毎回思うのは、人様のキャラのつかいかた。
何処までやって良いのか、設定的におかしくないかが毎回気になりますね。
皆さんどうもこんにちは。私の名前は
まだまだ駆け出しですが、実は仙人やっています。
私の師匠は邪仙で、年齢1400歳以上の超年増で、我ままで自己中で、無茶ぶりと自分の事が大好きで、善悪や良心の呵責が一切なく非道な行いを簡単に行える所謂サイコパス気質な危険人物……
ですがそれでも毎日楽しく過ごしています。
さぁ、今日も師匠とその手下のキョンシーの芳香と一緒に修業――
「あらぁ?何か今、聞こえた気がしたわねぇ~?
半人前で、仙人モドキで、下半身と脳が直結して、ドジで運が無くて、そのくせお調子者の私の弟子が何か言ったのかしら?」
うぐっ!?師匠、いつからそこに……?
「最初からだぞー!」
いでで!?噛むな噛むな!!
チャララ!ラララ!!チャラララッララ!!チャラチャラチャラ~
「はい、愛原 奏のカンタン、3分クッキング~!!」
「……何よコレ?」
エプロンを装備した、白頭の少年。
奏がまるで何処かの料理番組の様に、ポーズを付ける。
その横に立つ、比那名居 天子は不満げに眉を上げた。
「まぁまぁ、天子様。偶には料理を覚えてみるのも良いものですよ?
ほら、自分の世界が広がるというか――やってみれば、きっと面白いでしょうから。ね?」
ワガママな子供をなだめるように、奏が天子を諭す。
「はぁ、厄介事がたまってるっていうのに、家の執事はいい気な物ね?」
「こんな時だからですよ。食事はただ栄養を摂取するだけではなく、心を休める大切な時間なんですよ。
さ、今日は家庭料理の代表『肉じゃが』です――」
「先生!!早く教えてください!!」
「い、衣玖さん!?」
いつの間にか、メモを持って立っていた永江 衣玖の存在に奏がギョッとする。
「家庭料理。そう、いわば男のつかむべき三つの袋の一つ……
そして、肉じゃがは殿方に『あ、この人家庭的だな』と思わせる料理の代表各!!
そう、これは強いて言えば婚活料――ではなくて!!
に、肉じゃがが好物なんですよ?」
一瞬背中に白いドレスの様なオーラが見えた気がしたが、奏は気が付かないふりをした。程よく都合の悪いモノは見ない。都合の悪いモノは聞こえない。
見ざる言わざる聞かざる。
それが人生で大切だと、奏は知ってしまった!!
「ま、まぁ……その、やっていきましょうか?
まずは、ジャガイモ、人参の皮をむいて――」
ショリショリと、奏が野菜に手を伸ばす。
「煮えるまで、結構かかりますよね?」
衣玖が指摘すると、奏は待ってましたと言わんばかりの顔をする。
「実は煮え終わった物っていうか、完成した物がこの戸棚に――あれ?無い」
戸棚を開けた奏、そこにしまっておいたはずの肉じゃがの完成品が無い!!
「……食べました?」
「食べて無いわよ!?」
奏の疑うような視線に天子が、やや強情に否定する。
「本当ですか~?今回のは自信があった――」
「おー、この肉じゃが味が薄いぞー」
「え、そんな馬鹿な……って、あー!!」
横から聞こえてきた、声に奏が指を指しながら大声を上げる!!
その視界の先!!
そこには、一体のキョンシーがもくもくと皿に盛られていた肉じゃがを食べて居た!!
