迷い込んだのはリリカルな世界 By Build   作:Plusdriver

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2.記憶の中で

バルベルデへ向かう潜水艦の中で、雪音クリスは思い出していた。

 

昔、両親と8年前にNGO活動に参加して訪れた南米バルベルデ共和国の紛争に巻き込また事。そこで両親を救ってくれた彼のことを。あの後彼は姿を消し、両親も亡くなった。自身も捕虜生活を送ったが、それでも探し続けた。あの日、全てを破壊してまで救ってくれた漆黒の鎧を身に纏いし彼を。

 

「クリスちゃん?大丈夫?」

 

「問題ねぇよ、それよりお前は残った宿題の事でも考えてろ」

 

「思い出したくなかったのに~!」

 

少し悶絶している響を尻目に再び考え事を再開する。彼女は今迄集めた自分たちを救ってくれた青年を情報を思い出していた。きっと何か手掛かりが手に入ると少し期待しながら。そんな彼が、異世界から事故であの場に来ていたことを含めて全てを知るのが、後少しまで迫っているとは思わずに。

 

 

「皆、間もなく目的地に到着だ。じゅんびはいいな?」

 

「おう!」

 

そんな事を考えている時間もなく、クリスは弦十郎の言葉に返事を返した。

__________

 

 

「なんだこれ?」

 

 

戦兎は話し合いが終わり、少し新しいシステムを試してみようと作業部屋に戻ってきたのだ。だが、机の上に置かれた見覚えのない注射器に不信感を抱いていた。

 

触る気に慣れないが、全体の様子を伺おうと注射器をひっくり返す。するとそこには、文字が彫られていた。

 

「『LiNKER』?」

 

戦兎は液体を調べてみたが殆どわかることはなかった。

 

「何かの引き金にならないといいけど....」

 

戦兎はLINKERと呼ばれた注射器を備え付けの冷蔵庫に入れて作業を開始した。今回は少しの魔力で聖王の鎧を再現してみようとしているのだ。

 

試験を兼ねて、一斗達に使って貰おう。その為には、安全基準を超えなきゃな。

 

戦兎は黙々と作業に没頭した。エニグマに表示された数字が点滅していることに気付かずに。

 

 

_________

 

 

一斗はナカジマジムにてトレーニング中に自身の母から連絡が入っていることに気が付いた。

 

「なるほど....みんな~」

 

トレーニングを一時的に停止させて皆一斗の方向をむく。

 

「母さんから連絡。行けるって」

 

「やったね、ヴィヴィオ!」

 

「そうだね!」

 

みんなが喜ぶ中、龍斗は何処か違和感を感じ始めていた。それでも、ノーヴェの一撃で現実に戻された。

 

「あぶねぇな、ノーヴェ」

 

「なんだか辛気臭い顔してたからな。さぁ、もう少し付き合ってもらうぞ!」

 

「仕方がねぇ!」

 

その日、ノーヴェは龍斗と手合せをし続けた。互いの体力が無くなって倒れて終わるまでに上っていたはずの日は傾いていた。

 

 

 

 


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