迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「何故だ!お前はあの日、戦兎さんに倒されたはずだろう!?」
ティーダが叫ぶのも無理はない。最悪の存在がまた自分の目の前にいるのだから。
「確かに俺は戦兎に倒された。だがな、保険があったんだよ。時間がかかったものの復活できた」
掴んでいた魔術師の頭を勢い良く投げ捨てる。死んではいないが、その傷の量からどれだけひどい目にあったのかが想像できてしまう。
「ここで、お前をもう一度倒す!」
『クラックアップ・フィニッシュ!』
ベルトのレンチを押し倒し、クラックボトルを割る。両足に集束されたエネルギーでエボルトに蹴りを食らわせるがいとも簡単に受け止められ、そのまま吹き飛ばされてしまう。ティーダは自身の体が次から次へと本棚を貫通していった。
「あ...」
誰かに受け止められた後、そのまま気を失った。
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「さて、如何やらここには誰もいないようですね...」
グランディアは堂々と不法侵入をしていた。万が一に備えて持ってきた武装を使わなくてもいいのは彼にとっても徳だった。
「...ここですね」
桐生家の中を徘徊し、ボトルが保管された金庫へと辿り着く。しかし金庫は複数の魔法によって守られていた。
「まぁこんな物、あの人の作るものよりかは簡単に突破できますね」
慣れた手つきでATFを張り、早急魔法陣を解体する。無残にも空いてしまった金庫から必要なボトル60本とパネル6枚を回収し、グランディアは時限爆弾を仕掛けた。この家だけを爆発させるほど
「そこまでにしてもらいましょうか。それは大切なものなんですから」
グランディアはその声が聞こえると同時に、その場から飛ぶことでエネルギー弾を回避する。
「桐生翼ですか...まさかこんなにも早く戻ってくるとは...」
「そのパネルとボトルを金庫に戻してください。そうすれば、攻撃をするつもりはありません」
まだ使わないつもりだったのですがとグランディアはパネルから2本のボトルを取り外した。
「貴方は大切な事を忘れていませんか?」
「!?」
翼は気付いてしまった。グランディアの腰に装着されたエボルドライバーに。先程金庫にあったものを装着していたのだ。それは彼女のトラウマを呼び起こすには大き過ぎるものだった。
「あ、ああ...」
『マスター!』
構えていたネビュラスチームガンが右手の震えで落ち、無口なデバイスであるネビュラが大きな声を上げるほどだった。その様子を見ながら、グランディアはボトルを振りベルトにセットした。
『コウモリ』『発動機』『エボルマッチ!』
ハンドルを回せば繋がったパイプが四方八方に伸びていく。開発者である戦兎ですら使用制限がかかるほどの物だからこそ、グランディアに苦痛を与えた。
「ぐっ...変身!」
『バットエンジン!』『フッハハハハハハハハハハ!』
だが、それを乗り越えてしまえば勝ちなのだ。パイプはグランディアを包み込みアーマーを形成した。
「仮面ライダー、マッドローグ...といったところでしょうか」
「じゅ、潤動!」
『リモートコントロール・ギア!』
震えが収まらない翼はどうにかネビュラを拾い上げ、ギアをセットしトリガーを引いた。姿を変えることはできたが、彼女は上手く戦うことは出来そうになかった。
「う、うわあああああああ!!!!」
まるで子供の喧嘩のようなそれは、戦い慣れていないグランディアが簡単に受け止められるほどに単調なものだった。
「こんなものですか、貴方の力は」
「黙れぇぇ!!!!!」
リモコンブロスの拳は受け止められ、ネビュラスチームガンを落としてしまう。
「貴方に要はありません」
グランディアは腹に重い一撃を放つと、そのまま翼を吹き飛ばした。元に戻ってしまった彼女は気を失ってしまう。グランディアはネビュラを拾い上げてその銃口を翼へと向けた。
「君は賢いはずだ。さぁ、そのギアを私に渡しなさい」
無言のままネビュラはギアリモコンを取り外した。それを回収したグランディアは用済みになったデバイスを彼女の元へ投げ捨てる。
「二つのギアの回収も出来た...サッサとこの場を離れなければ!」
グランディアは背中から大きなコウモリの羽を広げ、家の窓を破壊しながら無限書庫へ向かった。しばらくすれば後ろから大きな音が聞こえたが、彼が気にすることはなかった。
建てられてしまった破滅の塔!
エボルトは本来の力を取り戻すべく更に世界を破壊し始める。
囚われた戦兎を救うため__
龍斗、最後の変身!
「ヒーローは、俺だ!!!」
次回、『離れ離れのベストマッチ』