Fate/ School magics ~蒼銀の騎士~   作:バルボロッサ

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10話

 

 

 草原のフィールド上空に16の圧縮空気弾の魔法式が描かれている。

 それは九校戦のレギュレーションからは逸脱しているレベルの殺傷力を有するもので、けれどもその標的になっている達也は迎撃に徹した。

 並の魔法師では一日掛けても絞り出せないほどの想子(サイオン)を圧縮し、彼を狙う魔法式を吹き飛ばしていく。

 間に合うと予測できたわけではない。むしろ達也の判断力はこの方法では間に合わないことが分かっていた。

 手段がないわけではない。ただそれはこのような場で見せるにはいかなかっただけのこと。

 その手段を見せることは、魔法科高校に居られなくなることを意味しており、達也自身はそれは別に構わないのだが、他でもない妹の願いのためにはそれはできないことなのだ。

 結果、迎撃は14発までしか間に合わず、達也は残り二発の直撃を受けた。

 

 ルール違反を察知していたのは、誰よりもそれを放った本人―― 一条将輝であり、審判も気づいていなかった。あるいはそれをスルーした。

 だが自覚があるからこそ、そしてここが血をまき散らす戦場ではなく競技の場であることから、そして彼の生真面目な性格から、隙が生まれた。

 

 二発とはいえ、一条の圧縮空気弾は相手に重傷を与えるレベルであり、事実、それを受けた達也は肋骨が折られ、門脈を損傷し、内臓に深刻な出血をきたしていた。

 次の瞬間、()()()達也が一条に迫り、右腕を突き出した。

 直接打撃は禁じられている。直接攻撃ではない。一条の顔を当たらないように通り過ぎた達也の右手が、フィンガースナップを鳴らし、増幅。

 会場に音響兵器のごとき破裂音が鳴り響いた。

 遠く、モニター越しに戦況を見ている観客たちまで思わず耳を塞ぐレベルの音。

 一条の耳から血が流れ、その体が崩れ落ちる。わずかに後れて、達也も膝をついた。

 

 

 そして残る戦いが動き出した。

 想定だにしなかった一条将輝の敗北に、彼のチームメイトにして親友の吉祥寺真紅郎は硬直し、隙を逃さず幹比古が仕掛けた。

 達也によって魔法式をスリムアップされた古式魔法の連撃が動揺の大きい吉祥寺を追い詰め、雷撃が彼を撃った。

 肋骨を折ってなお、力を振り絞った幹比古だが、健闘はそこまで。

 残りの一人を倒す力はなく、土砂を掘り起こす移動系魔法が放たれた。躱す体力も防ぐ魔法力も残っていない幹比古は、敗北を受け入れ―――けれども勝者は一高となった。

 先の段階で一条に不意を打たれて気を失っていたレオが意識を取り戻し、寸でのところで達也が開発した新型武装デバイスによって相手に一撃入れたのだ。

 それによって三高の選手は全て倒れ伏すことになり、その瞬間、一高のモノリス・コード優勝が決まった。

 

 

 

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「第一高校の優勝は最早確定的だ……」

「馬鹿な! 諦めると言うのか。それは座して死を待つということだぞ!」

 

 思惑通りであれば、本戦の半分とはいえ得点の高いモノリス・コードの敗退により一高の失墜となるところであったはずだ。

 だがその日、代理選手の出場した一高はよりにもよってモノリス・コードの優勝をさらってしまった。

 それは同時に新人戦の優勝を決定づけたもので、このままいけば最終合算成績においても一高の優勝となるだろう。

 それでは困る者たちがいた。

 

「このまま一高が優勝した場合、我々の負け分は一億ドルを超える。そんなことになれば……」

 

 九校戦の会場から遠く離れた某所で、円卓を囲み重苦しい空気の中、密談している彼ら。

 その周囲には物言わぬ道具と化した魔法師の男が数人。

 

「これだけの損失、楽には死ねんぞ。ただでさえ今回のプランは負けた場合の金額が大きすぎて本部が渋っていたのを、我々が無理を通したものだからな。良くて生殺しのジェネレーター、適性がなければブースター、あるいは……」