「はー、ご馳走様」
白滝をちゅるんと啜ると、行儀よく両手を合わせてごちそうさまをした。
「へー、ちゃんとご馳走様出来るキョンシーなのか……
じゃなくて!!ああもう!!天子様のお昼が!!」
困ったように奏が芳香が食べきって空っぽになった皿を見る。
その時どたどたと、誰かの足音が聞こえる。
「すいません、家の芳香来てませんか!?」
善がその姿を見せると同時に、芳香を発見する。
「おー、善。ここの料理美味しいけどなんか、味が質素だぞ」
「そんな事言うんじゃありません!!っていうか、勝手に食べちゃダメだろ!?」
善が芳香の頭をつかむと、謝らせるように頭を下げさようとする。
「ほら、ごめんなさいって――うわ、力強!?」
「下げたくない頭は下げないポリシー」
「いや、ここは下げろよ!?」
謎の芳香のポリシーを気にしながら、代わりにとばかりに善が謝る。
「全く――わっと!?」
その様子を壁にもたれてみていた天子が、急に壁が円形に消失してバランスを崩す。
そして壁の向こうに倒れ、バタバタと下半身だけが存在を主張する。
「ああ、此処にいたのね。二人とも。
さ、早く離れに戻るわよ」
天子の上から体を乗り出すのは、善の師匠。
壁に勝手に穴をあけて、二人を見つけた。
善に、芳香に、師匠。一気に騒がしくなった台所で、奏がため息を付く。
「ちょっと!!
穴から出て目を吊り上げた天子を裏目に見ながら、今日何度目に成るか分からないため息を奏は付いた。
突如空間を破って、善が来たのはいつもとは違う幻想郷の世界。
と言っても、今回落ちたのは魔法の森でのなく、妖怪の山でもなく、霧の泉でもなく、空の上に在ると言われる天界だった。
「いやー天界って平和な所ですねー」
比那名居の家の屋敷、その離れを善たち一行は宿として借りていた。
何度も言うようにここは天界。展開に来れるのは仙人の修業をこなし、十分力を付けた者が天に認められ、仙人から天人へと昇華した者のみ。
つまりここは、善や師匠にとって、先輩と言える者達の集まる場所でもあるのだ。
「桃は美味しいし空気も綺麗……天上楽土ってこんな所なんですねー」
ゴロンと離れの縁側で善が横になる。
元居た世界では冬、こちらの季節では秋らしいのだが、天界は温かく非常に過ごしやすい場所だった。
「ふぅーん?善は此処が気に入ったの?」
その様子をみて、師匠がつまらなそうにする。
芳香はいつの間にか、寝てしまったようで小さないびきが聞こえる。
「どうしたんですか?あ、元の世界に帰れるか不安なんですよね?
大丈夫ですって、私の経験上、この世界の取って私たちは異物で、元の世界に引っ張られる様に出来てるんです、そう焦る必要はないですよ」
悲しい事に、結構な回数他の世界に流れたことのある善は、経験で知っているのだ。
「ちょっと、長めのお休みって事で、楽しみましょうよ。ね?」
善がそう言って、師匠に笑いかける。
パリン!ガシャ――!
「な、なんだお前は!?急に――」
天界のとある場所、一人の天人が部屋の隅に追いつめられる。
目の前の相手は、なんの装飾も無い鉄の棒の先端を研いで刀にした様な道具を持っている。
「この場所に――腐った存在は必要ない」
「なにを――ぐあ!?」
下手人は思い切り、剣を家の住人の肩に突きさす!!
僅かに血がでて、顔を苦痛に歪ませる。
「はぁ、はぁ……なんで、こんな――」
「うるさいぞ――不純物め」
剣を突き刺したまま、男は倒れる男の腹にずぶずぶと刀身を埋めていく!!
「うが、がぁ~~~~~!!」
余りの痛みに、男が目を見開く。
「貴様に――天人を名乗る資格はない」
そう言って、男は自身を剣を振り上げた。
「ねぇ、衣玖聞いた?例の噂!!」
「例の噂?」
「俺も、知らないけど……」
天子の言葉に対して、衣玖が何のことかと、首をかしげる。
「死神が来たみたいなのよ!!死神!!」
平和過ぎて退屈なのか、天子が鼻息を荒くして説明を始める。
「ほら、あの――えっと、名前出てこない……あ、ほら天界の河の近くに住んでる新入り居たでしょ?」
「新入り?」
「ああ、彼ですね」
奏はまだ分からなかったが、衣玖は分かった様だった。
「最近――だいたい150年くらい前でしたっけ?
