迷い込んだのはリリカルな世界 By Build 作:Plusdriver
「ほぉ、新たな力を手に入れていたか」
スカリエッティは再び龍斗に興味を持った。クローズは右手にブリザードナックル、左手にマグマナックルを武装し構える。
「ドラアアアアアアアア!!!!!!!」
クローズは走り出しガムシャラに、そして正確にナックルを振るう。交わしていたブラッドは一度だけナックルを受け止めた。
「っ、これは!?」
「先ずは右!!」
ブラッドは右手で受け止めたのだ。ブリザードナックルの一撃を。龍斗の覚悟が込められた拳はただ受け止められるなんてことはせず、確実にブラッドを追い詰めようとしているのだ。ナックルを受け止めたが手が凍り付いて行く中でナックルを離してしまい、ブラッドはクローズの放った拳を受け止めようと左腕を動かす。
「あ、あつい!?」
「左!!!」
マグマナックルは既に高温となっていた。スーツの上からでも感じるその熱量は、本体であるスカリエッティの体にもしっかりとダメージを与えていた。
そして龍斗は直ぐに右手でブリザードナックルを地面に叩きつける。
「どりゃああああああああああああ!!!!!」
地面を一気に凍らせてクローズを中心とした氷の柱を無数に創り出す。それはしっかりとブラッドの両脚を凍らせる。
「そこだぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
『ボトルキーン!』『ボトルバーン!』
動けなくなったブラッドへとナックルどうしをぶつけ合いスイッチを押し込む。
『ボルケニック・ナックル!』『グレイシャル・ナックル!』
「オラオラオラオラ!!!どおした!そんなものかぁ!!!!!!!!!」
一撃を叩き込むのではなく、繰り返し両手のナックルを叩き込む。凍り、砕かれ、燃やし、壊された。
「調子に、乗るなああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ちぃ!!!!!」
ブラッドから大量の黒いオーラが流れ出す。それは今まで攻撃を繰り返していたクローズを一旦引かせる程に。
「万丈龍斗ォ...
「っ、そっちのほうが倒し概があるってもんだ!!!」
背中の羽からは少しずつ、粒子が放出され始めていた。
_________
戦兎は病院の壁を叩く。
「龍斗のヤツ、使うなって言ったのに...」
体の震えは、自分へ対する怒りが原因だった。何故もっとしっかりと忠告しなかったのか、と。
「龍斗のあの姿って...」
誰かの疑問に答えようと戦兎は口を開こうとするがそれをミカに止められた。
「マスター、ここは私が。皆様、今から話すことは真実です」
フェイトは映像の龍斗の身体から粒子が少しずつ放出されている事に気が付いた。
「あの、粒子は何?」
「ブリザードナックルを使用し変身すればハザードレベルが急上昇し、消滅の恐れがあります。そして龍斗様は、ハザードレベルを急上昇させた後に使用しています。つまり...」
「龍斗は、消滅する...」
フェイトは直ぐにバルディッシュをセットアップし戦兎の首へとザンバーを突き付けた。
「...龍斗は知っていたの?」
「ああ」
「消滅を止める方法は」
「ない」
無言のままバルディッシュを落とすフェイト。手は震え、涙を流している。
「どうして?龍斗が何をしたっていうの?こんなの、認められる訳がないよ...」
「フェイトちゃん...」
戦兎は静かにその場に座り込んだ。
「...巧君、座標は出たよ。あと少しで転移出来る」
「...分かりました」
戦兎は残されたドラゴンボトルを握りしめた。
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「このNEWスカリエッティの相手には、相応しい人間だよ。君は」
「はっ、お前に認められてもうれしかねぇよお!!!!!!!!!」
龍斗は身体が上手く動かなくなってきている事に気づいていた。それでも戦うのを辞めるつもりはない。
例え自身が消滅したとしても、ここであいつを倒すために。
ナックルを上に投げ、ベルトのハンドルを回す。
『シングル・アイス!』
『READY GO!』
『グレイシャル・アタック!!!』
落ちてきたナックルを受けとめ、巨大化したナックルでブラッドを殴りつける。
そして身体を凍らせた。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
地面を突き破ってマグマライズドラゴンが召喚される。拘束したブラッドが逃げ出さないように複数のマグマライズドラゴンがブラッドの体に巻き付いて拘束する。
「これで、終わりだ」
追加で召喚されたアイスライズドラゴンがマグマライズドラゴンと共に拘束しながら上昇させていく。
そして龍斗はブリザードナックルをベルトに戻しハンドルを回した。
___________
「繋がるよ!皆準備を!!」
葛城の声で戦意を消失させていた面々も立ち上がり始める。
「3」
フェイトはバルディッシュをしっかりと握りしめた。
「2」
戦兎はゲートを素早く通り龍斗の元へ向かう事を決めた。
「1」
そしてゲートが開くと同時にフェイトがその中へと進んでいった。
大切な人の元へ、もっと、もっと早く!
止まることなく進んでいく。目の前の障害物はバラバラに切り刻まれていく。だが____
『READY GO!』
『グレイシャル・フィニッシュ!!!!』
「おりゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
放たれたキックはドラゴン達によって拘束されたブラッドへ叩き込まれた。
「りゅうとぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
そして、その場にはクローズブリザードのみが立っていた。
「う、あ____」
バランスを崩した龍斗は変身が解除され、倒れ始める。
「龍斗!」
すぐさまフェイトがバルディッシュを落としながらも龍斗を受け止めた。
「フェイト、か...」
「聞いたよ。龍斗が思い出したことも、どうしてこんな無茶をしたのかも」
フェイトは手元を見れなかった。受け止めているはずで決して見えないはずの自分の手が見え始めていたのだ。
それは、龍斗が消滅しかけている事を物語っていた。
「...悪かったな、何も話してやれなくて...」
「ううん、いいんだよ。これで、よかったんだよね」
龍斗は震えているフェイトにボトルの刺さったマグマナックルを渡そうとした。
「こいつを、受け取ってくれ...」
「うん、大切に、するよ...」
受け取ったナックルに、涙が落ちた。
「先輩!」
「龍斗!!」
遅れてやって来た戦兎達はその様子を見て足を停めてしまう。
「一斗、おまえにも、これを...」
「先輩、う、うううう...」
「泣いてるんじゃ、ねぇよ...強くなったな」
「戦兎...わりぃ、忠告してくれたのに、な」
「必ず、消滅から___」
「それ以上言うんじゃねぇ」
龍斗は戦兎が言おうとしている言葉を理解していた。それでも、自身が満足しているのを伝えたかったのだ。
「ありがとな...」
そして、龍斗は粒子となって消えた。
崩壊した世界に、声が響いた。
「やはり、こんなものだったか」
戦兎は後ろから聞こえてきたその声の主を知っていた。だからこそ振り向き、叫んだ。
「スカリエッティ!!!!!!!!!」
さよなら、仮面ライダークローズ
「君たちが力を合わせた所で、
仮面ライダーは、人の為に戦う
「僕に出来ることをやるだけだ!」
そして_____
次回、『ローグと呼ばれた男』