「この企画がなければ今期のノルマを達成できなかったとはいえ、少し強引すぎたか……」

 

 それは近い将来、彼らがなるかもしれない姿かもしれず、あるいは最近の上の動向次第ではそれすらも許されない可能性がある。

 彼らの下に派遣されているのは物言わぬ道具(ジェネレーター)だけではない。

 人ならざる異質な存在を思い出して彼らは身を震わせた。

 あれは人を超えた存在だ。

 過去の英雄などという存在。

 その栄養となるためだけに、生命力を奪われ続ける肉袋。

 果たしてそれは、精神を破壊されて命じられた魔法を行使するだけの存在(ジェネレータ)と、拷問の果てに脳髄だけを取り出されて道具(ブースター)となるのと、いずれがましな未来であろうか。

 いずれにしてもそのような未来などごめん被る。

 

「そんなことを言っている場合ではなかろう! こうなっては最早、連中に気を使っている場合ではない」

「そうとも! 最初から本命に負けてもらう予定で色々と手間をかけていたのだ。それをあの連中が横やりを入れて。今更出てきた魔術師などに躊躇する必要はない! 要は証拠を残さなければいいのだ! なんとでも言い訳は立つ。徹底的にやるべきだ!」

「明日のミラージ・バッドでは、一高選手の全員に途中で棄権してもらう。強制的にな」

「なぁに、運が良ければ死ぬことはあるまい。さもなくば、運が悪かったというだけだ」

 

 もとより、他者を踏み砕くことを咎めるような良心などない。

 たとえ未来ある子供が魔法を失おうが、命を失おうが、尊厳を失おうが、所詮それらはこの国の魔法師(道具)たちのこと。

 自分たちの富に、あるいは生きるための贄にすることに躊躇いなどない。

 

 

 

 

 

 

 

 九校戦会場にほど近い森の中。

 

「くくく、はははは! いや、まったくもって彼らは。つくづくと愛おしいクラウンだ」

 

 マスターではない契約者たちが、悪なる決定を下したことと、そのための指令を別の人員が受けたことにアサシンは嗤いをこらえきれなかった。

 まったく、彼らは自分たちのことを物語の主役だとでも思っているのだろうか?

 あのような企みをして、三流よろしく金のためだけに陰謀を巡らせ、挙句失敗すれば今度は身の保全のために慌てだす。

 主人公を苦しめるヴィランの役割も果たせない、精々が性悪な脇役。物語の始めに主人公に悪態をついてストーリーからはじき出される存在だろう。

 

「んン。さぁてこの物語はどこに向かうのでしょうねぇ」

 

 騎士王、ヒロイン、クィーン、イレギュラー、魔術師、クラウン、魔法師、ポーン、間諜、モブ、観客。

 物語を彩るキャストは様々で、きっと愉快な物語を描いてくれる。

 悲劇か喜劇か、人間模様か、恋愛譚か英雄譚か、そんなものはどれでもいい。

 物語は人の心を豊かにする。

 ならばそれに少しでも意義あるものをこそ組み込むべきだ。

 後悔や堕落、因果応報、勧善懲悪。ああしてはいけない、こうした方がいい。

 物語とは教訓を教えてくれるものであるべきなのだ。

 そんな物語をこそ、収集すべき価値がある。――――歪み伝えるものなのだ。

 

 前回の襲撃では大会という祭りが中断するほどの騒ぎ。人死を出すわけにはいかなかったので退いたが、今度は違う。

 盛大に、存分に、恐怖と教訓を子供たちに刻み付けようではないか。

 

 

 

 

 

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 九校戦9日目。

 新人戦の優勝自体は昨日すでに一高に決定している。だが本戦の結果はまだ確定ではなく、特に今日行われるミラージ・バッドは女子の花形競技で得点比率も高い。

 そして注目なのは1年生でありながら本戦に出場している選手が2人もいるという点だ。

 新人戦女子クラウド・ボールで活躍した一色愛梨とアイス・ピラーズで圧巻の魔法(インフェルノ)を見せた司波深雪。

 勿論、本戦に選ばれている他校の2,3年生を易々と打ち倒せるとは観客も他校生も思ってはいない。

 だが他でもない三高と一高の生徒たちは、自校の代表である彼女たちをよく知るがゆえに負けるはずがないと、どちらもが共に確信を抱いていた。

 