新しく天人に成った、人が居たんですよ」
奏より長く天界に居る衣玖が説明をしてくれる。
「それで、その新入りさんが?」
「死神と派手にやり合ってみたいなのよ。
幸い命は取られなかったんだけど、重症で今も寝込んでるらしいのよ。
なんか、騒がしいなーって、周囲の人が家を覗いたら切り傷だらけで倒れてそうよ。
それで慌てて家に入ってみたら、斬り傷だらけなのに血が一滴も出てなかったらしいわ」
少しだけ興奮したように天子が言う。
天界とは穏やかな世界、物騒な話だがこういった話は滅多に聞くことは無いのだ。
彼女が興奮するのも無理はないだろう。
「死神……?」
実際に死神を見たことのない、奏にとってはどうにも形がつかめない話だった。
「普通は、こんな事しないんだけど……
どーにもきな臭いのよね……
奏も注意しなさいよ?」
天子がそう言って、奏に注意を促した。
「はい、天子様」
「その……私だって、アンタが傷付くのはイヤなんだからね!!
高貴な天人たる私を心配させるなんて、許さないんだから!!」
天子が誤魔化す様に、奏に指を突きつけた。
その様子を衣玖は、微妙に面白くなさそうに見ていた。
比那名居家の離れ――そこに、善たち一行は泊まっていた。
「はぁー……暇ね……ん、もうすこし……上……」
「はい、師匠……」
畳に横に成った師匠が善に腰を揉ませながら、比那名居の家から勝手に持ち出してきた本を読む。
「なんと言うか、びっくりするほど馴染んるね?」
そんな二人の姿を見て、話す一人の少女。
ピンクの髪に刀から、僅かに浮かぶその姿は彼女が人間ではない事を物語っている。
彼女は、咲名千里。彼女の足元に在る同名の刀の人柱にして、人格らしい。
善としては、道具に心や人格が有るのは小傘という、前例があるためそんなには気にはしないが――
「ま、いいやー、緊張しても損でしょ?来たならゆっくり楽しまないと。
って言うかサー、なんか、元の世界の話してよ!!
あ!出来ればさっきの話の方が良いかも!!」
「そうですね……」
千里は非常に軽い性格なのか、様々な事を話してくれる。
最初は師匠も面白がって、情報を聞き出していた。
曰く彼女の持ち主、愛原 奏は人間ではなく、龍人とい非常に希少な種族であること、彼が執事として仕える比那名居 天子は主人であると同時に彼の恋人でもある事。
奏の能力は現象を操る力であり、天候まで左右してしてしまう事などが聞けた。
「っていうかー、二人は子弟なんでしょ?なんで、お揃いの指輪してるの?
さっきの話ってマジ?」
その質問に、腰を揉まれている師匠が一瞬体をこわばらせるのが分かった。
善の位置では、師匠の顔は見えないが当人は実はすごく悪い顔をしているのが分かる。
「ええ、本当ですわ。私たちは子弟であると同時に夫婦でもあるんです」
「え、えー!!夫婦!?本当に!!
えー!!だって、こっちの世界じゃ、結婚してないのよ?!」
咲名曰く、こちらの世界にも師匠はいるらしいが善はいないらしい。
いや、ひょっとしたら人里には迷い込んできた少年として、いるかもしれないが……
「うふふ、いろいろ有ったんですよ?
けど――この、ダメ亭主は……本当に!!」
ぷりぷり起こりながら、腰を揉ませている善の愚痴を離す。
曰く何時まで経っても浮気癖が抜けない。
曰く二人きりの時も名前で呼んでくれない。
曰くもっと自分に尽くすべきである。
「うわー、サイッテー」
「あ、いや……その、師匠が嫌いとか不満がある訳では……いや、あるけど……
すてふぁにぃ位は見逃して欲しいっていうか……」
女子三人集まれば姦しいなんて言うが、その実体験に善が苦笑いを浮かべる。
その時――
「あ、こ、れ……」
突如、千里が自身の体を抑える様に抱きしめた。
その表情はひどく怯えている様に見えた。
「咲名さん?」
「なんだろ……この感じ……すっごい、嫌な感じ……」
ぶるぶると震え、咲名が自身の頭を抑える。
「大丈夫ですか?」
余りにおかしい咲名の様子を心配して、善が師匠に一言言ってその場を離れた瞬間!!
