迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「ぐっ.........」
戦兎は変身が解除され気絶いていたものの生きていた。
「ミカ、エボルトは....?」
『エボルトは、そこに』
既にエボルトは少しずつだが消え始めていた。
「エボルト......」
戦兎は体が動かないが、何とか話し掛ける。
「よう、お目覚めかい。吞気に寝てるもんだから壊してやろうと思ったのによ.....」
少しずつエボルの変身が解除されていき、一斗の姿へと変わっていく。
「俺はお前と戦う中で、一つ答えを出してたんだろうな。」
『貴方は......これからどうするのですか?』
ミカの質問にエボルトは応えた。
「俺はこの世界が好きになった。壊してしまうのが惜しいを感じるくらいに。でも、それ以上に、戦兎。お前との戦いがとにかく楽しかったんだ」
既に足は粒子となって消え始めている。
「俺は、もうすぐ消える。こんな永遠に近い生涯の中で初めて、破壊以上に楽しいものに出会えたんだ......」
「エボルト........」
エボルトは背中を向けて歩いて行く。
「パンドラボックスとボトルはくれてやる。俺にはもう必要ないからな。チャオ♪」
エボルトは振り返り一本のボトルを投げ渡して何時ものポーズを取って消えていく。
「チャオ、エボルト」
瓦礫に残ったのは砕けたコブラエボルボトルとエボルトリガーがセットされたエボルドライバーだった。
戦兎の手には、ライダーエボルボトルが光っていた。
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あれから二週間が経った。戦兎が世界を救ったことは瞬く間に世界中に広がった。誰もが彼に感謝を贈った。
「んん~~~。ミカ、何時からだっけ?」
『正午からです』
いつもと変わらない日常は、殆どの人々に戻ってきた。崩壊したミッドチルダの街は全て修復され、以前と変わらない賑わいをみせている。ただ、一か所だけ違うところがある。
「......これ、撤去してくれないんだね.....」
『貴方は誰もが認めるヒーローですから』
街の真ん中に、石碑が建てられたのだ。今回の騒動、エボルト事件で特に成果を上げた人々の名前が記されているのだが.....
『英雄』『創成王』『桐生戦兎』
一番上にでかでかと記されているのだ。さらに....
「あ!ビルドだ!」「英雄が何でここに?」「皆~!創成王がいるぞ!!!」
「あ、やべっ」
『全く。先生、乗ってください』
顔が報道されたせいで、何処に行ってもバレバレなのだ。戦兎はマシンビルダーに乗りさっさとこの場を去っていく。
『貴方は今日、人生で一番大切な日になろうとしているんですよ?』
「わかってるつもりなんだけどなぁ.....」
どうにもしっくりこないまま住宅街へと入り、一軒の家の前で止まる。
『間もなく正午です。皆様がお待ちですよ』
「一応、俺が主役だもんなぁ」
戦兎はその足を進めていく。玄関にはカギがかかっておらず、すんなりと中に入れた。
「おっ、主役の登場やで!!!」
『わ~~~~!』
「ちょっ、待って!」
戦兎は玄関に入るとすぐに子供達に捕まり流れるように中へと連れていかれる。そして、ソファーの真ん中に座らされた。
「せ~のっ!」
『戦兎さん、誕生日おめでと~~~~!!!!』
クラッカーが鳴らされて、戦兎に紙吹雪が掛けられる。
「皆、ありがとう!!!」
そう、今日は戦兎の誕生日。そして、生涯忘れるわけのない特別な誕生日。
誕生会は順調に進み、見えていた太陽が沈み始めていた。戦兎とはやては、屋根の上に登って隣同士に座っていた。
「はやてちゃん。前言った事、覚えてる?」
「うん」
はやては戦兎がエボルトと戦う前に言ったことを思い出していた。
「一度だけしか言えないけど、聞いてくれる?」
「勿論やよ」
戦兎は立ち上がり、夕陽に向かって叫んだ。
「俺は、八神はやての事を、幸せにすると誓います!!!!!!!!!!」
「!!!!!」
戦兎は髪を掻きながら、頬を紅潮させながら言う。
「俺と、結婚を前提に付き合ってくれる?」
そんな戦兎を見て、ふふっと笑ってはやては言った。
「勿論!」
生涯一度きりの告白は、うまくいった。だが、二人は忘れていた。
「はわわわわわわ......」
「ほほう.....」
「ヒューヒュー!」
「「あ」」
ここは八神家。
「「ああああああああああ!!!!!!!!!!!」」
みんなに聞かれていたのだ。しかも、ビデオカメラまで回っている。
こうして、二人は皆の公認のカップルとなったのだった。
やったね、はやてちゃん!
遂に念願の戦兎をゲットだ!
「これから二人で幸せになります」
いやぁ、ヤンデレのままだったらどうしようかと.....
「浮気したら......わかってるな?」
「は、はい!!!」
『尻に敷かれる夫の図.....』
あ、変わってないや。
ミカさんや、これからも戦兎とはやてちゃんを支えてあげてね。
『勿論です』
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『戻ってきた日常』