛け布団で身体を隠したまま立ち上がった王貴人は、着替えを手に取って寝室を小走りで去っていった。

 

僅かなからかいに見事な反応を見せた王貴人を見た士郎は、口元を片手で押さえてクスリと笑ったのだった。

 

 

 

 

「あらん?おはよう二人共♡もう少しゆっくりしてもよかったのよん?」

 

そう言いながら妲己は二郎に寄り添って酌をしている。

 

「おはようございます、妲己姉様。」

「少し顔付きが変わったわねん、王貴人ちゃん♡」

「そうでしょうか?」

「ふふ、女の顔になったわん♡」

 

片手を頬に当てた王貴人は不思議そうに首を傾げる。

 

「おはよう、士郎。気を感じ取る事は出来る様になったかな?」

「魔力とは違うものがある事はなんとなくだがわかるようになった。だが、はっきりと感じ取れているわけではない。」

 

士郎の答えに、二郎は顎に手を当てて考えだす。

 

「士郎と王貴人は相性がいいのかな?」

「そうねん♡王貴人ちゃんの力も成長しているみたいだし素晴らしいわん♡」

 

顔から火が出るかと思う程に恥ずかしい思いをしただけはあると、王貴人はホッと息を吐く。

 

「それじゃ、しばらくは二人に修行を続けさせようか。」

「ええ、そうしましょ♡」

「「…え?」」

 

二郎と妲己の会話に士郎と王貴人が同時に反応する。

 

「ちょ、ちょっと待て老師!僅かにだが『気』を感じ取れる様になったのだ!咸卦法の修行に移行するべきだろう!?」

「わ、私も幻術の修行をするべきだと思います!」

 

そう訴える士郎と王貴人の二人に、二郎と妲己はニコニコと笑みを浮かべている。

 

「士郎、王貴人、二人はお互いを相手に房中術をするのは嫌かな?」

「ひ、必要とあれば否やはない。」

「わ、私も必要なれば…。」

 

士郎と王貴人はお互いにチラチラと目を向けるが、目が合うとサッと逸らしてしまう。

 

もっとも、顔を赤くしているので悪い反応ではない。

 

そんな二人の反応を見た二郎は笑顔で立ち上がる。

 

「妲己、一年ぐらいしたら迎えに来るから。その間、士郎を頼むよ。」

「了解よ~ん♡」

 

片目を瞑って二郎に返事をした妲己は、自分も立ち上がって二郎に口付けをする。

 

「士郎、房中術以外の修行も自分で続けなよ。王貴人と手合わせをするのもいいかもね。妲己に神酒と霊薬を渡しておくからさ。」

 

そう言いながら妲己に物を渡した二郎は哮天犬に乗って殷の都を去っていった。

 

一人敵地に残された士郎は、片手で頭を抱えて大きなため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

封神演義の物語の中で妲己に敗れた姜子牙達が崑崙山にて修行をする場面があるのだが、その修行において士郎一人だけが二郎真君に別の場所につれて行かれている描写がある。

 

この士郎がつれて行かれた場所はハッキリとしないのだが、その修行の後に道教の基本である『気』の扱いを体得した事から良き修行であったのだろう。

 

一説によればこの修行の過程で士郎は王貴人と仲を深めたとあるのだが、この修行の少し前に敵対したばかりという事もあって真偽の程は定かではなかったのだった。




次の投稿は15:00の予定です。

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