Fate/ School magics ~蒼銀の騎士~ 作:バルボロッサ
シータの霊基を代替にして現界したラーマ。彼が味方をしてくれるのはアストルフォと明日香が大ダメージを受けている現状、唯一といっていい戦力だ。
まともな状態であればA級のサーヴァントであるルキウス相手でも渡り合うことのできる大英雄だろう。
けれどもあの霊基の損傷具合ではラーマ自身が言っていたように勝機はあるまい。
「明日香! 明日香!! 大丈夫じゃないのは分かってる! けど起きてくれ! 明日香!!!」
もしもここにいるのがカルデアのマスターであれば、ラーマと契約を交わし、勝機をつかむことができたかもしれない。令呪の力で明日香やアストルフォの霊基を修復することができたかもしれない。
けれど圭にはカルデアの魔力的なバックアップはなく、令呪もない。
明日香の状態も危険な状態だ。
風王結界の解除と霊基再臨。魔術回路を全力で回し、後先考えない──―考えられないほどに魔力を消耗したはずだ。
霊基の損傷だけでなく、明日香自身の肉体の損傷もある。
明日香のもとに駆け寄ったのは圭だけではなく、隣には雫が平時なら感情の起伏に乏しい表情をあからさまにしている。
「明日香! ──―ッ!」
その時、圭は彼やサーヴァントによるもの以外の魔力の動きを感知した。
振り返ると達也が明日香に銃型のCADを向けている。その瞳は明日香を、明日香の構成要素を視透している。
引き金が引かれ、再び発動する再成の魔法。
レオの受けた傷に比べて明日香の肉体表面に見える傷は数こそ多いものの浅い。
だからその効果はレオの時ほどには劇的ではないが、それでも目に見えて明日香の
だが、その後の明日香の反応もまたレオの時とは異なり、それは達也や彼の力をよく知る深雪にとっては想定外なことに、その“眼”によって明日香を視た達也と予想していた圭にとってはやはりという思いだった。
「……達也か。すまない。助かった」
緩慢に瞼を開けて意識を取り戻した明日香は、けれどレオの時とは違って鈍い動きで剣を支えにして立ち上がろうとした。
呼吸はそれだけで激しく乱れており、戦える状態どころか満足に動ける状態に戻ったようにさえ見えない。それでも明日香は立ち上がると地に刺していた剣を抜き、宝具を激突させあう二騎のサーヴァントを見据えた。
「これでまだ戦える」
その言葉が強がりなのは、魔術に関する知識のない雫たちでさえ分かった。
達也の精霊の眼で視えたのは、明日香の肉体の情報構造と渦巻く莫大な想子。渦巻くそれは深く深く、サーヴァントを視てきたことで視通せる深度の深まった達也の眼をもってしても視通しきることのできない深淵なそれは、まさしく今戦っている二騎の英霊に通じるもの。
達也の“再成”と“分解”に完全な認識は必要ない。そう理解して対象の幅は広がったが、達也の手応えとしてサーヴァントという神秘の塊の情報を読み切ることは達也をもってしても不可能だと漠然と理解できた。
「バカ言うな! 修復されているのは肉体的な表層情報だけだ」
圭の言葉はそれを裏付けていた。
人体構造という、すでに人智によって解体され、暴かれた神秘に対して、人の身である達也の“力”は及ぶが、人の身では到達できない神秘、切り捨てられ人理から喪われた神秘に対して達也の“力”が覆いつくすことはできない。
今の明日香の
古式魔法師の幹比古が術を以って明日香を視たとしても同じであっただろう。
この世界に霊体を繋ぎ止めている肉の器そのものは修復されているが、その中身である霊体そのものが損耗している。
物理法則から逸脱したサーヴァント同士の戦いにおいて、肉体的な損耗はさして影響がない。
実世界の肉体をもつ明日香にはハンデとなり得るが、本質はサーヴァントとしての力、霊体の方だ。
