Fate/ School magics ~蒼銀の騎士~   作:バルボロッサ

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11話

 

 ――――――講堂前。

 

「そぉ~れっ!」

 

 気の抜けたような掛け声とともに光弾が3つ、瞬時に手元に現れて渦を巻き、加速をつけて放たれる。

 その光弾が狙い撃つは先程別の場所で明日香が仕留めたのとはよく似たデーモンのような巨躯のホムンクルス。それは離れたところで大暴れしようとして鎮圧されたモノと同種のものであった。

 かのサーヴァントの伝承に由来する“三体の悪魔”の一体。

 

「う~ん。やっぱり効きが悪いなぁ」

 

 演算から放出までの速度こそ魔法に比べて劣っている今の圭の魔術だが、CADを操作していないことを差し引けばむしろ戦闘時においては魔法よりも出が早いかもしれない。

 その威力は見た目に不相応に高威力ではあるのだが、残念ながらこの相手には効果が薄かった。

 巨体を誇り、岩の巨人のようなホムンクルスに対してはまともに着弾してもさしたる脅威にはなっていない。

 だがそれでも、圭の魔術はまだダメージを与えているという点で攻撃していると言えた。

 

「実際、アレに対して有効なのはお前の魔術だけだ。なんとかならないのか!?」

 

 摩利は魔法を繰り出しながら、かなり焦っていた。

 先程から服部や風紀委員のメンバーをはじめ生徒たちが懸命に魔法を繰り出しているのだが、ほとんどの魔法は着弾する前に弾けて消えてしまっており、摩利や真由美、そして克人の魔法までもがほとんど効果を発揮していない。

 2年生ではトップクラスの魔法力と模擬戦の勝率を誇る副会長の服部。彼の放つ雷蛇の魔法はダメージを与えるどころか、しびれすらも感じておらず。

 三巨頭の一角でもある摩利は、講堂に最初に突入してきたガスマスクをしたテロリストのように、たとえ相手が防護対策を施していたとしても人間相手であれば気流操作によって意識混沌においやることができる。だが、あの巨体の敵相手には、そもそもあれが呼吸をしているのかも定かではなく、剣術を応用した攻撃は唸る豪腕を前に阻まれている。

 

 そしてもっとも生徒たちの意気をくじいたのは、克人が繰り出す多重の防壁魔法――魔法師や化学兵器、物理現象相手であれば鉄壁を誇ると名高き十文字家の防御魔法がデーモンの腕の一振りで容易く砕かれている光景だ。

 三巨頭が揃っていれば、いや、十文字克人一人がいるだけで、重武装した軍隊であっても近寄らせないとも思っていただけに、魔法師たちの受けている衝撃と困惑、そして恐怖は大きい。

 

「いや~、僕はほら、戦闘系ってガラじゃないじゃないですか。戦いながら魔術とか苦手なんですよ。呪文で舌噛むと危ないですし」

「っ! そんなこと、言ってる場合じゃないでしょう!」

 

 真由美が魔法を発動し、空気中の二酸化炭素を集めて作り出したドライアイスの雹を弾丸のように高速で打ち出していた。

 魔弾の射手。七草真由美が得意とする銃座そのものを作り出して多角的に銃弾を放って撃ち抜く魔法であり、彼女のマルチ・スコープと合わせれば複数の相手の視覚をつくことすらも可能な、実戦向きの魔法だ。

 だが、必殺のはずの真由美の魔法はデーモンの体表にかろうじて着弾するといった程度にしか効果がなく、あれに対してさしたる脅威とはなっていなかった。せいぜいがちょっと鬱陶しいといった程度だろう。

 たしかに大破壊力が売りの魔法ではないが、それでも人や魔法師相手では小隊規模、あるいは中隊規模ですら殲滅可能なだけの力を有しているはずなのに。

 

「これでも色々、よっと、準備はしたんですけどね」

 

 魔法師の生徒たちほど恐怖を感じてはおらず、相変わらずのほほんとした風を装ってはいるが魔術師もまた多少焦りはしていた。

 会話しながらではあるが、杖を地面に打ち付け、そこを起点に魔術を発動。地面に撒かれた種が急激に成長して蔓を伸ばし、巨体を捕え拘束する。

 

