Fate/ School magics ~蒼銀の騎士~ 作:バルボロッサ
──魔法協会支部に到着する前、トレーラーの車内にて────―
「……藤丸君。獅子劫君は、あの相手、ルキウスというサーヴァントに勝てるの?」
これから先の戦いについての不安は勿論ある。だが同時に、すでに起こっている戦いの動向についても懸念は残されている。
彼が容易く吹き飛ばされた姿を思い出したのだろう。真由美が不安げに魔術師に問いかけた。
人の動きとも思えぬ領域での戦い。それは魔法でこそ到達できる果てであると思っていたのに、正真正銘のサーヴァントとの戦いを目の当たりにしてその考えは砕け散った。
あれは人が敵うモノではない。
ならばサーヴァントの力を有するとはいえ人の身である明日香がこれまで同様にあのルキウスというサーヴァントを倒せるのかを不安に思ってしまったとしても、アレを目にした以上、無理からぬことだ。
雫も摩利も、レオも幹比古も、克人ですらもアレを目にした瞬間から、根源的な畏怖をぬぐい去れなくなっているのだ。
車内の皆の不安を感じる。そしてそれは圭とて同様。
「かなり難しいでしょう」
「そんな!」
懸念を否定できない圭の言葉に、声を上げた真由美だけでなく雫やほのか、深雪でさえ絶句した。
声こそ上げなかったが克人や達也でさえも顔色を変えていた。
「ルキウス・ヒベリウスというのはあまり覚えのない英雄だが、どういう英霊なんだ? 明日香はかなり詳しかったようだが」
達也の問いかけ。
博識な達也といえどもこの世全ての情報を網羅しているわけではない。サーヴァントとのかかわりがあってから古今東西の英雄についても調べてはいるものの、文明が発祥して以降ともなれば人類の歴史は5千年は超える。
そんな歴史の中で綺羅星の数ほどもいる英雄や名を馳せた人物・怪物を網羅することはいかに達也とて時間の制限上難しい。
そしてこれは一つの確信あっての問いかけだ。
「……明日香の、というよりもセイバーが生前戦った相手です。当時大陸最強と謳われた剣士にしてローマ皇帝」
獅子劫明日香というデミ・サーヴァントの来歴に関わる情報。
達也の認識ではサーヴァントは過去の亡霊だ。
過去に死した存在だからこそ、その死にざまが分かり、対策が打てる可能性が高まる。ゆえにサーヴァントはその真名を隠すものだと魔術師は言った。
明日香は厳密には異なるが、その力の根源は英霊のもの。
ゆえに達也たち魔法師は誰一人として明日香の英霊としての真名を知らない。
けれども明日香は刃を交える前から、そして敵もまた同じく互いの真名を知っていた。
「獅子劫は勝ったのか?」
「セイバーと明日香は別人ですよ、十文字先輩。明日香はデミ・サーヴァントでしかありませんから、明日香が勝ったわけでありません。ただ、セイバーはあの皇帝を宝具の一撃で打ち破り、歴史からすらも存在を消滅させた」
「歴史上から消したというのはどういう意味だ?」
このような時とはいえ、いやこのような時だからこそサーヴァントの情報を得るまたとない機会。克人と達也から矢継ぎ早に質問がきた。
圭としては明日香の真名を開陳するつもりはないが、自身の混乱を整理する意味でも口に出して言葉にしておきたかった。
「文字通りだよ。セイバーの聖剣の力によって人類史そのものから存在ごと抹消した。そしてだからこそ、本来の人類史ではあのルキウスが英霊として召喚されるはずはない」
「かなりイレギュラーな事態が起こっている、ということだな。藤丸、生前勝ったのなら獅子劫が勝つのは難しくないんじゃないのか?」
「克人さん、サーヴァント ──英霊については以前にもお伝えしましたが、その成り立ちは大きく2種類に分けられます」
一つは生前の為した功績によってその死後、英霊に成るタイプ。コロンブスやグリム、鉄腕のゲッツらがこちらだ。
