迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「父さん!」
一斗は戦兎の病室に駆け込んだ。
「来たか、一斗」
それを迎え入れた龍斗は戦兎のベットの横の椅子へと案内する。その後龍斗は部屋の外に出た。
「ごめん、俺が倒れたばっかりに....」
「ううん、目が覚めて良かった....」
戦兎が誤るも一斗は気にしていないようだ。それよりも大事なことがあるからと。
「父さん、伝えなきゃいけないに事があるんだ」
「エボルトの事だろ?」
一斗は戦兎の言葉に驚いた。何故今から自分が話そうとしたことを知っているのか?
「気絶している間にパンドラボックスの意識に会った。そいつが言ってたんだ。別世界からエボルトが来たって。」
「.....うん。僕そっくりだった。」
「そうか.....話を戻すぞ。そいつが言うにはエルフナインが持つ『愚者の石』を手に入れてその成分からフルボトルを作ろうと思っている。一斗、エルフナインに聞いておいてくれないか?」
「分かった。聞いておくよ」
会話を続ける中、一斗の違和感を感じた戦兎。その理由を何となくだが予想した。
「エボルトに何か言われたか?」
一斗は俯き話し出す。
「....僕は、エボルトになるかも知れない。あの日、有り得ない組み合せで変身していつもよりも威力が出たんだ....」
戦兎は一斗とマッドローグの戦いを思い出していた。あの後、一斗が言っていた組み合わせで自分と龍斗が試してみたが変身すらできなかったことを。それでも、戦兎自身の答えは変わらない。
「一斗。君が何者であったとしても、俺の息子であることに変わりはないよ」
「!」
目じりに涙を貯めた一斗の顔が上がる。
「君は誰かの為に戦える。エボルトとは違うんだよ」
「僕は....怖いんだ.....僕が僕じゃない誰かになってしまうんじゃないかって....」
一斗の頭に右手を乗せて、撫でながら戦兎は言う。
「一斗は一斗。それは絶対に変わらない。もし君がエボルトになってしまうなら、その時は何度でも俺が手を伸ばす。そして助け出すよ」
「う、うあ、ぁぁぁ.....」
今は泣いてもいいんだよ。
日は傾き、夕日が泣き疲れて眠る少年を照らした。
それをアインハルトは近くで見ていた。
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「エルフナイン、愚者の石って持ってるか?」
「はい、まだありますよ。ですが何に使うんです?」
龍斗は戦兎に頼まれて愚者の石を取りに来ていた。
「こいつを使わなきゃあいつには勝てないって考えたんだよ」
「ですが、それをどうやって....」
「こうするんだよ」
龍斗は渡された粒子の入ったエンプティボトルのキャップを捻る。すると、愚者の石のかけらが粒子となって吸い込まれていった。
「こんなもんかな。ありがとな。」
「異世界ではそんなことができるんですね...」
龍斗が愚者の石のを返して去っていく。エルフナインはあのボトルを錬金術で製作出来ないか考えていた。