迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「僕のことはパンドラでいいよ?」
パンドラボックスと名乗った青年は少しずつ戦兎へ近づいて行く。何故か急に身体が重くなり動き辛くなった戦兎は切り札であるクローズビルド缶を何とか自宅へと転移させた。
「ぐぉ.....」
「僕は君が欲しくて欲しくて堪らなかった。それなのに君の周りには可愛い女の子が沢山集まって。だから、僕は力を欲した。君が僕の方だけを見続ける様に」
戦兎はバスターキャノンを構えるも視界がくらみ狙いを定める事が出来なかった。
「お、お前は....あの時、一斗が破壊したはずだ.....それに、欠片だって....」
青年は一瞬キョトンとすると、その表情を変えながら戦兎のビルドドライバーへと手を伸ばす。
「僕は何時も、ずっと君を見ていたんだよ?」
青年が持っていたのはフルフルフェニックスロボボトルだった。
「ま、さか!?」
戦兎は気づいてしまった。エボルトから渡されたボトルにフェニックスロボの成分が入ったのはあの時、パンドラボックスが飛んできたからだと。そしてその中には、パンドラがいたことを。
「そう♪僕はずっと君の傍にいた。エボルトを倒した時も、君が無茶した時も、ジーニアスボトルを作った時も、勿論、あの缶を作った時もね」
戦兎は何故今自分が上手く動けないのかも理解してしまった。パンドラ自身の成分が入ったボトルを使用して変身している為に、アーマーのコントロールを奪われたのだと。
「ああ....ようやく、ようやくだよ....君を僕のものにできるんだから....」
戦兎は薄くなっていく意識の中で、自分と同じ顔をした青年の、狂った笑顔を見たのだった。
「...意識が飛んだみたいだね」
パンドラは気を失った戦兎をお姫様抱っこでベッドへと運んでいく。
「あと少しで完全な肉体を得られるからね....その時は....」
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「父さん!」
一斗が作業部屋の扉を開けるとそこに戦兎の姿はなかった。
『如何やら遅かったみたいだな』
エボルトの声にも返事を返さずに残されているものがないかを探る。そして、作業台の上に画面が表示されていないビルドフォンを見つけた。
「ミカさん!ミカさん!」
一斗が何度も話しかけるも返事が返ってくることはなかった。
『諦めろ。それより早くこの事を夜天の最後の主に伝えなくていいのか?』
「.....っ」
一斗はズボンのポケットにビルドフォンを入れて直ぐに階段を降りた。すぐさま家の固定電話を使い八神家へ電話を掛ける。
『はい、八神ですが』
「はやてさん!父さんが!父さんが!」
これから始まるのは、世にも恐ろしい修羅場である。
恋する乙女のぶつかり合いは、世界を巻き込む程に大きくなる。
片方は、戦兎と共にいる為に。片方は、戦兎を我が物にする為に。
次回、『ヒロインは誰だ!?』
戦兎の胃は、遂に限界を迎える。
※一部例外が含まれています。
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当初は、エボルトと共に世界を滅ぼした平行世界の戦兎が登場するはずだったのに、
気付いたら手元で元気に戦兎を追い回すヤベーイ奴が。
作者にはどうしようもなく、それを
結果、戦兎の平穏は遠ざかったのだった。