――トンッ……
壁に掛けられていた、華が音もなく落ちた。
そして床に落ちる前にその華は
その一瞬後、壁が真横に切れて、崩れる。
「師匠!!」
「大丈夫、無事よ」
咄嗟に危機を察知した、師匠が善の横に立つ。
「天界はもっと、穏やかなとこだと思ってたけど……
そうでもないみたいね」
師匠、善、千里の3人の視界の先、一人の青年が剥き身の剣を持って立っていた。
薄い青い色の着物が涼し気で、だがその目だけは非常に物騒な目をしている。
「あの刀――私と同じ……ううん、違う!!
あれはもっと!!」
咲名がそう言った瞬間、男が部屋を見回した。
「ここではないか――だが、まぁいい。屋敷に向かうのみ――だ」
刀を持った腕を横に大きく振るう!!
3人はそれを避けるが、離れは動ける訳などなく――
ミシィ!!バキバキバキ、バキィ!!
凄まじい音と共に、離れは倒壊して3人は下敷きに成った。
「ちょっと!?何の音よ!!あの邪仙共がまた何か――」
「ああ!?離れが……!」
音を聞きつけた、天子と奏が屋敷から出てきて、声を上げる。
最初は倒壊した離れを見て、そして次は目の前に立つ怪しげな男を見て。
「刃物――ってことは……」
持っている剣をみて、今朝のニュースを思いだした奏。
だが、その一瞬のラグに男は、踏み込みをして天子に刀の切っ先を突き刺そうとしていた!!
「危ない!!」
寸前の所で、奏が腕を出し刀の刀身を弾いた。
それにより、天子はかろうじて攻撃を防ぐことに成功した。
「痛っ!?なんだ、コレ――!」
奏が、自身の拳に走った痛みに声を上げる。
確かに刀を弾いた時、峰を弾いたハズだ。何か痛みが走る事などないハズなのに――
「やはり邪魔をするか――
「誰だ?俺はお前なんて、知らないぞ?」
奏が腕をかばいながら、距離を開ける。
相手の力が分からない以上近づくのは、危険と判断したのだ。
「しらない――そうか?お前はどうだ――比那名居 天子。
今朝も忠告してやったばかりだな――『天人らしい気品を持て』と」
その言葉、天子は確かに聞き覚えがあった。
そうだ、この言葉は今朝――
「あんた、まさか……翁なの?」
さーっと天子の背に冷たいモノが流れる。
ありえない。という言葉が天子の脳裏に流れる。
「あ、アンタは偽物よ!!翁はね!!不良天人って呼ばれた私に優しくしてくれたんだから!!それに見た目も違うじゃない!!翁はもっと、年よ!!
ハッ!死神の精神攻撃にしちゃずいぶんお粗末ね!!」
「貴様の事はよく知っている――今朝は、思い人と会う約束で心を躍らせていたな。
周囲になじめず、一人河で泣いていたのを今でもおぼえている。
勝手に儂の家に入って茶菓子をせびったのも覚えておるわ。
ああ、寝小便をして、わしの布団を台無しにした事も有ったな」
男の口から語られるのは、かつての天子の思い出。
翁と天子のみが知っているハズの思い出!!
「じゃ、じゃ、アンタはホントに……」
「ああ、そうだ――貴様が翁と呼んでいた者さ」
愕然とする天子に対して、翁が剥き身の剣を振り下ろす!!
「天子ぃ!!」
咄嗟に、奏は天子を突き飛ばし攻撃範囲から逃がす!!
「ほう――流石龍人だ」
斬られた奏、その傷跡からは血が出ず、剣に吸い込まれていった。
「なんだ、その武器――
なんで、アンタが翁なら、天子を傷付けるんだ!!」
射貫くような、力のこもった隻眼を翁に向ける。
「嫌いだからだ」
「は?」
その言葉は、あまりにシンプルなたった一言。
剣を放すと同時に、男の姿が翁の姿へと変わる。
腰が曲がり、頬はこけ、髪は白く――
「本当に、翁なのね……」
「儂は、お前は嫌いじゃった……!!
儂が苦節を重ね漸く天人へなったというのに……!!
