Fate/ School magics ~蒼銀の騎士~ 作:バルボロッサ
銀の鎧を纏う蒼の騎士。不可視の武器を握りしめ、疾風とともに現れたその姿は、泡沫に消えようとする記憶にあって、それでも色鮮やかさを取り戻して見えた。
「貴方、は…………」
いつかと同じ。倒れ伏す地面から呆然として見上げるも、やはりフードに隠された顔は見えない。
けれども間違いなくこの騎士は救い手。
理解不能の超常を相手に、雫を護ってくれた
「きゃぁ!」
「ほのか! エイミィ!」「!」
忘我は一瞬だった。友の悲鳴に雫は意識を回帰させた。同時に現れた騎士の男は、右手に持つ見えない何かを振りかぶり、高速の連撃を放った。
途端、ほのかとエイミィに襲いかかっていた赤い骨人形たちはバラバラに砕けて崩れ落ちる。
「な、なに……?」
サイオンノイズの苦痛と異形の骨から解放されたほのかとエイミィは唖然としたまま雫と、その傍らに立つ騎士然とした男に目をやった。
この自体の急転についていけない二人の口から呆然とした声が漏れ、雫は騎士の男に視線を戻そうとした。
「むっ!」
「え、きゃぁ!!!」
その瞬間、傍らで立っていたはずの騎士の男が雫の眼前に迫っており、抵抗する間もなくその体が片手で抱き寄せられて悲鳴が漏れた。
「ヒャッホゥぅ!!!!」
傷を負った悪魔じみた男の襲撃。男は片手に棘々しい大きな鋏のような形状をした凶器を振りかぶって蒼銀の騎士と雫に迫っており、寸前で気づいた彼が雫を左手で抱き寄せるとともに、右手に持つ不可視の武器で迎撃したのだ。
片手で振るわれ、交わる斬撃。
衝撃に目をつぶる雫だが、予想していたほどに衝撃はなく、再び流れる風を感じ、一拍遅れて着地したかのような衝撃を感じて目を開けた。
「あ……」
「………………」
武器を打ち合わせた反動を利用したのか、蒼銀の騎士は雫を片手で抱き寄せた状態で悪魔じみた男から距離をとっていた。先程の遅れてきた軽い衝撃は文字通り着地したものだったのだろう。二人はほのかとエイミィの近くに移動していた。
同時に、雫を片手に抱いているために、武器は片手で振るわれて迎撃したはずなのに、襲いかかってきた男は二人以上に吹き飛ばされて体勢を整えていた。
蒼銀の騎士の腕がそっと雫の体を地面に下ろす。
「雫!」
「ほのか! エイミィ。怪我は――――」
解放された雫にほのかとエイミィが駆け寄り、雫も二人の体にさっと目を走らせて大きな怪我が無いことを確認した。
「うふふ。うふふふふ。見つけた、見つけたぁ!!」
無事を喜ぶにはまだ早く、ハッとして視線を向け直したのは、悪魔を名乗る男の理性の箍の外れたようなテンションの声が響いたからだ。
「な、なによアイツ!?」「ヒッ!」
改めて襲撃してきた男を見ると、言動に沿うように狂気を感じさせる姿をしていた。
白粉を塗りたくったかのように真っ白な肌。ピエロのような化粧。身に纏う衣装は毒々しい紫と赤を基調にしており、インナーは体にピッタリと張り付いている。
怪人と、そう言っていい容貌に思わず悲鳴を上げるエイミィとほのか。
「…………」
対してフードで顔を隠している蒼銀の騎士は、雫たちから距離をとるようにして前に数歩足を進め、そして見えない武器を構えた。
見えない武器を携える騎士と、彼を見て見つけたと叫んだ怪人。
――見つけた……? アレは、あの人は、この人を探していた……?――
雫は蒼銀の騎士の背を見つめる。
無言で構えるその後姿は、彼女たちに「下がっているように」と告げているようであり、敢然として貴婦人を護る騎士であった。
右足を一歩引き、見えない武器を掴む諸手を右下段に下げた構え。
その構えは見る者に彼が剣を使う者――剣士であることを告げていた。
「ケヒヒヒヒ」