「流石にあのサイズは予想外。う~ん、呪文唱えるより殴った方が早いんですけど、いくら強化しても僕の細腕強化した程度じゃ、あれ。受け止めるだけで粉々ですよね」

 

 校内の巡回にかこつけて、この事態を予測して色々と下準備はしていた。

 だが、圭の予測ではあれほどの巨体に対する備えはしておらず、急成長させた花の蔓程度では巨腕が力任せに振り回されるだけで、ブチブチと引き千切られてしまっている。

 だがそれでも、デーモン相手に効果を発揮しているというだけ、魔法よりも魔術が有効ではあった。三巨頭や服部など一部の魔法師の放つ以外の魔法はそもそも効果を発揮する前にかき消されたように演算エラーを起こしていた。

 だからといって圭の魔術でアレを倒せるかというと別問題ではあるが……

 

「ならどうする!?」

「どうするもこうするも、実際問題、足止めと時間稼ぎくらいしかできることはないですよ。摩利先輩」

 

 実のところ、圭の予測では相手をするのはせいぜい骨人形のホムンクルス程度だと考えていた。

 彼の予測演算は、魔眼による未来視ではない。ゆえに起きた事象から高度に未来を推測するといったものでしかなく、実のところそれも完璧ではない。雫やほのかが襲われた時の状況から推測した対策を考えていた程度であり、アレ以上を予想はしても流石に今目の前にいるレベルのホムンクルスは予想外にすぎた。

 あの時の骨人形程度のサイズ・強度のホムンクルスであれば先程の植物による拘束で十分だし、手持ちの魔弾でも十分に効果を発揮しただろう。

 

「ぬぅ、っ!」

「時間稼ぎって、いつまで!?」

 

 真由美が叫ぶようにして尋ねた。

 克人が繰り出した攻撃性の高速多重移動防壁――ファランクスまでもが叩きつける端から砕かれてしまうのを見て、いよいよ危機感を強めたのだろう。

 ファランクスの真髄は一枚一枚の強度、というよりも多重多種類の防壁を高速かつ連続で繰り出すことができることにある。絶対不壊というものではないが、それでも攻撃に転じてなお効果がないとなれば歯噛みもするだろう。

 あの魔法は殺傷性ランクこそつけられてはいないが、本来直立戦車すらもスクラップにするだけの物理攻撃力があるはずなのだ。

 

「ぬがぁああ! 鬱陶しい! 潰してやる!」

「くっ!」

 

 ただ、それでも効果があったとすれば、次から次に眼前に迫ってくるファランクスに鬱陶しさを覚えさせたことだろう。足止め以上の効果がなくとも、流石に次から次に眼前に現れる薄壁は目障りで、この壁だけは叩き壊すのに僅かとはいえ時間が取られるのだから。

 足止めの効力ある攻撃を放ってくるのは圭も同じだが、間断なく押し寄せてくる分、目障りさは克人の方が上だったのだろう。

 それの主であるサーヴァントほど思考が複雑でなく、単純な思考能力しか与えられていないのも理由の一つだろう。

 デーモンは一番目障りなことをしてくる魔法師に、克人に狙いを定めて突進を開始した。

 秒間十以上、四系統八種の克人の魔法が物理障壁を含めて次々に繰り出され、デーモンへと激突して砕かれていく。

 

「くっ!」

「十文字くん!」「十文字、逃げろっ!」

 

 狙われた克人の危機に真由美と摩利が悲鳴まじりに叫ぶ。

 もはや逃げられる距離ではない。それだけあのデーモンの巨体は俊敏で、そして破壊的なのだ。

 振り上げた豪腕が迫撃砲のように克人へと墜ちる。

 

「それは勿論。―――――倒せる人が来るまでですよ」

 

 三巨頭の一角にして鎮圧の要である克人。その彼が圧殺されるのを目の前にして、なお落ち着きを失っていない圭の声。

 まさに克人の作り出す防壁を砕いて彼の巌のような体を潰さんとする、その瞬間。克人に向かって振り下ろされた腕が消えた。

 