彼らは生前からサーヴァント級の力を持っていたわけではないが、英霊となり、サーヴァントとして召喚されるにあたって、そのクラスに相応しいクラススキルとステータスを底上げされて召喚される。
つまりこのタイプは生前よりも強くなるタイプの英霊といえる。
そしてもう一つが生前から英雄として活躍し、その死後、英霊として世界に刻まれたタイプ。
アストルフォやラーマ、ほかにも有名なところでは竜殺しの英雄ジークフリートのように英霊として世界──―座に刻まれ、英霊あるいはサーヴァントとして召喚される際に召喚されるクラスに応じて、力の一側面を切り分けられるタイプだ。
「つまりたとえば、アストルフォの場合、ライダーのクラスとして召喚されているので騎乗であるヒッポグリフや馬上槍といった宝具を有していますが、生前の伝承では剣、つまりセイバーとしての側面もあります。けれどあのアストルフォには剣の宝具がありません。同じように、このタイプの英霊は召喚された際に、生前よりも力や霊基が制限されているものなんです」
魔法師にとってみればいずれのサーヴァントにしても、銃火器はおろか魔法も通用しない怪物であっても、同じサーヴァントであればそこに格の違いもあろう。
自らの武器である剣を解放しただけで嵐のような風を巻き起こし、ただその剣を振るうだけで戦術級魔法にも匹敵するほどの破壊の爪牙と化す。
だがそれが制限を掛けられた、本来の力に及ばない姿などと信じられるだろうか。
「そしてセイバーも、そしてルキウスも英霊としては後者になります。セイバーが生前所有していた宝具のほとんどを明日香は使うことはできません。それどころか明日香はデミ・サーヴァント。セイバーの霊基の一部を譲り受けているだけにすぎません。ルキウスは本来のセイバーにとっても容易ならざる英傑です。正直、今の明日香ではかなり厳しい」
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バーサーカーを迎撃するにあたり、藤丸たちはその作戦目的を明確化していた。
一つは、これ以上バーサーカーの侵攻と被害を食い止めるため、可及的速やかにこれを討伐すること。それができない場合は足止めし、バーサーカーが魔力切れで自滅するまでの時間を稼ぐことだ。
だがそれと同時に、というよりも本来の目的として、バーサーカーが侵攻している先、敵の戦術目標を挫く必要があった。
すなわち魔法協会関東支部に集約されているデータベースを守ることだ。
あそこまで目立つ進行をしているバーサーカーだ。あれを止めることは並大抵ではない魔法師であっても難しいとはいえ、あれだけに注意を割かれてしまえば陽動となりえる。
克人たちとともにバーサーカーの迎撃に当たるのと同時に、達也の判断で深雪は魔法協会支部の中を守る役目についたのだった。
そしてそのバックアップとして知覚能力に長ける美月と精霊を介した空間知覚のできる幹比古がつき、敵魔法師の認識阻害系統の魔法を無力化した。
どうやら達也と深雪は以前から別口で認識阻害の魔法の術者に警戒するようにとの助言を受けていたらしい。
深雪から藤林を介して達也に侵入者の迎撃と排除に成功したとの報告が入り、協会支部の前で達也によりバーサーカーの討伐が完了していた。
もともと迎撃にあたっていた職員や魔法師たちはともかく、達也や克人たちは全員が無傷。
とはいえバーサーカーが最後に放った戦術級とも思える威力の攻撃を防いだことで藤丸圭が大きく消耗している状況だ。
魔術と魔法という違いはあるが、魔法において術者の能力を超えた魔法の行使は術者を蝕むことがしばしばある。
達也と深雪の知人はそれで命を落としたことがあるし、克人に至ってはそれこそが十文字家の秘技にも関わるほどだ。