貴様は!!貴様らは!!おこぼれで天人に成った存在が!!なんの、修業もせず!!
タダの幸運で天人に成った貴様らが許せん!!
同じ場所で!!貴様らが楽しそうにしておるのが気に食わんのだ!!
貴様の様な存在が、天人の格を下げるのだ!!貴様らなど居らぬ方がよい!!
だから、貴様が周囲に疎まれる姿は滑稽じゃった!!一番近くで見たくてのぉ!!
優しくしてやったら、コロッと振り向き負ったわ!!この馬鹿め!!」
ゲラゲラと笑い出し、翁が再び剣を取る。
「あんた……!!
天子はあんたの事を信じて!!」
「知るか、馬鹿者!!天人くずれに味方など、おる訳ないだろうが!!」
剣を握ると共に、翁の姿が若々しく青年の様な姿へと変わる。
「来い!!比那名居の執事よ!!貴様を殺すのがこの刀との契約よ!!」
「契約!?」
振るわれる刀を避けながら、奏がガードをする。
それと同時に、再び痛みが走る!!
「がぁ!?この、痛み……まさか!?」
「この刀は、貴様らに滅ぼされた――一族の怨念が宿る剣よ。
命を食らい――儂に命を注ぎ込んでくれる。
老い衰えたこの体に、命をなぁ」
翁は、剣を比那名居家の庭に生えていた、桃の木に突き刺す。
それと同時に、桃の木がすさまじい勢いで枯れていく。
文字通り――命を奪う剣なのだろう。
「何百――何千――何億の血がこの剣を作るために、奪われたか――
全ては愛原を滅するために!!さぁ!!我命の糧と成れェ!!
不良天人!!愛原家の末裔!!」
「なめ、るなぁ!!」
奏が両腕を弓の様に構える。
自身の『現象を操る程度の能力』を発動させ、空気中の微弱な電流を集め始める。
僅かな静電気程度の電力は、龍神である奏の力により稲妻の力へと変わる!!
稲妻が完成すると、同時に放電して翁に技を向ける!!
「甘いわ!!若造!!」
しかし翁はそれを剣で薙ぎ払った。
剣に、奏の放った稲妻が帯電して、巻き付けられている。
「な、この力は……俺と同じ!」
「儂の名は
空は――我が支配する領域よ」
天津が、剣を振るい奏の稲妻を投げ返した!!
「そんな――」
「自身の力と近い力を持った者に――会ったことが無かったか?
ずいぶん幸運な生き方をしてきたな」
独特の歩みをして、天津が横凪に剣を振るう。
奏はそれを避けようと、地面を蹴るが――
「な、凍って!?」
靴が氷によって、地面に縫い付けられている!!
それにより、僅かに反応が遅れた。
その一瞬、一瞬有れば達人同士の戦闘では十分!!
「がぁああああああ!!」
奏の肩に剣の切っ先が食い込んだ。
怪しく剣が脈動する。
「くはははは!!分かる、分かるぞ!
この剣の喜びが!!
そうか、うれしいか!!喜ばしいか!!
貴様ら一族を滅ぼした、仇敵の血はそんなに美味いか!!」
血を吸い、剣がわずかに喜んだ様子を見せた。
「その剣……千里と同じなのか」
奏は自身の持つ、意思を植え付けた刀を思い浮かべる。
あの刀は自身の味方をしてくれたが、自分に対して恨みのある剣もあるのだと思った。
「あんたは、俺に似てる……」
奏はいつの間にかそう思っていた。
自身と同じ、天気に関する力。
自身と同じ、人格を持った刀を武器。
「だが、違う物が――ある」
一瞬にして、今度は天子の後ろに刀を振り上げた状態で立つ。
「天子!!」
「え……?」
「比那名居――貴様は天人としての格が無かった」
音もなく、剣が振り下ろされた。
絶望の一瞬、奏にとって世界がスローモーションになる。
ゆっくりと天津の、剣先が天子の胸に触れ、服を引き裂き、皮膚に食い込み、肉を――
「おらぁあああ!!」
ギィンィイイイイン!!
突如地面に開いた穴から出てきた善が、振り下ろされた剣を弾いた!!