「!」「!」

「十文字……なんだっ!」

 

 驚愕は襲われた克人のものであり、突然自身の腕が消えたデーモンのものでもあった。消えた腕は宙を舞い、そして巨腕の見た目を裏切らない衝撃音をたてて落下した。

 

 

「遅いよ、明日香。……武装はどうしたんだい?」

 

 弾丸の如く高速で飛来してきた騎士が、すれ違い様に腕を切り飛ばし、地面を削りながら着地した。その“倒せる”者に、魔術師が気軽に声をかけた。

 

「必要ない。――――すぐに終わらせる」

 

 不可視の武器を携える騎士。

 鮮やかな金紗の髪に澄んだ碧眼。魔法科高校の制服に身を包みながらも、異形を斬り伏せる剣士たる者の到着だ。

 

 

 

     ✡  ✡  ✡

 

 

 それは瞬く間の出来事であった。

 

 三巨頭があれほどに苦戦し、恐怖をばらまいたデーモン、いや、ホムンクルスがほとんど何もできずに斬り伏せられた。

 飛来したのと同時に片腕を斬り飛ばし、嵐のような豪腕を相手に怯まず接近し、直撃すれば人など一撃で挽肉が如くなるだろう殴打を不可視の武器で弾き返し、返す腕で斬り払う。

 そして右下段からの一閃。それによって巨体は両断されて倒された。

 

「あれが……」

 

 真由美は妹から話には聞いていた。

 妹を救い出した王子様。

 捜索隊であった七草家の魔法師たちをあしらった船長姿の男。魔法さえ通じなかった恐るべき誘拐犯を圧倒し、斬り伏せた幻想のごとき騎士。

 だがその闘いを見るのは初めてで、まだ幼かった妹の幻想が盛り込まれたものだと思っていた。

 だがアレは違う。

 あれなるは貴い幻想が具現化したかのような存在。

 

 

 

「あれが魔術師、か……」

 

 摩利は真由美から話の触りを聞いてはいた。

 腕っ節が強く、魔法の基盤となった魔術を継承する魔術師(メイガス)たち。

 組織の協力なしに凶悪な誘拐犯を相手にするほどに正義感のあるやつらだと。

 風紀委員に入ったのは、真由美が言っていた、期待していたやつとは違って少し落胆し、入った魔術師の方が優秀だというからさらに落胆し、その彼ですら先程までデーモン相手に時間稼ぎしかできなかった。

 けれども遅れてやってきたそいつは、瞬く間にデーモンを斬り伏せた。

 

 その姿は以前見たときとは違っていた。

 くすんでいた金髪は鮮やかに輝くようで、離れて見ても黒かった瞳は宝玉のような碧眼に。

 

 その姿は、まさにおとぎ話の騎士のようであった。

 

 

 

 

 二体目のホムンクルスを討伐した明日香は、不可視の武器を持ったまま倒れ伏したホムンクルスを見下ろした。

 先程の一体目は処理を放置することもできなかったために核を砕いて消滅させたが、今度の一体は戦闘能力を奪うに留めた。

 無論、巨躯のホムンクルスは手足を切り飛ばしたところで、痛みを感じるわけでもなく、脅威的な兵器には違いないが、今この場には明日香もいるし圭もいる。

 対応が容易ならば少しでも情報を得るためにすぐには消滅させないのも一つの方法だろう。

 

「ケイ!」

「ほいほい、っと、人使いが荒いなぁ、ほんとに」

 

 もっとも、他の魔術師やサーヴァントが創り出したホムンクルスを介してその出処を探るような探知系の術式を明日香が使うことはできないので、そこは先程まで足止めに奮闘していた魔術師――藤丸圭の出番ではある。

 

「何をするつもりだ?」

 

 機能停止したと思しきデーモン(ホムンクルス)にやれやれとばかりに不用意そうに近づく圭に、克人が問いかけた。

 彼らが油断していることはないだろうが、あまりにも軽やかに近づく圭の足取りは、克人たちにとっての苦戦の後では不用心なものに見えた。

 

