現在、俺はある存在と相対している。
その龍は、それ程大きくはないが、それでも、圧倒的なプレッシャーと、存在感を放っている。
後ろにいる歌野は、汗を垂らしながら、動けずにいるようだ。
それもそうだろう。目の前にいるのは、それ程までの存在なのだから。
くうかんポケモン、パルキア。
アルセウスの分身の内の一体で、空間を司る神とも言われている、伝説のポケモンの内の一体だ。
*
数時間前。
「勇者装束直ったという事で、諏訪勇者ふっかーつ!」
「わぁ・・・・・・!すっごく綺麗」
「前に一回見た時よりも随分と華やかになってんな」
歌野が、直った勇者装束を着て、クルリと一周その場で回ってみせる。
水都は、そんな歌野を写真に収めている。
黄色なのは変わらないが、花や、花びらのような意匠がところどころにあしらわれており、とても綺麗だ。
なんでも、防御力が絶大にアップした、防御特化の装束らしい。
武器の鞭も、細部が異なっているらしく、こちらは攻撃力がかなり高くなったそうだ。
俺がこの諏訪に来て百五十日。二ヶ月弱、俺がこの地を守り続けたお陰で勇者の装束を直すだけでなく、アップグレードさせる事が出来たという事らしい。
まあ、タダで飯食わせて貰っているし、ここを守るくらいしないと割に合わない。
閑話休題。
という事で、次からは歌野が俺と戦線に立つ。
夫婦の共同作業だね!と、歌野ははしゃいでいたが、おい。俺はお前と結婚式を上げた覚えも無ければ付き合った覚えもないぞ。
というか、水都が薄暗い気を放ってるから。
おい、水都の事も構ってやれ。
この後の展開の結論を言おう。
水都に刺されそうになった。
全く、“りゅうのはどう“を包丁で真っ二つに切れる人間とか初めて見た。
*
水都を歌野と二人で落ち着かせ、水都の部屋のベッドまで運んで寝かせた後。
あの真っ白グミ化け物がワラワラと諏訪を襲ってきた。
歌野が、新しい装束のお試しが出来て良いと、俺と共に諏訪を守る結界の側まで行く。
うーん、何時も千とか普通にいるけど、今回はとりわけ数が多いな。三千くらいか?
「なあ歌野、一人千五百だ。いけるか?」
「ご褒美くれたら全部なぎ払うくらい余裕」
「じゃあ、頑張ったら何でもしてやる」
歌野は、一瞬にして俺の隣から消え、気がついた時には化け物の群れの中でばっさばっさと化け物をなぎ払っていた。
「ハッスルしすぎだろ・・・・・・」
さて、歌野に負けないように俺も突貫するか。
“りゅうのまい“を高速で積み、“ドラゴンクロー“を展開。一気に化け物の群れに上がった素早さを駆使して突貫した。
“ドラゴンクロー“を展開した両腕を振り回し、化け物を細切れにしていく。
時々、丸い円形の盾のような奴が現れるが、“ドラゴンダイブ“で突撃したら他の奴を巻き込みつつ消し飛んだ。
キリがないな。
倒しても倒しても、どんどん結界から化け物が溢れ出してくる。
アホみたいにデカい奴もワラワラよってたかって俺達二人を攻撃してくる。
受けに回ってしまった。押し切るか。
そう思い、火力の高い技を使おうとした瞬間、
俺の直感が、ここは危険だと警笛を鳴らした。
ドラゴンタイプになってから、妙に鋭くなった直感は、必ずと言っていい程良く当たる。
偶然近くにいた歌野の腕を掴み、最大速力でその場から離れた。歌野が何か言っているが、気にする暇はない。
俺達が化け物の群れから抜け出した瞬間。
俺達の背後を、紫色の光る刃が化け物を大量に巻き込みつつ上空から降り注いだ。
背筋が凍りそうになった。
元凶を確認するために、空を確認する。
・・・・・・空が、ズタズタに切り裂かれている。
何を言っているかわからないと思うが、これ以上の表現のしようがない。
空が無数の切り傷で無残にボロボロになって、空間の間のような、地味に光っている場所が見えている。
そしてそこから、一つの圧倒的な存在が俺達の目の前に降り立ち、目の前の化け物を“りゅうのはどう“でなぎ払った。
その存在は、そこに存在するだけで、常人であれば泡を食って卒倒するかもしれないようなプレッシャーを辺りにばらまきながら、俺達の方を見た。
「空間を切り裂いて出て来るとか本当にチートだな。俺も出来るけどさ・・・・・・なあ、パルキア。この世界に一体何の用だ?」
パールやプラチナに出て来る伝説のポケモン、パルキアが、空間を切り裂いてこの地に降臨した。
*
パルキアは、俺達の方をじっと見て、観察している。
俺も、生で見れたパルキアに興奮しつつ、しっかりとその目に存在を焼き付けていた。
創作でしか出会えないような存在が今目の前にいるんだ。興奮しない方がおかしい。
歌野は、俺の背中にヒシッと抱き着いて離れない。
おい、俺の方が身長低いから隠れられてないぞ。頭さえも隠れてないぞ。
パルキアは、俺達から、結界からまだわんさか湧いて出て来る化け物を見ると、腕を後方に振り上げ、肩の部分にある、真珠に似た宝玉に紫色のエネルギーを溜めはじめた。
やがてそれはパルキアの腕全体を多い、パルキアは、それを勢い良く、化け物共がわんさか出て来ている方向へ、空間を引き裂きながら進む刃を飛ばした。
“あくうせつだん“。
パルキアの専用技で、相手を空間ごと切り裂くという凶悪な効果の特殊技だ。
ふむ、まだ安心は出来ないが、どうやら今のところ、パルキアはあの化け物の敵らしい。
敵の敵は味方。加勢しよう。
いくらパルキアとはいえ、四桁の数の化け物を一体で相手取るのは難しいだろう。
「おい歌野。何時まで隠れてる。あのドラゴンは恐らく、きっと味方だ。
加勢するぞ。おら、オドオドすんな。何時までもあんなプレッシャーにビビってんじゃねぇよ」
歌野を引きはがし、背中をバシッと叩いて活を入れると、俺は“ドラゴンクロー“を展開して、化け物の群れにさっきと同じように突貫した。
「スクラップの時間だぜ!木っ端共がぁーーー!」
この日、平行世界規模で一部の空間が切り裂かれた。
パルキアの“あくうせつだん“に余裕で堪えるフェアリータイプってやっぱり可笑しいと思います。
空間切り裂くような一撃が何故効かないのでしょうか・・・・・・
不思議ですね。