「らちが明かないぞこれ!」
球子のそんな叫びが聞こえる。
倒しても倒しても、奥の方からワラワラと湧いて出て来て、一向に数が減らない。
途中、カタい奴や超巨大で、丸で山みたいな奴、倒した瞬間爆発する奴と、面倒な敵のオンパレードで、少しずつ勇者達は押されていった。
「(だぁぁぁぁあああああああ!数が多い!雑魚でもこれは面倒臭い!)」
棗とペアで、バーテックスを倒していくが、数が本当に減っていっているのか疑わしく感じてくる。
威力が高く、攻撃範囲が広い特殊技を使っていくが、いっこうに数が減らない。
俺が初めてこの世界に来たとき倒した、太陽のようなバーテックスも出てきた。・・・・・・わんさかと。
「(お前らボスじゃなかったのん?何でゴキブリもビックリな数出てきてんだよチクショー!)」
迎撃していく。ボスクラスの強さの奴らがズンドコやってくるからこちらの消耗が激しい。
何人かもう肩で息をしている。
と、ここで。
ボスクラスを超える、ラスボスクラスの化け物が来た。
それは、青いオーラを撒き散らしながら、周囲のバーテックスを巻き込みつつ俺達に攻撃を仕掛けてきた。
危険だ。
そう思った時には、もう身体が動いていた。
大きく旋回しつつ、避ける。
他の奴らも、思い思いに避けたようだ。だが、
ズガァアアアアアアン!
「きゃぁぁあああああああああ!?」
「(うおぉおおおおおおおおお!?)」
その攻撃が地面に当たった、その時の衝撃波だけで、俺達は紙のように吹き飛ばされてしまった。
「(ヤバい・・・・・・あのバーテックスはヤバい!)」
バーテックスが攻撃したところは、深い地割れがパックリと出来上がっていた。
周囲の樹海もボロボロである。
そして、そんな馬鹿げた攻撃をしてきたバーテックスは、まるで古事記に出て来る“十束剣“のような姿をしていた。
約五十メートルはあるだろうか?そのデカい身体に付いてる刀身を、回転させて振り下ろしてきたのだ。
そして、その余波だけでこの有様だ。直撃したら・・・・・・そう考えるだけで、鳥肌が立ってくる。
「硬い・・・・・・!?攻撃が、通らない・・・・・・!」
何処からかそんな声が聞こえる。
動作がが亀よりも遅いので的なのだが、それを補って余りある攻撃力と防御力・・・・・・そして、周囲の雑魚。
「(俺の最大級の“きあいだま“、くらいやがれぇーーーーーー!)」
“はどうだん“を連発して、周囲の雑魚を一掃しつつ、刀野郎に気合いだけでなく波導も余剰に突っ込んだ“きあいだま“を一撃食らわせる。
だが、奴は無傷だった。
・・・・・・みてくれは鋼タイプ単体っぽいのだが、実はフェアリータイプが混じっていたりするのだろうか。
それからも、周囲のバーテックスの数を減らしながら、刀野郎に攻撃するのだが、全然通らない。
格闘タイプの技では歯が立たない(無傷だった)為、鋼タイプや炎タイプ、そのほか諸々のタイプの技でどうにかしているのだが、それでもかすり傷が精一杯だった。
「(“ブレイズキック“!)」
この技ももう何発目だろうか。
百はもう超えている気がするな・・・・・・。
だが、それでも奴は倒れる気配がない。
周囲の雑魚も、数こそ、大規模な特殊技の連発で最初よりかは大分減ったが、それでも六桁はまだいる。
勇者の面々は、もう満身創痍と言った感じで、限界を迎えている者もいた。
「おい、大丈夫かあんず!おい!?」
「・・・・・・大丈夫、まだ・・・・・・!」
「あれ?身体が、動かないや・・・・・・なんで?」
「高嶋さん!?」
「わっしー!大丈夫!?わっしー!ねぇ!」
「お姉ちゃん、無理しないで!」
「まだまだ・・・・・・行ける!」
そうなった面子に“いやしのはどう“を使い回復をしつつ、俺はバーテックス共を叩いていく。
こちらの消耗が激し過ぎる。
半数以上の勇者がもう戦える状態じゃあない。
・・・・・・そんな時だ。
「(おいおい・・・・・・なんだありゃ)」
刀野郎が刀身を上に向けると、荒ぶる波のようにうねりを上げる、青いオーラのようなものが周囲に発生する。そしてその青いオーラがだんだん刀野郎の刀身に集まっていく。
数秒後、百メートルは裕に超えているであろう青いオーラで出来た刀身が形成されていた。
そして、その巨大な刀がーーーーーー
「(デカい攻撃が来る・・・・・・!避けろぉぉぉぉぉ!)」
ーーーーーー俺達に向かって、周囲の空間を切り裂きながら、自由落下するように振り下ろされた。
*
目を覚ます。
どうやら、気絶していたらしい。
・・・・・・攻撃をくらって、確か・・・・・・!
