迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
格闘戦に強いドラゴンフォースでも戦いずらい。それは義理ではあるが娘となった翼を傷つけるという事に俺は中々決定打を放てずにいた。
「いい加減に目をさませ!もうスタークはいないんだ!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
この暴走振りに大人達はデバイスを構えている。龍斗はクローズに、ローグと共に何時でも加勢出来るように待機していた。
俺は攻撃を防いだり、ビートクローザーを呼び出し攻撃を抑え込んだりと、疲労が貯まり始めていた。
ええい、エボルトめ....わかりずらい構造にしやがって。戦いながらだからか探しにくいが俺は変声システムを探していた。
『ファンキードライブ!』『ギアリモコン』
姿を隠したヘルブロス。ここはチャンスだが、攻撃されれば終わりだ。それでもイチかバチかエボルボトルを交換する。
『ラビット』『ライダーシステム』『エヴォリューション!』
「フェイズ3、変身!」
ハンドルを回して展開したライドビルダーがヘルブロスにより破壊され、変身が解除されてしまう。
「っ!やべぇ!」
龍斗が駆け出すが、それよりも早く俺はヘルブロスにネビュラスチームガンを向けられてしまう。こうなれば最後の手段だ。
『フルボトル』
『スチーム・アタック!』『フルボトル』
エボルトが想定していた武装の一つにトランスチームガンが有った。それにロックフルボトルをセットしてトリガーを引いた。最大出力で放った反動で俺も吹き飛ばされ、木にぶつかる。
俺は駆け寄ってくる龍斗達をぼやけた視界にとらえながら、気を失った。
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俺が目を覚ましたのはそれから2時間後だった。目を開けると正気に戻った翼が目いっぱいに入ってきた。それから泣き出してしまい皆が駆けつけてくれた。
如何やらエボルトとの戦い、真のS.S事件の深層を話したみたいだ。皆、翼の事を心配したみたいだ。何人かは目が少し充血している。
ロックによる拘束後、すぐさまティーダが変身解除へと追いやったらしい。お陰で外側には目立った傷はなかった。そう、外側には。
「父さん、ごめんなさい.......」
「もう、俺は大丈夫だからさ。」
もう何回繰り返しただろう。自分もあまり考えずに行動してしまったと説明したのだが彼女は止まってくれない。
「翼。それなら一つだけ、頼みがある。」
「....なに?父さん。」
泣き続けたからか膨れ上がった目をこすりながら俺の言葉に返してくれる。
「翔の事を忘れないでくれ。」
「!」
一度だけヘルブロスに変身はしなかったものの暴走した時が有った。その時はわからなかったが、彼女は翔の事を忘れようとしていたのだ。今なら分かる。彼女は自分が最初から俺の娘であって翔という弟がいた事を忘れることで、自分が誰にもぶつけられない復讐心を隠したかったんだ。だからこそ今回、復讐すべき相手が現れた事により理性を失ってしまったのだろう。
どんなに時間がかかってもいい。いつか、彼女が自らの家族を持つその時の為に。
「.....わかってた。私が、最低な事をしていたことなんて。それでも.....」
彼女は泣きながらでも言ってくれた。
「私は、家族と幸せでいたかった!!!!!」
「ああ、ようやく聞けた。翼の本音を。」
今回の戦いに意味があったのかはわからない。だが、
一人の女の子を大人へと成長させた事だけはわかっていた。
翼さんは6歳の頃に施設から誘拐され、弟とティーダと共に10年間を過ごしてきた。
だが、ティーダとは殆ど会う事はなく、大人びているものの精神年齢は実年齢以下であった。
お互いをささえていた弟がいなくなり、それを支えてくれた新たな家族を思う中で、
弟の事を忘れられなかった少女。
今回の合宿でかなりの成長を見せたが、まだまだ家族には甘いらしい。