二騎のセイバーが互いの宝具をぶつけ合った結果、その趨勢が明らかとなっていた。
どちらもがおそらく聖杯かそれに準じる力によって召喚されたサーヴァント。
二騎の宝具は対人レベルではなく、対軍規模のレンジを見せていた。
魔法に当てはめるとすれば戦術級。あれよりもさらに出力を上昇させることができるとすれば戦略級にさえ匹敵するかもしれない。
けれども片や霊基も霊核も消滅寸前のラーマ、片や明日香との戦いの幕間にあって、
一方の霊基は赤雷によって光の残滓ごと消滅し、一方は無傷とまではいかずとも健在な姿を地に降り立たせた。
うなじがピリピリとひりつくように警鐘を鳴らしている。
彼我戦力は大きく離されている。
事ここに至ってはもはやルキウスの打倒はおろか、あの敵から逃げおおせることも難しい。
ルキウスの狙いが明日香の中にある英霊との戦いだとして、それならばほかの人間は逃げることも可能かもしれない。
そうなれば確実に明日香は死に、サーヴァント戦力を喪った
「今の君は霊基の損傷までは修復されていない。そんな状態で──―」
それでもここで戦うよりは可能性を繋げられる。
撤退を促そうとする圭の前に、剣を掲げた明日香が背を向けて立ち、遮った。
「この剣の重さは、誇りの重さだ」
手にある聖剣こそが、明日香の──“彼”の宝具であることは知っている。
「僕がこの剣と
これは生きるための戦いにはならないだろう。
相手の力は己よりも遥かに強大で、ここに立っているのは常勝を謳う赤き竜たる騎士王ではないのだから。
夢の中で、明日香はこれまで混血の夢魔の手ほどきを受けてきた。
そして時には手引きにより幾人かの“騎士”の手ほどきを受けた。
ただしその中に“彼の王”の義兄とされる“騎士”はいなかった。
その理由を夢魔が教えてくれたことはないが、何となく理解している。
あの人にとって、明日香の戦うための在り方は気にくわないものそのものだから。
けれど退くことはできない。
明日香は再び剣を構えた。
ラーマを下したルキウスも、ようやくの戦いの機をここで終わらすつもりはないのだろう。見下したような笑みを変えずに大剣をアルトゥールスへと向ける。
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目の前で繰り広げられているのはまさしく英雄譚の再現なのだろう。
明日香の動きは雫たち魔法師から見ても、魔法剣士であるエリカから見ても戦えない状態には思えなかった。
奔る剣閃は迅雷が如く速さと鋭さを持ち、鋼鉄の鎧はおろか現代の機械兵器ですらも瞬きの間に残骸へと屠ることだろう。
在りし日の地にて、魔獣を屠り、竜を墜とし、巨人を討った伝説の英雄の戦い。
剣が振るわれるごとに裂かれた空気が周囲の建物を斬り裂き、打ち合うごとに大地に亀裂が入る。
ある時は剣をもって捌き、体術をもって躱す。
凄まじい。
国際会議場の前で戦っていた時よりも、ずっとずっと苛烈な戦い、人知を超えた動き。けれども雫は不安ともつかない感覚に押しつぶされそうだった。
人の身を超えた動き。人の域を超えた力。
それはまるで彼が人ではないことの証明のようではないか。
音速を超える打ち合いが十合は続いた。
もとより全開で魔力を回している明日香に余裕などなく、魔術回路も
その軋みが一瞬の遅滞を招き、それは剣帝にとっての隙となった。
眼下を見下ろし駆けあがってくるルキウスを迎撃しようと構えるも、それよりも速く上をとったルキウスによってベクトルを反転倍化させられたかのように今度は地に叩き落された。
「がっ! ……ぁぐ。く…………」
明暗は分かたれた。
赤き竜は地に堕ち、高層ビルの屋上には
それが現代に現れた英雄同士の戦いの勝敗をそのまま表していた。