 

 

 

 ―――――悲鳴が上がった。

 それは第一試合が騒然とした結果に終わってしまった後の、第二試合に向けてのCADのレギュレーションチェックの時だった。

 九校戦の大会委員のテントという中立にして大会そのものを司る中枢の場所で突如として発生した暴行事件。

 その中心にいたのは今大会注目の的の一角となった一高の技術者、司波達也だった。

 CADのチェックの最中に、彼は突如としてチェックを行っていたスタッフを地面に引きずり倒し、殺意も露わに激怒していた。

 

「なめられたものだな。深雪が身に着ける物に細工をされて、この俺が気づかないと思ったか」

 

 彼によって地面に叩きつけられたスタッフは、胸を膝で押さえつけられる形で組み伏せられ、至近から鬼気迫る殺気を浴びせかけられ、ガチガチと恐怖に震えていた。

 

「検査装置を使って深雪のCADに何を紛れ込ませた?」

 

 達也が感知したのは異物の反応。

 ほかでもない、彼が調整し、深雪がこの後の試合で身に着け、使用するはずのCADにだ。

 

 指摘されたスタッフの顔が恐怖に加え絶望に染められた。 

 

「なるほど、この方法ならCADのソフト面に細工することもできるだろう。大会のレギュレーションに従うCADは検査装置のアクセスを拒むことができないからな」

 

 達也の殺意と殺気に、思わず気圧されていた周囲のスタッフたちも、達也を取り押さえようとしていたのが一転、その言葉に息を呑んだ。

 

「だがこの大会、今までの事故が全てお前一人の仕業というわけでもあるまい」

 

 断罪の時。

 

 騒ぎを聞いてやってきた九島烈――世界最巧の魔法師であり、この九校戦においても大きな影響力を持つ閣下が、達也の言を認め、検査を受けたCADに異物が紛れ込んでいるのを認めたことで、罪の発覚は決定的となった。

 有線回路を通して侵入し、電子機器から出力される電気信号に干渉して改竄し、その動作を狂わせる遅延発動式のSB魔法。現代魔法、あるいは古式魔法において“精霊”と呼ばれる非物質存在(Spiritual Being)を媒体とする魔法の一種で、電子金蚕と呼ばれるこの魔法はかつての戦時において広東軍――大陸の魔法師が用いてたもの。

 それはつまり、一高に対して行われようとしていた不正工作が大陸系の魔法師に繋がりのある者たちの仕業であり、これまで行われた妨害――新人戦モノリス・コードの森崎たちや本戦女子バトル・ボードにおける摩利が被ったこともまた、彼らの仕業であることが明らかになるのであった。

 

 

 

 

     ✡  ✡  ✡

 

 

 

「バカな。電子金蚕を見抜くのみならず、飛行魔法だと、っ!」

 

 ミラージ・バッドの予選にて、彼ら――香港系国際犯罪シンジケート「無頭竜(ノーヘッド・ドラゴン)」の東日本総支部が仕掛けた一高(深雪)に対する妨害工作は失敗に終わった。

 彼らへの繋がりを示す術式が暴露された上に、協力者まで暴かれて捕らえられたという。

 もとより協力者とはいえ、この国の人間だ。使い捨てにすることに忌避があるわけでも戸惑いがあるわけでもないが、彼らにとって深刻なのは一高が予選を圧倒的な新魔法によって突破してしまったということだ。

 ミラージ・バッドは上空に設置されたランダムに発生する光源に触れることで得点するタイプの競技。つまり空を飛び続けることのできる魔法は、この競技においてあまりにも規格外にすぎる魔法(チート)なのだ。

 これまで、飛行魔法は加重系魔法の技術的三大難問と呼ばれるほどに、現代魔法では再現不可能なものだった。一部の古式魔法師やBS魔法師(先天的特異能力者)がかろうじて使うことのできる属人的な魔法であったために、九校戦でそれをルールとして明文化する必要がなかった。