鋏のような武器を持つ怪人は、ベロリとその刃先に舌を滑らせ、隙きを見せる。騎士はその誘いにはのらず、機が充溢するのを耐えている。
異形の怪物から解放されたとはいえ、ほのかたちはまだ危地から逃れたわけではない。見知らぬ二人の超常者の間に満ちるプレッシャーに冷たい汗が背中を流れる。
蒼銀の騎士と悪魔を名乗る男。先程の撃ち合いでおおよその力量差は互いに掴んでいた。剣を振るう技量、接近戦の戦闘力では圧倒的に騎士の方が上回る。加えて先ほどの奇襲先制は皮一枚の差で回避されはしたものの傷を負わせている。
背後に三人の護る相手がいたとしても、一人の敵を後ろに通さないだけの覚悟と自身はあった。
だが膠着している。
この悪魔じみた男――明らかにサーヴァントの気配を発している男は、間違いなく三騎士ではないと直感しているからだ。
アサシンかキャスターか。あるいは狂気じみた言動からはバーサーカーという可能性もある。
自身の耐魔力があればアサシンやキャスターの宝具であっても凌ぐことは十分に可能かもしれないが、後ろの三人の少女たちは別だ。それに効果次第では自身でも危ういかもしれない。
先の先を制して斬り込むべきか。
一人であればそれでもよかった。だが、今この場で優先すべきは、このサーヴァントを打倒することよりも、窮地に陥った彼女たちを救うこと。
であれば確実に少女たちを護らなければならなかった。
膠着は緊張を高める。
その膠着を崩すなにか――介入の声は突然に訪れた。
「何をしているのです!」
平時であれば聞き惚れるような声は、凍てつくような険を孕んでおり、誰であろうとその威に従うだろう。雫やほのかも思わず振り向いた。
そして騎士と悪魔の二人は振り向く――などということはしなかった。
その介入者が魔法師であったとしても、超常の存在たる彼らにはなんの障害にもなりはしないのだから。
ただ二人は声を合図にして地を蹴り、互いに突貫し、交錯。
見えざる剣と狂気の大鋏が刹那に重なり、一方に斬撃を刻みつけた。
「……………」
「………けひ」
結果、悪魔を名乗る怪人は新たに傷をおって胸元から血を吹き出した。
しかし致命傷とはならなかった。
「ッッ」
「ヒハハハハハハハ!!!!」
一瞬の遅滞の後に歪な笑みを浮かべた怪人は地面を蹴って跳び上がり、ビルの壁を蹴って昇っていった。
フードを被った蒼銀の騎士は、傷こそおっていないが、逃走を図った男を見上げ、すぐさま追跡するかを一瞬迷い、そして雫たちへと視線を移した。
悪魔を名乗る怪人が傷を負って去り、残されたのは正体不明の蒼銀の騎士。その顔は深く被られたフードの奥にあってよく見えない。
「あ、み、深雪……」
ほのかが夢見心地に虚脱したかのようにやってきた少女の名を口にした。
その名前を聞いて、雫は逆に現実に回帰したような心地になった。
掴もうとすると消えてしまう泡沫の夢。そこで見た蒼銀の騎士。それが目の前にいて、再び雫の危地を救ってくれたのだ。
夢と現の境があやふやになっても無理はあるまい。
だが深雪という確かに日常を共に過ごし、先程の非日常の危地に迷い込まなかった既知の声は、雫が確かに現実を目にしていることを教えてくれた。
そう。夢幻の中に影を求めるかのような存在であった騎士が、実際にいるのだということも現実なのだと教えてくれた。
一方で深雪にとって状況を咄嗟に把握するのは難しかった。
土埃に汚れた制服やほのかたちの様子から、明らかに乱暴を受けようとしていた形跡は見られるが、それが先程逃亡したピエロのような怪人と目の前の鎧の男。どちらによるものなのかは一瞥では分からない。
一見すると先程の怪人のほうが悪者に見えるが、だからといってこの眼の前の正体不明の鎧の男が善人かといえば、咄嗟には判断がつきかねる。