まして魔法と違って魔術はより汎用的になる以前の技術。安全性においてセーフティが魔法よりも十全でないとしても不思議ではあるまい。
今回、藤丸はサーヴァントの宝具の一撃をわずかとはいえ防ぐほどの魔術行使を行ったのだ。
負荷は大きく、その体を流れた高圧の魔力流が内臓や血管の一部を傷つけた。
あれが本来のサーヴァントによる宝具であれば到底耐えられなかっただろう。
比較的神秘の薄い呂布奉先の対人宝具に絞られた一撃であったからこその防御成功だった。
あれが対軍宝具クラスであれば、あるいはもっと神秘の強い伝承を有するサーヴァントの攻撃であれば、カルデアからのバックアップのない藤丸では耐えられなかったに違いない。
「大丈夫か、藤丸?」
「はぁはぁ、ごふっ、だい、じょうぶ、だ」
克人の心配に応える藤丸だが、言葉ほどには無事な様子ではない。
話す最中から咳き込み、その口元には血が滲んでいる、
「ちょっ、藤丸くん! 大丈夫じゃないわよね! 響子さん、すぐに救護の手配をお願いします」
慌てた真由美が藤林に指示を飛ばそうとするが、それを藤丸が遮った。
「いや、そんな時間はない。すぐにここから離れるんだ!」
口元の血を強引に拭い、崩れそうになる体を無理やりに立たせていた。
藤丸圭の未来視は予測によるものだ。
十分な情報がなければ発動しないし、それは半分以上が無意識的に行われるもの。意識的に予測を行うことは難しく、視えたとしても確定したものではない。
何らかの因子の介入によって変わることもあるし、まして今回はサーヴァントという超常者たちが入り乱れた、これまでに圭が体験したことのない激戦なのだ。
断片的で不確定な未来視であり、ここに至る過程こそ視えなかった。
けれども
だからこそ早くここから離れなければならない。
あの未来視を実現させないために。
バーサーカーが消滅し、そして──────
「ここは不味い。予測通りだともうすぐここが、ッッ!!」
轟音が、上空から響いた。
空への視界を遮り、まだ魔法協会支部から距離のある場所に建っていた高層のビルの一つが、その上階部分が吹き飛ばされて崩落していた。
「なっ、アストルフォ! それにあれはさっきのサーヴァント!」
そして上空で高速機動戦闘を行っているのはヒッポグリフに騎乗したアストルフォとヴィマーナを駆る
空を翔る術を魔法師は得たが、彼らの飛翔速度は飛行魔法の比ではない。
容易く亜音速を突破しており、アストルフォに至っては時折瞬間移動をしたかのように姿を消している。
ただその高速機動による空戦はヴィシュヌに有利。
攻撃手段が馬上槍のアストルフォに対してヴィシュヌはヴィマーナから光弾を放ち、アストルフォはそれを回避するので精一杯。
ゆえにここまで追い込められたともいえる。
ただヴィシュヌがここへと戦場を移したのは決して偶然ではない。
半身に吸い寄せられるかのごとく、あるいは追い求め続けた彼女と引き寄せ合ったからなのか。
「────―!!」
ヴィシュヌが視界の端にシータを捉え、シータもまた視線が交錯したことに気が付いた。
ほぼ同時にアストルフォは自身が、遠ざけたはずの友だちたちのところにまで戦場を追い込まれてしまっていることに気づいた。
ヴィシュヌの光弾の軌道がシータを、そして雫やほのかたちを捉えた。
──―しまった! ──
魔法師たちはもとより、魔術師であっても、そしてAランク相当の対魔力を行使できるアストルフォといえども神霊サーヴァントの攻撃を防ぐことはできはしない。
アストルフォであればヒッポグリフの力で回避することができる、事実アストルフォがここまで空中戦で渡り合えたのはそれによるおかげだ。けれどシータや魔法師たちではそれもできない。
「ッ、間に合え! ────―