「魔術の逆探知ですよ。魔法師やら武装テロリストの人たちの方はともかく、これだけのホムンクルスとなれば、間違いなく術者の魔術の痕跡があるでしょうからね。居場所を探る重要な手がかりです」

「そんなことができるのか?」

 

 ここに達也がいれば、彼でもそれはできただろう。

 

「これだけのものだと呪詛返しはちょっと難しいですけど、機能停止したこいつ相手なら、発信元を探るくらいできるはずですから」

 

 圭の伸ばした手がホムンクルスの胴体に触れ、魔術を起動した。

 それはサイオンに対する感受性のある魔法師が見ても、何をしているかまでは分からなかっただろう。仮に魔法式を読み解くことの得意な魔法師がいたとしても、そもそも魔法式自体を構築するCADもないのだから。

 だが圭の起動させた魔術はホムンクルスへと潜りこみ、その来歴をつまびらかにしようとしていた。

 

「それでこれはいったい何だったの?」

 

 何かをしているというのは傍で見ていても分かるが、何をしているかまでは分からなかった真由美が、抑えきれない疑問を責務として尋ねた。

 彼女たちが懸命に足止めしたことで、生徒や校舎に対する被害こそなかったが、もしこんなものを複数体、ブランシュが保有しているとすれば、それは明らかに脅威であり、魔法科高校のみの問題ではなくなる。

 ブランシュは反魔法師団体であるのだから魔法師全体にとっての脅威であり、ひいては国に対しても脅威となりかねない。

 

 魔術を起動させて逆探知を仕掛けている圭だが、そういう魔術であれば片手間でもできるのだろう。閉じた片目にホムンクルスの情報を読み取り、開いた片目で現実を見ていた。

 

 

 ホムンクルスが鋳造された来歴、過去、造り手。それらの映像が流れ込んでくる。

 予想はあった。

 前回明日香が遭遇した際に得られた霊基のパターンはすでに照合してある。

 ゆえにあのサーヴァントの真名はすでに明らかだ。

 

 ――悪魔が来たぞ!!――

 

 そして配下となるホムンクルス―― デーモンを使役しているとすれば、それは伝承を紐解けばわかること。

 最悪の悪魔を自称する者。

 かの名高き―――名高くさせられた博士を悪の道に引きずり堕とそうとしたと言われる悪魔。

 その伝説を彩る戯曲“ファウスト”に語られた、彼の使役下にある“三体の悪魔”。すなわち―――

 

「ホムンクルスですよ。おそらくある伝承に基づいて―――ッッ!!!! 明日―――――」

 

 読み取る内容が過去から未来、つまり今に近づき、そして突如としてノイズが走った。

 

 ――紫色のサーヴァントの姿。伸ばされる手。体に施された仕掛け――

 

 瞬間、閉じていた片目を開いた圭はホムンクルスから手を離し、後ろへと跳ねようとし――――それよりも早く目の前のホムンクルスから閃光が溢れた。

 

 

 

 ―――――轟ッッ!!!!!

 猛烈な閃光とともに轟音を上げた爆発が、目の前で起こった。

 

「藤丸君! 獅子刧君!」

 

 爆心地――爆弾そのものとなったホムンクルスの傍には藤丸圭と獅子劫明日香の二人がまだ居て、あれを調べていたところだった。

 爆発を察知した瞬間、咄嗟に克人は防壁魔法を貼って自身と真由美や摩利たちを守った。

 幸いにも爆発は物理現象として発現しており、先ほどホムンクルスには破壊された防御魔法も、爆発を完全に防ぐことはできた。

 だがさしもの克人もあの一瞬で離れた所にいた二人にまで防御の魔法を放つことはできなかった。

 真由美の叫びが濛々と立ち込める爆発の煙へと吸い込まれ―――――彼女たちの横からドサッという音と、グエッというカエルの潰れたような声が聞こえた。

 真由美たちが視線を向けると、そこには爆発に至近距離で巻き込まれたはずの二人、圭と明日香がいた。

 

「ゲホゲホッ。明日香! もう少し持つところとか、力加減とか気を配ってくれないか! 急加速のGで僕の細首がもげるところだったよ!」

「咄嗟だったんだ。ちゃんと強化が間に合っているんだから大したことないだろう」

「いやいや! 君、限度があるって言葉を知っているかい!?」

 