深く被られたフードがために、その顔や表情を伺うこともできないのはその逡巡を深める一因だ。
「…………」
「あっ!」
逡巡をよそに、蒼銀の騎士は少女たちの様子を確認すると、先程逃亡した怪人が消えた上空へと視線を向け、姿が消えたかのような速度で跳び上がった。
先程の男と同様にビル壁を蹴って三角飛びを重ね、飛ぶようにして上空へと姿を消した。
――あの姿……あれは……“彼”は……――
咄嗟に制止させる魔法を放つこともできた。
それが通用したかどうかはともかく、あるいは深雪の干渉強度をもってすれば通用したのかもしれないが。
だが攻撃を加えてもいいものかという逡巡がCADを操作する手を遅らせた。
どれほどCADからの起動式の読み込みが早く、魔法発動速度に優れていようとも、CADを操作しなければ明確な魔法式は放てない。
それに。“可能性”は兄から示唆されていた。
2年前の事件で誘拐された十師族の魔法師の子供たちを救出した魔術師と騎士。あれがそうなのだと、直感できたのは漂う気配が只者ではなかったからというのもある。
フードに隠されて顔は見えなかったが、背格好は紛れもなく同一のものであったというのも一つだ。
鎧の男が先程していたように、深雪もまた逃亡した彼を追いかけるように視線だけをビルの上へと向けた。
✡ ✡ ✡
「…………参ったな」
ビルの屋上へと跳び上がり、そしてビルからビルへと跳び移っていた蒼銀の騎士は、先程の遭遇を思い返していた。
すでに彼女たちから追跡されるような距離ではないが、目的のサーヴァントは完全に見失ってしまっている。
溜息をつくと、見計らっていたかのように端末が着信を告げた。
「ケイか」
<その様子だとちゃんと遭遇したみたいだね>
着信の相手はともに捜索活動を行うはずの、けれども別行動をとった友のもの。
着信のタイミングといい、その内容といい、まるで見ていたかのように彼の状況を把握していた。
「……取り逃がした」
<そうか。けど、相手の情報は得られたんだろう?>
彼が捜索していたのはあの敵――この時代に現れるはずのない
外見から真名を看破することはできないし、今回の遭遇では戦闘時間は僅かで宝具を使うこともなかった。
けれども彼らには手札があった。
「ああ。霊基のパターンを照合すれば真名も分かるはずだ」
過去に召喚された際の霊基グラフ。既にカルデアとしての魔術の多くを失ってはいても、科学的に記録されているそれらは“藤丸”の屋敷に保管されている。
“藤丸”のマスターに召喚された記録がない、という可能性も無論あるが、“藤丸”に残された霊基グラフのパターンは膨大だ。
彼らの先祖はそれだけ多くの英霊を召喚し、友誼を結び、あるいは主従となり、グランドオーダーを成し遂げた。
その時のサーヴァントとあのサーヴァントは別の存在であり記憶の共有もされてはいないだろうが、真名が分かれば対策は立てられる。
それに今回の遭遇戦は急なことではあったが突発的なものではなかった。
あの路地裏でサーヴァントが人を襲うことが予期されていた。
彼が溜息をつきたくなったのは、あの場で襲われていた娘たちが知っている者たちであったからだ。
「けれどケイ。あの場に居るのが彼女たちだとは聞いていなかったぞ」
<おや? そうだったかな。でも間に合ったんだろう。なら良かったじゃないか>
反応からすると、圭はあの場で襲われるのが雫やほのかたちであることまで視ていたのだろう。
流石に誘き出すために敢えて誘導したとまでは思いたくはないが、なんらかの思惑から彼に被害者の情報を伝えなかったというのは分かる。
――もっとも、本来あの場で襲われることになったのは三人ではなく四人になるところであったというのは、明日香には知る由のないことであったが……。