アストルフォは回避しようとしていたヒッポグリフの手綱を操り、黄金の馬上槍を構えて光弾を放とうとしているヴィシュヌと正面からの真っ向勝負に打ってでた。
「アストルフォ!」
だがもとより先んじていたヴィシュヌに対して無理やりねじ込まんとしたアストルフォは、わずかに間に合わずに光弾を浴びた。
華奢にも見える騎士の体が吹き飛ばされ、ヒッポグリフの姿が光の粒子となって消える。
常人であれば到底助からない高度からの落下。
サーヴァントの霊基であるからこそ無事だが、先の直撃、無傷とはいかない。
倒れ伏したアストルフォの体は傷だらけで意識を失っていた。
だがアストルフォとてただやられただけではなかった。
トラップ・オブ・アルガリア。
シャルルマーニュの伝承においてカタイの王子・アルガリアが愛用し、アストルフォが手に入れた魔法の馬上槍。その本質は貫くことではなく、敵を落馬させること。
アストルフォの槍はヴィシュヌに対してわずかに掠った程度。けれどもそれで十分。宝具の力によりヴィシュヌの騎乗であるヴィマーナが消失する。
「■■■■■■!!!!」
直感に導かれて、あるいは決着の場へと引き寄せられるようにこの場にやって来ていた明日香はアストルフォの絶体絶命の危機にギリギリのタイミングで間に合い、ヴィシュヌのとどめとなる攻撃を防いだ。
だがそれは彼自身の敵に対しては隙を見せる行為。
「俺との戦いの最中に余所見とは、舐められたものだな、アルトゥールス」
声が聞こえた。デミ・サーヴァントとして常人より強化されたからではなく、その声が“彼”のものであるからか。
巨人の怪力をもって振るわれる皇帝剣が迫る。
「ッッ────―」
それでも咄嗟に聖剣で防御を試みるが、皇帝剣が纏う神秘を纏った赤雷が明日香の身体を焼く。
セイバーとしての対魔力がダメージを防ごうとするが、明日香としての肉体は完全に電撃から逃れることはできない。
霊体ではない実体を持つ筋肉が痺れ動きが鈍り────────
「明日香!!!!」
ルキウスの斬撃によって血風とともに明日香は地に沈み、雫は悲鳴交じりの声を上げた。
これまでとは違う。
獅子劫明日香が、これまで雫や多くの魔法師の危機を救ってきた蒼銀の騎士が、今、目の前で、明確に、地に臥した。
──不味い! 不味い不味い不味い!! ──
撃ち落とされたアストルフォは消滅こそしていないものの戦える
シャドウ・バーサーカーの討伐にこそ成功したものの、ここにはそれとは比較にならないレベルの敵、ハイ・サーヴァントである
明日香までもが戦闘不能になってしまったのなら、魔法協会を守ることができた勝利も無意味になってしまうだろう。
そしてこのままでは圭が視たあの光景が…………
「獅子劫様! アストルフォ様!!」
常であれば鈴の音のような声が、危地にあって切迫した音となって戦場に響いた。
シータが彼らの名前を呼んだのも無理からぬこと。
戦術上の計算だけではなく、シータという英霊の性質として彼女は戦うものではないのだから。
純粋に仲間としてあった者たちの傷ついた姿に、堪えきれなかったのだろう。
二人の英霊の、男の名前を────―
目の前で、彼女が名前を呼んだ。
唯一の妃であるはずの
彼は14年にも渡って彼女を求め続けた。親族によって王位後継の地位を奪われ、森に追放されても、たった一人寄り添い続けてくれた愛しい彼女。
幾度彼女の名前を呼んだだろう。幾十度彼女の名前を叫んだだろう。
彼女の姿を思い描かなかった瞬間などない。彼女の温もりを忘れたことなど片時もない。
それなのに、それなのに、それなのに。
民は彼女の貞操を疑った。彼女の姦通を疑った。
その胎に宿ったのが魔王の忌子だと疑った。
その瞳が我以外を写すことなど許しがたい。
その手が我以外の身体に触れるのが許しがたい。
その声が我が名を呼ぶこと以外が許しがたい。
その存在が──────―許しがたい。