「地面から、どうやって!?」
「さぁ?どうやったのかしらね?」
狼狽える天津、地面の穴から師匠が上半身を出しにやにやと笑って見せる。
「じゃ、邪仙めぇええええ!!」
今度は師匠に、目を付けるが師匠は涼しい顔のまま、ただ一言――
「善、やって」
「了解しましたぁ!!」
横から走って来た、善が天津の剣を握る!!
そして――
『ぎぃやぁあああ!!』
突如剣から、悲鳴が聞こえた。
パチパチと音がして、剣にひびが入った。
「な、なにをした!?」
「もう、壊せてないじゃない!!ダメ弟子!!」
狼狽える天津の前で、師匠が善にダメだしをする。
「いや、一瞬でしたし……」
困ったと言う様に、善が自身の頬を掻く。
「あ、そうだ。奏さん、コレ忘れてますよ」
「奏-!!生きてるー!?」
「千里!?今までどこに?」
善が千里の本体を投げ渡す。
「そんなことより、今はアレ!!
あれって多分妖刀だと思う、あの刀の中に魂を閉じ込めて、持ち主に与えてるの。
普通は乗っ取られるけど、持ち主が天人だし、それに若さも与えて、契約もしてるから……それに、天候を操って、んでそれが相性良くて……」
ワタワタと千里が、説明するがどうにも概要を得ない。
「要するに、あの体と剣が相互に守り合っているの。
だから、壊すには体と剣を両方同時にって事よ。
善、相性的にあなたは剣の方を狙いなさい。
良い?同時攻撃よ」
後ろからひょこっと現れた、師匠が二人に説明する。
「なんで、そこまで……」
「一宿一飯の恩ですかね……あとは、桃の木のお詫び?」
「桃の木?」
善の言葉が気に成った天子と奏が、庭の隅に在る筈の桃の木を見る。
その下では――
「うー……もう、食べられない……けど、もう10個だけ……」
寝言を言いながら、大量の食い散らかされた桃の無残な残骸の上に寝転がる芳香がいた!!
「あー……私と一緒に育った木が……」
思い出の木だったのか、天子ががっくりとうなだれた。
「ふぅん!!貴様らの――遊びには付き合えん!!
我と倉見の怨念の一撃――受けてみよぉ!!」
剣を持って、天津がとびかかる!!
高く舞い上がり、風を纏い空からの一撃!!
「過去から来た、宿命――今こそ壊すぞ!!
今の俺には守るべき人が居る!!帰るべき場所がある!!
過去の亡霊がなんど俺の前に立っても倒してやる!!
天子を疎む奴が来ても、俺が跳ね返してやる!!
だから――あんたを倒す!!」
「奏さん!!」
「分かった!!」
奏の作り出す、竜巻に乗って善が飛ぶ!!!
空へ、空へ高く!!
「直接狙う気か!?だが――貴様は飛べぬ!!」
風を操り天津が避ける!!
「ここからが、狙いだ!!」
再度奏が稲妻を呼ぶ!!!
それは、腕にではなく、空から――
空にから落ちる稲妻は、鉄に引き寄せられる性質を持つ!!
当然雷が向かうのは、空を飛び剣を持つ天津!!
「行くぞ千里ぃ!!」
「はい!!」
奏の掛け声と共に、空から血の様に紅い稲妻が落ちる!!
それが善――自身の力と稲妻を纏い、空と大地の間に居る『堕ちた天人』へと飛び掛かる!!
「うおおおおお!!」
「はぁああああ!!」
「貴様らなんぞにィイイイイ!!」
空から善が、陸からは奏が。
二人の攻撃が、天津に叩き込まれた!!
「こん、な、馬鹿なぁあああ!!」
パキィン!!
天津の持つ、剣が砕け散った!!
それは奏と倉見の因縁が完全に消滅した音だった。
「さーてと、ここからどうするかな……」
倒れた天津が連れていかれた後、善が全壊した離れの残骸に腰を掛ける。
問題は去った。
奏は過去の因縁にケリをつけ、天子を疎ましく思う存在も倒した。
「あーあ、天界ってヒマだったり物騒だったりしますね……」
「そうね。思ったほどの場所じゃなかったわね。
ま、お土産程度のものは手に入ったけど……」
砕けた刀の破片を手に師匠もつまらなそうに話す。
邪仙になった師匠は、天人にはなれなかった存在。
なにか、やはり天界に未練でもあるのだろうか?