「決着の刻だな、アルトゥールス」
ルキウス・ヒベリウスとてラーマの宝具を受けての連戦だ。無傷ではありえない。聖剣の斬撃を受けた左腕は半ば炭化しており、鎧にも無数の損傷を刻み込まれている。
赤い髪の下からは
「スワシィにおいて貴様は
かつてブリテンの王であった“彼”は、彼の国への侵略を試みていた大陸の覇者、ルキウス・ヒベリウスと戦った。
その時、“彼”はルキウスを打倒し、国を救った。
神秘の廃退とともに荒廃し窮状深めていく彼の国において、大陸の皇国を打ち破った奇跡の王のもたらした勝利は民を慰めた。
それが滅びゆく一時の平穏であろうとも、たしかに民草は希望をそこに見た。
だからこそ、世界に在り得ざる英霊たるルキウスは、ここで“彼”を滅ぼす。その意味するところを成すために──────
皇帝剣フロレントを掲げたルキウスを銃撃が襲った。魔法の障壁であろうと貫通するハイパワーライフル。
だけではなく殺傷性ある魔法も放たれルキウスを撃った。
高層ビルの屋上に立つルキウスに向かったそれらは、さらにその上空からのもの。
「あれは、独立魔装大隊の魔法師か!」
その正体を克人が看破した。
今、達也が身に着けている最先端の技術の粋を集めて作られた現代における魔法の鎧。飛行魔法を備えたムーバルスーツ。
それを身につけているのは魔法装備を主装備とした実験的旅団であり、達也を“大黒特尉”として戦場に召喚しようとした国防陸軍第101旅団の中でも、風間少佐が率いる独立魔装大隊だ。
最先端魔法である飛行魔法を実践投入している彼らの移動力と奇襲力は、ゲリラはびこるこの戦場において大きな力を発揮していた。
達也という切り札が、対サーヴァント戦というイレギュラーによって足止めを受けているにもかかわらず、戦線を維持し、近隣の駐屯地から援軍が来るまで持ちこたえることができたのは、彼らがこのゲリラ戦の最初期から防衛線に飛び回っていたおかげだ。
暴れまわっていた白猿には魔法の効きにくいという不利はあったが、想定されていた以上ではなく、銃火器を併用することと、白猿たちが手の出せない飛行というメリットを最大限に生かして戦うことが出来ていた。
本来であれば達也もそこに合流する予定ではあったが、彼はサーヴァントの強大な気配を、深雪の危機として知覚したため合流は極短い時間となってしまった。
それでもこの戦場において絶大な力を発揮したのは軍人として、兵器としての魔法師の実験部隊としての面目躍如といったところか。
この戦場に駆け付けたのも、切り札である達也がサーヴァント戦にとられていることを憂慮したのか、その援護のためか。それとも魔法協会支部という街中の重要拠点前で激戦が繰り広げられていることの事態を重く見たのか。
いずれにしても、彼らはまだサーヴァントという強大な神秘の力を直には知らなかった。
情報だけなら共有されてはいたが、サーヴァントと同系統の魔術によって生み出された使い魔を相手に、想定内の戦闘ができていたがための錯覚。
「なっ! 目標に効果ありません! 効果ありません!!」
「くっ、魔法も銃火器も防がれている!? いや、なんなんだアレは!?」
魔法師の攻撃は、魔法も物理兵器もルキウスに影響を及ぼすことはない。
まるで幻を相手に吠えたてているかのような無力。
これが魔法障壁などによって防がれているというのであれば、まだしも希望がもてただろう。けれども軍属魔法師たちが初めて遭遇した正真正銘の、一級品のサーヴァントという存在には、自分たちの為す行為のすべてが無意味だと、眼前の光景とともに、その存在感によって知らしめられた。
脳による理解ではない。
魂の根幹、隔絶した霊格の違いによって、生物の本能として刻まれたかのように悟ってしまったのだ。