「シ────タァァァァ!!!!!!」
許せない、許せない、許せない、許せない。
認められない、認められない、認められない、認められない。
彼女の存在が──────認められない。
──宝具
炎が燃え上がる。
其はまさに神威の化身。太陽の具現が如き神滅の焔。
かつて
その炎は
猛り狂うは妻に対する怒りか悲しみか、あるいはそれは自身に対するものなのか。
正真正銘の神秘。神の力。
それは深手を負った明日香の姿に動揺していた雫を含め、十師族の克人や真由美も、そして達也にさえも、この場に集う魔法師の全てが、この戦場に立つすべての魔法師が感じるほどに怖気を齎す異質な、そして強大すぎる力。
「ウソ、でしょ。こんなの、戦略級魔法クラスの
真由美の声は慄きに震えていた。
魔法師は魔法的知覚力を持つがゆえに、いや、たとえなかったとしても、まるで太陽が顕現したかのようなこの尋常ならざる波動を視て平然とはできないだろう。
今起ころうとしている現象、
一度の発動で人口5万人クラス以上の都市や艦隊をすらも壊滅させることができる魔法。
それが戦略級魔法だ。
だがそれだけではない。
これこそが神秘。
人類の文明が発展とともに失い、魔法を手にする上で切り捨てたはずのもの。
神話の再現。
──マテリアル・バーストクラスの攻撃、ッ! 宝具による大破壊攻撃。術式解散でも雲散霧消でも消去できないッ!!! ──
達也は明晰な頭脳とリミッターを超えることのない冷徹な判断によってこの攻撃を防ぐことができないことを理解した。
首都防衛の要たる鉄壁、十文字克人の防壁でアレを防ぐことは不可能。
自分の魔法は元より防御に向くものではなく、だからこそ発動される魔法を消し去るか、あるいは発動前に術者を分解するしか手がない。
けれども今目の前で発動しようとしている“魔法”──宝具は分解することができまい。同時にその術者も。
アレはそんな程度のものではないと分かってしまう。
呂布奉先が今際の際に放った宝具の一撃でさえ、魔法師には防ぐことはできなかったであろう。
辛うじて防ぐことのできた藤丸圭は、それがために満身創痍の状態で、再度同じことをできはすまい。
まして藤丸の説明によれば、ヴィシュヌは呂布奉先などと比べ物にならないくらいほどの神秘を有する。
西暦以前の時代の英霊、神秘残るどころか、神霊そのものによる神秘の行使。
アレを防ぎうるものなどこの時代にありはしない。アレをしのぐことのできる魔法を人類が手にすることはない。
「……………………雫さん。制服、お返しできなくてごめんなさい」
怒り狂う神に立ち向かうように可憐な少女の姿をした英霊、シータが前にでた。
いかに英霊、同じ霊基を共有するサーヴァントといえども、すでに
そもそも伝承においてシータは魔王に攫われ、救けを待つばかりの儚い存在だ。
その最期も、民に疎まれ、愛する夫に見捨てられ、地に還った。
彼女の為すはその最期の逸話の再現。
紅を基調としていた霊衣が高まる魔力、霊基の再臨に伴って光を帯びて白へと変わる。
その姿は雫から見て、まるで祝福を受ける花嫁の如くに。
己を焼かんとする神滅の焔に花嫁は微笑みを向ける。
たとえ喜びを分かち合えなくとも。
たとえ民との天秤の末に切り捨てられようとも。
たとえ憎悪を向けられようとも。
──それでも、私はあなたが好き。あなただけが、本当に、本当に大好きよ、ラーマ……──
「宝具展開
貞潔なる祈りは大地に染みわたり、地の女神はそれに応える。
疑念の焔はシータとともにラーマ自身を包み込み、裂かれた大地が覆いつくす。
喜びも悦びも、決して共有できぬと知りながら、それでも出会えた奇跡を離さぬように。
「シータさん!!!」
雫の叫びに一瞬だけ向けられた微笑み。焔と大地に消え逝くそれは、淡く花のように。