「それにしても雫の反応。ケイ。前の事件の時の記憶は本当にちゃんと処理したのか?」
気になるのは、北山雫の反応。入学式で初めて会った時からそうだが、彼女には無い筈の記憶がある節があった。
そう。二年前、明日香が打倒したライダーとの戦闘場面に巻き込まれたという記憶が。
あの事件の後、関係者全員の記憶を改竄したわけではなかった。
事件の被害者の中には日本の魔法師の頂点に君臨している十師族の子女も含まれており、事件解決のために彼らも全力を挙げていた。そのため十師族の関係者の記憶を改竄するのは流石に問題が大きかったからだ。
だが魔法師ではあっても一般人であった北山雫やほかの多くの少女たちの記憶に関しては、事件を解決して彼女たちを救出したのは十師族だというように暗示をかけておいたはずなのだ。
<それはもう。けれど当時の僕もまだまだ未熟だったからね。それにほら。雫ちゃんは当時からかなり強い魔法師の素質を持っていたから。多少暗示の効きは緩かったかもしれないね>
だが、故意かどうかはともかくその意図は分からないが、どうやら雫は圭の暗示の綻びから記憶を呼び覚ましつつあるらしい。
<言っておくけど故意に記憶を残したわけじゃないよ。彼女が僕の暗示を破ったのだとしたら、それは君との出会いがよほど鮮烈だったんだろうね>
――――思うところはある。
逆巻く風が蒼銀の騎士のフードを取り去った。
そこにあるのは眩い金紗の髪に宝玉のような碧眼。
<間違いなくここが特異点になる起点だ。明日香。僕たちが関わろうと関わるまいと、すでにこの事象は特異点になる。だからこそ、僕たちは魔法師たちと関わりを持つべきなんだ>
彼こそは騎士王。
人理を破却せんとする獣を刈るために時代を超え、世界を超え、そして今またこの世界に人の身を借りて現界した偉大なりし
その真名を………………
✡ ✡ ✡
翌朝。考えるべきはいくらでもあった。
果たすべき使命について。友であり身内である圭の言った言葉の意味。自らに宿る英霊のこと。昨日戦ったサーヴァントについて。この時代が特異点になるということについて……人理修復について。
けれども目下やることは日常通り学校へと行くこと。
友人や“彼”が願うように日常を過ごす必要もあることは明日香も分かっている。
彼が生まれたから“彼の英霊”が憑依したのか。それとも“彼”が憑依するために明日香が生まれたのか。因果は複雑で答えはでない。
ただ彼に望まれているのは“藤丸”の使命だ。それは圭とて同じ。
その圭がこの魔法学校で日常を送るべきだと言うのであれば…………
「やあ。おはよう、雫、ほのか」
普通の高校生のような日常を送るのも悪くはないのかもしれない。
「あ、おはよう、獅子刧君」
「………………」
登校した明日香は自身の席の前に座る雫とその隣でおしゃべりしているほのかへと挨拶をした。
昨日襲われた影響が残ってはいないかと軽く観察してみるが、どうやらそれらしい徴候や怪我が残っている様子もない。
おそらくやってきた司波さんがうまくなだめてくれたのだろう。
挨拶を返してくればほのかに軽く手を挙げ、無言で見上げてくる雫に少し訝しみながらも横を通り過ぎて自分の席へと座ろうとした。
後ろの席の司波さんはまだ来ていないようで席は空いている。
「……明日香」
「ん?」
通り過ぎようとした明日香は、不意に立ち上がった雫に詰め寄られ、その顔を両手で挟み込まれた。
「……………」
――やっぱり。黒……だよね――
無言で明日香に詰め寄った雫は、いきなり彼の顔を両手で触れて固定し、そして覗き込むようにして明日香の瞳を確認した。
その色は黒。純黒というにはやや薄みがかって見えるが、どう見ても碧眼には見えない。