ルキウスにとって自身に何ら効果のない魔弾をぶつけようと足掻く有象無象など、眼中になかった。平時であれば、あるいは戦場にあっても、王威を理解することのできない蠅蚊そのもの。たかってくることに煩わしさを覚え、ここに家臣がいれば、意を汲ませて散らさせることくらいは行うかもしれないが、皇帝自らが手を振るうまでもない。
まして希求した闘いの決着を眼前にした今ではなおさらだ。
剣帝がその手にある皇帝剣を掲げるのはたかる蠅蚊を追い散らすためではない。
彼らは光に焦がれて焼かれるのみ。
「
刀身に咲き乱れる百合の紋様が魔力の帯びて炯々と輝き、赤雷を放つ。神威示す皇帝の赤雷はその余波だけで空を飛ぶ魔法師たちを撃ち落とした。
それは皇帝自身にとっては歯牙にもかけない些事にすぎず、ゆえに魔法師たちは辛うじてギリギリ即死しないレベルの再起不能に近い重傷で済んだ。無論その状態で飛行魔法を継続することなどできはせず、飛行魔法のデバイスそのものも消し飛ばされていた。
「いかん!」
落下する魔法師たちは咄嗟に克人が大部分を、零れ落ちた者たちを深雪がフォローして墜落死は避けられた。
──くっ! 彼らを救うことはできるが……このままではっ! ──
迫り寄る死神の鎌は達也が続けざまに放った再成の魔法によって情報回帰することで肉体的損傷はなかったことになった。
けれどもあくまでそれは致死でなければの話だ。
今のは彼らにとっては領域の殲滅魔法に等しい攻撃範囲と威力であったが、剣を振り下ろしてもいない敵にしてみればただの余波でしかない。
その目的は唯一人。
そして繰り出す一撃によって蠅蚊がいくら巻き添えになり阿鼻叫喚の地獄が召喚されようとも知ったことではない。
放たれた赤雷は先ほど魔法師たちを掠った程度のものではない。
明確なる皇帝の意志により撃ち落とされる神威。
頭上より放たれた赤雷の鮮光が、皇帝の威の及ぶ範囲に居たという理由から克人たちを呑み込んだ。
直撃すればあらゆる命を絶つであろう赤雷の迫る凶悪な輝きに、雫は身をこわばらせて瞼をぎゅっと閉じた。
彼女だけではなくほのかや真由美ですらも明確な死を予感した。
克人は魔法障壁をもって抗おうとして、けれども赤雷は容易く障壁を粉砕して微かにも衰えることはない。
再成と分解に特化した異能者である達也には防御の力はない。
攻撃をうけたのちに再成によって修復するか、敵の攻撃に先んじて敵や攻撃そのものを分解するのが彼にとっての防御手段。
だが敵の神秘は強大で
神秘絶えた現代において、魔法師は辛うじて神秘へと繋がりをもつ人種だ。
だからこそわかる。絶対的な死の具現。
それを前にして、けれども皇帝の神威は少女たちを焼きはしなかった。
赤雷の輝きとは異なる黄金の輝きが少女たちを守った。
おそるおそる雫が目を開くと、傷だらけの明日香が輝きを強める剣を眼前に掲げて、光の壁で赤雷を押し留めていた。
「ッッ!!」
「聖剣の防御能力────いや、あれはまさか!」
聖剣の力の発露による魔力放射を盾のようにして防ぐ。
ルキウスの魔剣発動とそれにより雫たちが巻き込まれることを察知して彼女たちを守ろうとしたのだが、それだけでは防ぎきれないのは、聖剣を掲げる明日香自身が分かっていた。
赤雷が徐々に聖剣の魔力を透徹し、明日香の肉体にある血を沸騰させようと熱を伝えてくる。
半ば折れている左腕を無理やり持ち上げ、聖剣の柄を握った。
聖剣を封印する
明日香の魔力量は元々デミ・サーヴァントに適合できるほどに大きかったが、実際にデミ・サーヴァントとなって以降は規格外のものとなった。
それでも戦いの中でこれほど長時間にわたり風王結界を解除しているのは明らかに限界を超えている。まして霊基の再臨まで行ったのだ。
霊基の損傷が肉体の損傷とは一致しないとはいえ、達也に修復されたのは僥倖だった。
