迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「がああああアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
一斗はその一撃を受け止めた。ブラックホールが現れるもそこに氷を投げ込むことで消滅させる。
「耐え...切った....」
だが、安心は出来なかった。
「がっ!? な、なんだ!?」
先程までと異なり身体から発生している粒子の量が倍になっていたのだ。
「ジーニアスの能力にネビュラガスの中和があるんだ。それを僕なりにアレンジして、ハザードレベルを上げ続けるものに変えたんだよ。つまりこのままだと君は」
パンドラはつらつらと話す。消えかけの一斗を見ながら。
「消滅するよ」
『おい!どうする!?このままだと何も助けられずに消滅することになっちまうぞ!?』
エボルトの言葉さえ、今の一斗には届いていなかった。既に体力は限界、鎧の一部は粒子となって消えてしまっている。
「諦め.....られるか......」
「まだ闘うんだ。君じゃ僕には勝てないのにね」
息が上がってしまい、動けないグリスにパンドラは蹴りを食らわせる。一斗は壁に当たって、変身が解除されてしまう。
「これが僕と戦兎の力なんだ.....君、本当にウザかったからなぁ。これなら君の大切な人から殺すべきかな?」
一斗の指がピクリと動く。それは、冷静な、静かな怒りの現れだった。
「誰を、殺す..って?」
「ん?聞こえなかったの?君の大切な人だよ。具体的には、アインハルト・ストラトスかな?」
パンドラは、一斗の逆鱗に触れた。
『ボトルキーン!』
一斗は壁に手を当てながらも立ち上がる。
「絶対に、させない。ハルも、ヴィヴィオ達も、母さんたちも....お前に絶対に殺させない!」
『これでお前の消滅は確定した。悔いのないように闘ってこい!』
静かに辺りを冷気が凍らせて行く。
「確か、心火だったかな....父さんが繋いでくれたこの言葉を.....」
展開されたブリザードライドビルダーに静かに聳え立っている。
「これが
『激凍心火!』『グリスブリザード!』『ガキガキガキガキ!』『ガキ―ン!』
ハンドルを回していく。
『シングルアイス!』
『オールアイス!』
それを見ていたパンドラもハンドルを回す。
『オーバーキル!』
『『READY GO!』』
肩を変形させて、美空色の液体を噴き出して加速する。パンドラは、全てのボトルから成分が消滅させて、足に全て収束させる。
『グレイシャル・フィニッシュ!』
『ブラックホール・ブレイク!』『ジーニアス・フィニッシュ!』
「「おらあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」」
勢いのままにキックを放つグリス。そしてそれをボレーキックで打ち返そうとするパンドラ。ぶつかり合った一撃は、辺りを凍らせ、粒子へと変化させていく。
だが、威力はパンドラの方が有った。
「君じゃ僕らの一撃には届かない!」
確かに届いていなかった。でも、一斗は諦めなかった。
「負けてたまるかよぉぉぉ!!!!!!!」
複眼が赤く光輝き、威力が上がっていく。
「! それが、君の
パンドラにはグリスが分身して見えたのだ。
今、一斗は4人に増えている。
グリス、ロック、フォートレス、ブリザード
一斗が今迄変身してきた姿が全てキックを放っていた。
それでも、パンドラの威力にはまだ及ばない。
『一斗、私も、私たちも力を貸すから!』
「! 母さん....おりゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
一斗の意識の中からはやての声が聞こえてきた。一斗は全てを掛けた一撃を放つ。
「そんな.....僕が、僕たちが押されているなんて....認めない、認められるかぁ!!!!!!!!」
パンドラの足は少しずつ凍り付いていく。
「『いっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』」
パンドラの全身は凍り付き、それをグリスは砕いた。
「あ、ああ....あははは!!!君たちは、失敗した。僕ごと戦兎を消すことにしたなんてね。滑稽だよぉ!結局、君たちは助けられなかったんだ!戦兎を見捨てたんだ!!!」
変身が解除され倒れたパンドラは、全身から黒い靄と粒子を出しながら言い放つ。一斗はそれをただ聞いていることしか出来なかった。
『一斗、まだ希望はある。これを使って!』
はやての声が聞こえて一斗ははやての方を見る。すると、白いパネルが飛んできた。
『残りのボトルは一斗の持っている2本!セットしたらあいつに叩き付けるんや!』
「うん!」
一斗はすぐさまボトルをセットし、パネルを完成させる。
「なんだよ、それ.....なんなんだよそのパネルはぁぁぁ!!!!!!」
「食らえええええええぇぇぇ!!!!!!!!!!」
ボトルの揃ったパネルは、パンドラに叩き付けられた。それと同時に、パンドラの身体が光り輝く。
「! い、嫌だ!またあの狭い、戦兎に会えない世界に行くなんて嫌だぁ!!助けて!助けてぇ!!!」
一斗へ助けを求めるが、一斗はナックルを構えてボトルをセットし直す。
『ボトルキーン!』
「これで終わりだ、パンドラ。お前はもう二度と、戻ってこれない」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ______________________________」
パンドラの顔は、絶望に染まっていた。
光が強くなってから弱まると同時に、パンドラボックスと戦兎が横たわっているのが確認できた。
一斗はナックルのボタンを押し、真下に構える。
『グレイシャル・ナックル!』『カチカチカチカチカッチ―ン!』
「さよなら、愛に狂った
パンドラボックスは、この世界から完全に消滅した。
「あ.....」
『限界だな...』
限界を超えた変身を2回もしたのだ。既に一斗の身体は限界を超えてしまっている。自然とブリザードのアーマーは粒子となって消えた。
「一斗!」「一斗さんっ!」
一斗は視界が霞んでいく中で、地面に倒れそうになる。そこに、はやてとリインが来てそれを支えた。
「一斗!一斗!」
「一斗さんっ!一斗さんっ!」
まだ動けることに気が付いた一斗は、ブリザードボトルを渡すために、震える手でボトルを持った。
「かぁ、さん....これ、を....ハルに......」
「っ、それは自分で渡さなあかんやろ!」
「むりだよ.....僕の、身体は....もう、消えて....」
「お願いだから生きてよ!折角、また皆がそろったのに、こんなのって....」
リインとはやてからこぼれた涙は、一斗の顔を伝った。
「.....今まで、ありがとう......」
その笑顔を最後に、一斗は世界から消滅した。
倉庫には、ボトルが落下した音だけが響き続けた。
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「?」
「アインハルトさん、どうかしましたか?」
「いえ、一斗さんの身に何かあった様な気がしまして....」
ウィンターカップの会場で、アインハルトは何かを感じ取っていた。
消滅した一斗
「畜生がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
どんなに嘆いても彼は戻ってこない
「一斗さん、貴方は....」
次回、『心火』
ここに、彼の物語は完結する。