 圭は明日香に襟元を持たれていて、手が離れるやせき込みながら首元をさすり、悪態をついていた。

 だがそれ以外には怪我らしい怪我は見当たらない。

 

「無事、のようだな、二人とも……」

 

 その姿に真由美はホッと胸をなでおろし、摩利も脱力したように肩をおろした。

 

「ええ、まあ。直前で感づいてくれた明日香が僕の首をもぎかけた以外は無事ですよ」

 

 爆発を察知したあの一瞬、圭は明日香に呼び掛けるのと同時におそらく引っ張られるだろう首元に硬化魔法に似た魔術か魔法をかけて保護したのだろう。

 だがたしかにあのホムンクルスの巨腕を弾き返すような剛力の持ち主に引っ張られればもげてもおかしくはないかもしれない。しかも爆発の瞬間を見ていた摩利たち、殊に知覚魔法に優れていて、あの瞬間にも発動させていた真由美ですらも認識できない速度で離脱した速度を考えれば、むしろよくもげなかったというべきか。

 

 圭の悪態と若干恨みがましい視線をよそに、明日香は明後日の方を向いており――

 

「獅子刧くん?」

「今の爆発。ここだけじゃない。他のところからも聞こえてきていたようです」

「なに!?」

 

 視線を逸らしていたのではなく、異なる爆心地を睨みつけていたのか。

 問いかけた真由美に対して口にした明日香の言葉に真由美は驚き、摩利と克人は慌てて指揮下にある部署の、各所に散らばっているはずの風紀委員と部活連の生徒たちに確認をとった。

 

「拘束していたテロリストたちが自爆しただと!?」

「なっ!!」

 

 そして返ってきた報告は彼女たちのみならず、明日香ですらも驚愕するものだった。

 

 

 

     ✡  ✡  ✡

 

 

 

 各所に入り込んだ武装テロリストたち。

 その本命の目的が図書館にある秘匿情報にあったことは、この部隊を鎮圧した達也たちから報告があった。

 彼らは講堂に突入してきた第一陽動部隊が鎮圧された後、実技棟へと赴き、そこで図書館こそが彼らの本当の狙いであることを知って図書館の制圧へと出向いた。

 幸いというべきか、テロリストたちの目的が秘匿情報にあり、逆に襲撃してきたホムンクルスの目的が“魔法”にはなかったからか、本命の動きを担っていたのは魔法師やテロリストたちであった。

 達也や深雪、そして二科生ではあるものの“剣の魔法師”の異名持つ千葉家の令嬢、エリカの力量はテロリストやそれに与する学生程度であれば容易く鎮圧できるほどに魔法師として優れたものであり、秘匿情報が漏洩されることもなく、そしてテロリストたちを手引した2年生の女生徒も多少の怪我を負わせたものの無事捕縛することができた。

 そうしてテロリストたちの第一目的が失敗に終わり、風紀委員や部活連、そして教員たちの各所での活躍により軒並みテロ行為は鎮圧され、侵入してきた武装テロリスト、およびそれに助力していた生徒たちは捕縛され、事態は無事に決着を見た…………かに思われた。

 

 だが、講堂近くの戦いにおいて明日香が巨大ホムンクルスを撃破し、自爆を許してしまったのと同時に、すでに捕縛されていた武装テロリストたちもまた自爆していったのだ。

 それは周囲を巻き込むため、というよりも自爆そのものに意味があったかのようで、学校側の人的および物的被害はほとんどなかった。怪我をしたものも中にはいたが、警邏にあたっていた学生・教員はほとんどが魔法力に優れた者達で、概ねは防御魔法によって自己防衛あるいは近くの生徒を守ることができていた。ただし、それは眼前で血と肉の花火を見てしまったという精神的ショックを除けばの話だが。

 そしてもう一つ幸いなことに、テロリストたちを手引した生徒たちには、今のところ自爆者が現れていないことも、生徒たちに致命的なトラウマを植え付けずに済んだことだろう…………

 

 

 


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