迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
昼食の後、「おっと、心は硝子だぞ」と言って目を回しているスバル達を放っておいて戦兎は改めて旅行の計画を話す。
なるべく自由にというコンセプトを元にした為、かなりの時間が自由に使えるようになっていた。
「念の為に言っておくけど、緊急事態の時以外の魔法の使用は禁止。これから行く世界では、魔法が存在していないってことだけは忘れないでね。」
初等科トリオを含めた少年少女はそれぞれに計画を練ってきたのか、すぐさま話し合いが始まった。
荷物は既にバニングス家に送ってある為かなり荷物は少なくていい。だから着いてすぐのことを話しているのだろうと戦兎は考えた。そこで、あのLINKERと掘られた注射器を一応持ち込む事にした。もしかしたら使えるかも知れないと。
「さぁ、皆。準備はいいね?」
それぞれの返事が返ってきている中、戦兎はエニグマを起動させる。開いたゲートから以前海鳴市に転移した時に訪れた庭の一角が見える。如何やら無事に繋がったようだ。
「先に子供達が行こうか」
既に慣れた動きで通り抜けていく一斗とヴィヴィオ。その後をアインハルト、リオ、コロナの順で入っていく。次々に大人達も入っていき、残るは戦兎だけになった。
「よっと」
何時もと変わらない様にゲートを通り抜ける。海鳴市の空気は以前来た時と変わっておらず、ここが地球の日本だという事を実感させた。
この一年間で二回も世界が滅びかけたなどと誰が信じるだろうか。そう思いながらも、戦兎は乗っている台から足を踏み出す。
「あれ?」
足を踏みだす。たったそれだけの動作なのに、体が言うことを効かない。それよりも自分がどんどん後ろに引っ張られている事に気が付いた。
「うおっ!!!!!」
何も捕まることができないためにどんどん後ろへと吸い込まれていく。それに気が付いた龍斗と一斗は浮かび始めた戦兎の腕を掴む。
「うおおおおおおお!!!!!!!」
「ぐうう!!!!」
みんなも手伝うように引っ張り始める。だが、その吸い込む威力はどんどん上がっていく。
「あ」
それは誰の声だっただろうか。そんな抜けた声と共に、全員の体から力が抜ける。
「「「うああああああああああああああああ!!!!!!」」」
「「きゃああああああああ!!!!!!!!!」」
その結果として戦兎、その腕を引っ張っていた一斗と龍斗、そのすぐ後ろで引っ張っていたヴィヴィオとアインハルトがゲートに吸い込まれていった。
「巧にぃ!」
はやての声は届くことなくゲートは閉じた。それと同時にエニグマが空中から現れて落ちた。その液晶には『393』と数字が並んでいた。
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「ウェイ!」
何処かのオンドゥルを思い出す様な声を上げて落下した戦兎。すぐさま今の状況を確認するべく耳をすませばある歌が聞こえてきた。
「しまった!?」
聞こえてきた声のする方を見れば、見慣れない魔法陣から転移してきたと思われる異形に囲まれていた。
『マックスハザード・オン』