 だがつい先月、その難問が突き崩される魔法界の革命が起こった。

 トーラス・シルバーなる研究者による飛行魔法の発表。

 ただそれは、まさに世界を揺るがせたニュースであり、最新技術にすぎた。その対策対応を高校の魔法競技会が本腰を入れて取り組むにはあまりに喫緊のニュースに過ぎた。

 ゆえにミラージ・バッドにおいてルールによる対策は行われず、けれど一高の選手はそんなルールの不文を文字通り飛び越えた。

 

「これで力を使い果たしてくれたのならいいのだが……」

 

 飛行魔法は極短時間における連続的な魔法行使が必要な魔法であり、長時間の飛行は魔法師に負担がかかる。

 現代魔法は、かつての古式魔法とは異なりCADの発達によりサイオンの保有量が一部の魔法を除き、あまり魔法力に影響しなくなってきた。

 そのため力を使い果たすということも考えられなくもないのだが、飛行魔法を使用したのは新人戦でインフェルノという超級の魔法を平然と行使した怪物のような一年生魔法師だ。

 これで体力を使い切って決勝で飛べなくなるなどと楽観にすぎる展望を期待するほど、彼らに後はなかった。

 

「どうすればいい。どうすれば……」

 

 最早手段は選んでいられない。 

 そう言った彼らだが、まだ選んでいない手はあった。

 

 それは………………

 

 

 

     ✡  ✡  ✡

 

 

 

 本戦ミラージ・バッド。その優勝は、運営本部を介して各校にリークされた飛行魔法によるフェアリーダンスによる争いの様相を呈し、けれども最も華麗に飛んだのは一高の司波深雪であった。

 圧倒的なサイオン量。まるで彼女のために調整されたかのような術式は、アイスピラーズ・ブレイクにおける荘厳にして神秘的ですらあった彼女の姿を、今度は可憐に舞う妖精女王(フェアリークィーン)のように演出してみせた。

 外野では悪あがきにしかならない騒動が、起こる前に鎮圧されるような事態もありはしたものの、クィーンの輝きをわずかなりとも曇らせることもできはしなかった。

 それにより翌日最終日の本戦モノリス・コードの結果を待たずに一高の総合優勝が決定した。

 それは九校戦の結果を賭博の対象にしていた者にとっては本命ど真ん中で期待通りの結果であり、翻ってそれを食い物にしようとしていた胴元にとってはまさに致命的な結果となった。

 

 胴元たち――粛清を待つばかりとなった無頭竜(ノーヘッド・ドラゴン)の東日本における幹部たちは、この結果を生み出すことになった立役者の高校生、司波達也への呪詛を吐きながら夜逃げの準備に勤しんでいた。

 だがどこへ逃げるというのだろう。

 彼らの上役である本部にこの結果を知られれば粛清されることは間違いなく、触れてはならない者(アンタッチャブル)の逆鱗に触れたからには悪魔の手が伸びるのは時間の問題で、そして……………

 

「さぁて、主役は怪物退治に向かいましたか」

 

 物語(悲劇)の収集家はすでに彼らの出番に幕が下り、主役の出番となったことを是としていた。

 

 司波達也が、彼が秘密裏に所属する軍と、公安の情報を得て無頭竜(ノーヘッド・ドラゴン)東日本総司令部の本拠がある横浜のグランドホテルへと向かっていた。

 特定の対象に向けるものを除いて、一定水準以上の感情の起伏のない達也にとって、その唯一 ――深雪に手を出そうとしたことは許せるものではない。

 そして彼にとって守護すべき対象である深雪と物理的に距離が隔てられることは、気分の問題を除けば、さして問題になるものではない……はずであった。

 

 それが彼の世界における情報から出した結論。

 神秘などという曖昧をこそぎ落してきた魔法の産物である彼の生きる世界。

 

 ゆえに、彼は読み違えた。

 物語の幕はまだ落ちるには早すぎた。

 

「それではこちらも、始めるとしましょうか」

 