軋みを上げる身体に根性という鞭を打って、無理矢理立ち上がる。
見えた景色は地獄だった。
樹海は枯れ果て、灰色に染まり。神樹に大小様々なバーテックスが群がり、攻撃を仕掛けて、神樹のその神々しい輝きは失われつつあった。
近くには、あの刀野郎も・・・・・・!
マズイ。
確か、神樹が死ねばこの世界の終わりだと聞いた。
一刻も早くあのバーテックス共を蹴散らさねば・・・・・・!
「待ってくれ、ルカリオ」
「(若葉?)」
声がしたため、振り向いてみると、果たしてそこにいたのは、ボロボロで立っているのもやっとな様子の若葉だった。若葉よりも酷い状態の夏凜に肩を貸しながら、神樹の方を睨みつけている。
「あれらは私達がやるわ。あんたは・・・・・・あっちの方で寝てるみんなを、さっき回復してた技で回復させてあげて。・・・・・・お願い」
「(でもお前らボロボロで・・・・・・!)」
「なに、任せろ。私達にはこういういざという時の“切り札“があるからな」
「ええ、完成型勇者の本領ってのを見せてあげるわ」
ボロボロの状態で屈強に笑って見せる二人は、覚悟を決めている感じだった。“切り札“というものがどの程度のものなのかはわからないが、二人とも、負けるなんて事は一切思ってない様子だった。
・・・・・・ならば、その覚悟と勇気を踏みにじる真似は、しないほうが良いか。
「(回復させて、皆を少々離れたところに運んで避難させる。
それが済んだら、直ぐに行く)」
俺がそう言うと、
「じゃあ、それまでに・・・・・・」
「私達があれを倒そうじゃないか」
「(頼もしい限りだ。・・・・・・じゃあ、頼んだ)」
俺は、二人に背を向けて、皆がいる方向に向けて走り出した。
「任せろ」
「任せなさい!」
*
神樹に群がるバーテックス共を睨みつける。
さあ、ここからが正念場だ。
「さて、やるか」
「ええ」
隣に立つ夏凜に声をかける。・・・・・・私よりもボロボロなのに、私に不敵に笑って見せている。
強いな、夏凜は。
私達は自分のスマホを取り出すと、勇者アプリを開き、アプリのホーム画面にある『封』と書かれたアイコンをタッチする。
すると、『封』という文字が『開』という文字に変わる。
切り札を普段は封じている私達だが、今回に限って、一部の勇者はそれが外せるようにされているのだ。
制限時間三十分。
それ以上は、切り札は使えない。
「切り札には制限時間がある・・・・・・その時間内に片付けなければこちらの負けだ」
「上等。やってやろうじゃないの」
夏凜のその言葉に、不安なんて消し飛んでしまう。
仲間というものは素晴らしいものだと、今更ながらに実感する。
「来い・・・・・・大天狗!」
「満開!」
さあ、ここからは私達のターンだ、バーテックス!
感想その他モロモロ下さい。