戦闘には直接影響しないとはいえ、魔力を生み出す器が肉体なのだから、それが一時のこととはいえ修復されたことはわずかなりとも明日香の魔力を保たせることに繋がった。
ただ、残存魔力では賭けになる。賭けというのもおこがましい自殺行為。
ただ、それでも──────―
「
「宝具の真名解放!!? よせっ、明日香ッッ!!!」
残された最後の魔力を全力で聖剣へと託す。
ケイの制止を叫ぶ声が聞こえる。
それは遠く、か細い朧の彼方に去っていくかのようで────いや、掻き消えようとしているのは明日香自身の魂か精神であろう。
────────在りし日ノ記憶ヲ見タ。
黄金の陽射しとともに国を出航した船は、血に煙る夕焼けとともに迎えられた。
袂を分かったにも関わらず、駆けつけてくれることを約した友を待たず。
幼き頃を共に育った義兄は、「それ見たことか」と毒づくように吐き捨てた。
──お前みたいなバカがいくら面倒みたって、連中はやりたいようにやって、勝手気ままに生きていくもんだ。やりたいなら〇〇〇〇〇〇にでもやらせてやりゃあいい。お前がケツを拭う必要なんざないだろ──
いツだっタかアの人はソう言ッて、歩みヲ止めサせよウとシてイた。
そノ通りダ。
歩ミを止メてシマえバ楽ニなル。
コンな思イをナゼジ分がすル必要ガあル?
コのテにあルチカラも、ナすべきネがイも、自ブンのもノナンてナにも無イ。
──貴様の愛する全てを俺は根絶やしにする。人も、国も、世界であってもだ! 何も要らない。王の座などどうでもいい! 俺は、ボクは、ワタシハ! 貴様が絶望しさえすればそれでいい。貴方の絶望に歪む顔をこそ! 私は愛そう! ア●●ー!!!!! ────
ノゾムママニスレバイイ。
コワレテシマエバイイ。
スベテハオワッタコトダ。
エイコウノクニハホウカイシ、ヒトビトハジダイノナミニキエ、ミライノヒカリハ────────
「明日香!!!」
声ガ、聞こエる。
圧し潰されて消えてしまいそうだった
その声が力を取り戻させる。
両手で握るのは黄金の剣。
頭上で輝くは赤雷纏う古の皇帝。
「そうだ! それでこそだ!! 赤き竜! 聖剣使い!! 魔剣──―限定解除!!!」
背に負うは
問い掛けるは十三の誇りの在り方、古く偉大な騎士たちの願いの形。
星の聖剣は、人の世にあってただひとりの英雄のみが振るうにはあまりにも強大すぎる力。
世界のテクスチャーすらも斬り裂きかねない神造兵装。
星の外敵を両断せしめる剣。
世界を救うために振るわれるべき最強の剣は、個人が手にする武装としてはあまりに強力に過ぎる。
だからこそ、古き国の騎士王とその配下たる十二の騎士たちは厳格な法を聖剣そのものに定め、施したという。
それこそ、聖剣の真なる刀身を覆い隠す第二の鞘。
複数の誇りと使命を成し遂げられるであろう事態でのみ、聖剣は解放される。
騎士王と十二の騎士たちが地上より消え去っても、この拘束は永遠に働き、現世に騎士たちが存在していなくとも、
輝きは四度。
議決を得るための半数どころか三分の一にも満たない票数。
“彼ら”の王ではない明日香には、“彼ら”がどのような祈りを誇りの形としたのか、その全てを知りはしない。
ただ、明日香は“彼”からこの
彼が果たさんとする願いを果たすために。
ゆえにこそ──────
「是は────世界を救うための戦いである! 承認せよ!!!」
その祈りの形に応えて、明日香の体を光が覆う。
未だ確かならざりし救世の光。
全ては遠き理想郷を求めて。
──「承認────―
寄り添う女魔術師の声が聞こえた。
輝きがまた一つ。
手に在る聖剣が露わになり、その真なる姿の一端が開放される。
明日香は聖剣の真なる名を叫ぶと同時に、黄金の剣を天に目掛けて振り上げた。
「