 (アサシン)は手に持つ本を開いた。

 パラパラとめくれるページが一つの物語を指し示す。

 魔力の充填。

 周囲の空間がアサシンの魔力と本の力によって歪められていき、満たされていく魔力によって黒い靄が沸き起こり、何かを形作っていく。

 男の姿。

 黒かった靄は、形作られた人模様に色をつけていく。手には大きな笛。色とりどりの派手な服。

 

「Rattenfänger von Hameln。さぁあ、皆さま! ポッペンベルクに向かうとしましょう!!」

 

 アサシンの宣言とともに靄であった男は手にした笛を吹き鳴らした。

 富士の森に狂い鳴く笛の音色が狂宴の幕を開く。

 

 

 

 

 

 明日香は森の中を一人、疾駆していた。

 

 すでにデミ・サーヴァントへの変身――蒼銀の鎧を纏った姿に変わっており、足場と視界の悪い森の中を走る彼の脚力は音を置き去りにするほどだ。

 それでも彼は進む先から聞こえてくる笛の音を確かに知覚していた。

 デミ・サーヴァントとして聴力で、そしてそこに込められた禍々しい魔力を感知して。

 

 探索と行動指針立案のメインになるはずの圭のバックアップは今回はない。

 彼の負った怪我は、魔法による再生と本人治癒力を合わせても早々に戦場復帰、それも対サーヴァント戦に駆り出せるようなものではないからだ。

 もとより、“藤丸”の魔術師でしかない圭がサーヴァントとの戦いを正面切って行いはしないが、彼のサポートなしというのは戦局の推移を俯瞰できなくなるなどの不安要素ではある。

 今も強力な魔力反応――おそらく敵サーヴァントによる宝具の反応を感知して最短ルートを駆けているが、それが敵の罠や陽動であることは否定できない。

 だがそれでも一刻も早くこの魔力反応を止める必要があった。

 強力な対魔力を持つ明日香には効果はないが、魔力の込められたこの音色は何らかの精神干渉系の効果を有していることが感じられるからだ。

 英霊の宝具による精神干渉ともなれば、常人はもとより呪的防壁に関しては常人と大差ない魔法師にとっても非常に効果的だろう。

 効果範囲も非常に広い。

 まるで森全体、一つの街ですら覆うであろうほどの効果範囲を持っているようにすら感じる。

 具体的効果は分からないが、彼の既知のみならず大勢の無関係な人間が巻き込まれるのは必然で、明日香の魔術の技量では防壁を張り巡らせて守ることは不可能。サーヴァントの宝具が相手では負傷していない状態の圭でも難しいだろう。

 ゆえに明日香にできる最善は、この音波系精神干渉型宝具がその効果を発揮してしまう前に速やかに敵のサーヴァントを打破することだ。

 鉄腕のゲッツにこのような音についての逸話がないことを考えれば、この宝具を使っているのはもう一騎のアサシンだろう。

 アサシンの真に恐ろしい特性は、気配遮断によるマスターの暗殺。

 だが宝具を使用して居場所を晒しているような状況では、アサシンとしての特性は十分に発揮されようはずもなく、直接戦闘力でいえば間違いなく明日香の方が上回るはずだ。

 だが―――

 

「ッ! くっ……」

 

 前方に異なる気配を察知する。

 ルートの回避はできないだろう。決して感知能力の高くない明日香が気配をしたのであれば、同様に敵のサーヴァントもこちらを補足しているであろうから。

 そしてこのルートで鉢合わせたということは、すなわちそれは――――

 

「予想通り、このルートを通ると思ったぜ。なんせここは、戦場に向かう最短のルート。戦闘への直感に従うなら、このルートが最善だと判断するはずだからな」

 

 明日香の足止め、もしくは待ち伏せしていたということに他ならないからだ。

 

「ランサー…………」

 

 駆ける足を止めて、距離を置いてランサーと対峙した。

 すでにお互い武装はなされており、明日香も不可視の剣を構える。

 

「さぁて、フェーデの取り立てといこうか」

 

 明日香に出来るのは、この決闘卿を速やかに打破することをおいて他に無かった。

 

 

 

 

 

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