迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
逃げ切れるのか
皆様、いかがお過ごしだろうか?
既に新年を迎え、少しずつ暖かくなってくる今日この頃俺と一斗は絶賛逃走中だった。
「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」」
「待てぇぇぇぇ!!!!!!」
「痛くありませんからぁぁぁ!!!!」
後ろを振り向く余裕などない。未だこの展開についてこれていない者がいると思うので回想することにしよう。あれは今から20分程前のことである。それは唐突に始まった。
「おはようございます」
「只今~。あ、母さん、手伝うよ」
「ほな、これを頼むわ」
何時もの変わらない朝。この時はそう思っていたのだ。
「....おはようございます....」
「うぉ、どうしたミカ? 何かあったか?」
デバイスであるミカが疲れ切った顔で階段を下りてきたのだ。
「ええ、パンドラがどの様な見た目をしていたのかが気になりまして、夜天の書をお借りしてました。」
どうやらミカはパンドラの容姿が気になっているようだ。それで徹夜してまでデータをあさっていたのだろう。
「お、終わったんか?」
「はい。何とか...」
そう言ってミカは空中に仮想スクリーンを展開する。するとそこには俺と俺が____
「フン!」
「あ、何するんやいいところだったのに...」
俺は無意識のうちに仮想スクリーンを破壊していた。だが、これは間違いではない。
「朝からなんてものを見ようとしているんだ...」
「勿体ないな~、ん?」
はやてちゃんが何かに気が付いたのか、俺と一斗の顔を交互に見る。そしてアインハルトの耳元で何かをささやいている。
「...いいですね。やりましょう」
「よっしゃ、それじゃあまた後でな」
「はい。一斗さん、一旦マンションに戻ります。直ぐに戻りますから」
「う、うん」
何だか様子が可笑しい。アインハルトはリビングの窓を開けてベランダから飛んで帰ってしまう。彼女の身体能力は一時的に通常時よりも跳ね上がる事がある。勿論一切魔法を使用していない。その状態になるためには条件を満たす必要があり、その条件が『一斗』が関わる事である。あれだけの速さで帰っていったと言うことは....
「あ、ああ~。ごめん母さん、公園にタオル忘れてきちゃった...今から取ってくるね!」
一斗が逃げ出した。きっと嫌な予感でも感じ取ったのだろう。俺には関係なさそうだ。
直ぐにはやてちゃんに回り込まれてしまった。
「どこへ行くんや~?さっきタオルは洗濯機の中に入れたで~?」
俺はリビングから廊下を除くようにして玄関を見る。一体何を吹き込んだのだろうか?
「今から巧にぃと一斗には女装してもらうんやから、逃げては困るで....」
前言撤回。どうやら標的に俺も含まれているらしい。ミカがリビングの机の椅子で寝ていることを確認するとすぐさま俺と一斗の靴をベランダへと転移させる。
「一斗、こっちだ!」
「うん!」
「あ、まt____」
俺達は靴をはいてすぐにミッドチルダの町中に転移した。
___________
で、この騒動が収まるまで喫茶店でのんびりすることになったのだが、問題が発生した。
「ここのコーヒーをこんなに早く飲むことになるとは....」
「あははは......早く終わってくれないかな....」
「........このまま待つか、
カップを持ち、窓から外を見る為に視線を移動させながらコーヒーを含んだ。だが俺の言葉がその後に続くことはなかった。
「ブハァ!?」
「と、父さん!?」
俺はコーヒーを噴出したのだ。仕方なかったのだ。服は汚れなかったからまだよしとしよう。
「あ、ああ....」
「あ?」
一斗も俺と同じ方向を向いた。そして固まった。
『ミツケマシタヨ、カズトサン』
アインハルトが喫茶店の窓にへばりついていたのだから。
「「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
俺は会計をすぐ済ませると、アインハルトが居る出入り口の反対側から逃げ出した。
アインハルトから逃げるのが少しずつ辛くなり始めていたころ、そこにはやてちゃんが合流し今に至る訳なのだ。
俺達はどうにか逃げ続けられている。だが、そろそろ限界が近い。俺の足も安定性が欠けている。何時自分の足にもう片方の足を欠けて転んでもおかしくない。
それでも
「それでも、
逃げる以外の選択肢は、存在しなかった。
どうなってしまうのか!?
まぁ、お察しの通りでしょうね。
それではまた。