髪の色だってそうだ。薄っすらと色づく記憶の中で、あの騎士は鮮やかな金紗の髪をしていた。フードを被っていたから髪型は分からないが、少なくとも明日香のくすんだ金髪よりも明るい色をしていた……はずだ。
突然顔を両手で挟み込まれた明日香は流石に驚きを隠せなかった。
北山雫は文句なく美少女だ。無感情的でやや幼さを残す容姿をしてはいるが、優秀な魔法師の例にもれず非常に整った容姿をしている。
同じクラスに司波深雪という絶世の美少女がいるために落ち着いてはいるが、普通の学校ならば飛び抜けた美少女と評されるところだろう。
そんな少女に吐息のかかるほどの至近距離から瞳を覗き込まれれば、普通の男子高校生ならば硬直もので、明日香であっても戸惑いは隠せなかった。
「え~っと、どうしたんだい、雫?」
それでもなんとか問いかけた明日香は、両頬に添えられた雫の掌にそっと両手を重ねてやんわりと離れさそうと試みた。
だがそれは一拍遅かった。
「あら? おはよう、雫。獅子刧くん。えっと、朝から大胆ね……?」
それは傍から見れば大層大胆な行為をしているようにも見えただろう。
背丈の低い少女が背伸びがちになりながら男子の頬に両手を当て、自らの顔を至近距離に近づけている。見ようによってはキスをしようとしているようにも見えて、実際間近にいたほのかは顔を真っ赤にして口元に手を当てて絶句している。
そして不幸なことに声をかけざるをえなかったのは、彼らの真後ろの席に位置していた深雪だ。
流石に二人は慌てて飛び退るといった無様は見せず、雫がすっと両手を離して自らの席に戻ると明日香は流石に苦笑のようになりならがも微笑みを浮かべてそれを見送った。
気づけばほのかだけでなく周囲のクラスメイトたちも顔を赤くしてドギマギしており、明日香がちらりと周囲を伺うと慌てて顔を背けて中断していたらしい会話を各々わざとらしく再開した。
深雪は流石に礼節ある淑女らしい振る舞いで、固まっているほのかに下世話なものではない上品な微笑みを浮かべてから明日香の前を通って自らの席へと向かった。
「どうしたんだい、雫?」
深雪が自分の席の後ろにある彼女の自席に座ったのを見計らって、明日香は先程の行為の理由を雫に尋ねた。
無論のこと明日香は先程のアレがキスをせがんでの行為だとは流石に思っていない。
間近にあった雫の瞳は、そんな浮ついた熱のあるものではなく、なにかを探るようにして明日香の瞳を覗き込んでいた。
そして明日香にはそれに関する心当たりもあったからだ。
「…………明日香君。昨日は何かやってた?」
先程の行為を客観的に思い返していたわけではないだろうが、明日香の問いに雫は少しの間を置いてから問いかけ返した。
それは明日香自身、やはりと思うものであり、後ろで聞き耳をたてるでもなく聞こえてしまっていた深雪にとっても思うところある問いかけだった。
「昨日かい? 昨日は、街中で少し。探しモノがあってね。それを探していたよ」
彼女の求めている答えはなんとなく予想がついていた。
けれども明日香はあえてぼかすように、けれども偽りは交えずに答えた。
「探しモノ?」
「ああ。なんとか目星はついたけどね」
明確に答えなかったのは、アレが特別彼女を救うために行ったわけではなかったというのが一つ。
明日香にとってあの時の雫は、異常に巻き込まれた被害者でしかなく、他の誰かであっても関係なく救っただろう。
だからもしも雫が昨日のことを、そしてかつてのことに記憶を縛られるようになっているのだとしたら、それは錯覚でしかない。
それにあのことを話し出せばサーヴァントのことも話すことに繋がりかねず、話せば完全に巻き込むことにも繋がるだろう。飛躍しすぎかもしれないが、それでも明日香は無関係な魔法師の少女をサーヴァントなどという異常に関わらせたくはなかった。