「私は、地上の方が似合ってるわ。
そっちの方が、遊べるおもちゃが多いし」
「なんで、おもちゃの部分で私をみるんですか!?」
嫌な空気を感じつつ、善が身をこわばらせる。
「むー、服がべとべとだ……善!!洗ってくれ!!」
漸く目を覚ました芳香が、善に近づいてくる。
大きな木の桃を丸ごとすべて、食べ終わった為顔も服もフレッシュな、果汁&果肉に覆われている。
「って、いっても……帰る方法は――」
「有るわよ?じゃじゃじゃじゃ~ん。
小槌~」
師匠が取り出すのは、何時か見た封印された小槌だった。
「ええ!?まさか、それで――」
「空間を渡る力があるから、使いましょうか。
きっと元の世界は私たちを、戻そうとしているから空間を不安定にすれば出来るハズよ?」
一気にスケールが大きいが、この小槌が平然と紫の様に空間を跳躍するのは知っている。
嘘では無いであろう。
「じゃあ、奏さんに挨拶を――」
「あー、ごめん。多分無理」
善の言葉を、千里が遮った。
「いま、珍しく二人っきりだから、そっとしておいてあげてよ。
こんなチャンスでもなけりゃ、二人は素直に成れないから。
私から、挨拶は言っておくよ。ありがと」
なかなかにゲスい気遣いを見せる、千里に師匠が笑って見せる。
この二人は結構仲良くなった様だった。
「分かったわ、じゃあね、千里ちゃん。
二人によろしく~」
「ばいば~い」
「それじゃ、お世話になりました!!」
師匠に握らされた、小槌が輝くと空間に小さな穴が開いて3人は吸い込まれていった。
「奏、入るわよ……?」
奏の部屋、天子が扉を開け怪我をした奏を見まう。
天子の傷はそこまでひどくは無いが、奏は怪我を押して大立ち回りを見せたのだ、受けた傷が広がってしまっているだろう。
「天子様……ぃって!?」
「ああ、もう、いいから。
今は休んでなさい……私の為を思うなら、早く傷直しなさいよね」
そっぽを向きながら、奏の寝るベットに座った。
「こ、此度の活躍は、貴方の主として鼻が高いわ!!
褒めてあげても良いわよ……ほ、褒美として……その……
休暇を上げるわ!!だから……その代わり……ええと……」
小さく天子が何かを言う。
「天子様?よく、聞こえなかったんですが……」
「褒美に、私を撫でて良いわよ!!
高貴なる私に触れて良いなんて、貴方は末代まで私の慈悲深さを伝えるべきだわ!!
さ、さぁ、撫でなさいよ!!
っていうか休暇中でしょ?敬語禁止!!ほら!!恋人っぽい事して!!」
やけくそ気味に、天子が両手を開いて見せる。
撫でろ。というポーズらしい。
「天子……」
「ねぇ、奏……今回は――」
とさッ……
奏が上半身を起こした時、奏のベットから一冊の本が落ちた。
身に覚えのない本、奏は何かと確認しようとして固まった。
「ちょ、ちょっと!?な、何よコレぇ!?」
その本はすてふぁにぃ!!
師匠が投げ捨てたすてふぁにぃは、奏のベットの中に転送されていた!
初心な天子の前に、広がるめくるめくるピンク&ビックボインワールド!!
端から端まで、どこを見てもボイン!!あるいはドゴン!たまはタプン!!
無意識に天子は、自身の胸に手を伸ばしていた!!
『無い』何がとまで言わないが――天子にはすてふぁにぃに在った物が『無かった』。
「か、かなでのばかぁああああああああ!!!」
天子の鳴き声と奏の断末魔が響いた!!
不思議な空間で、一人の青年が砕けた剣の欠片を触る。
「ねぇ、カンパイ。結局スカウトは出来なかったの?」
フノイと呼ばれた幼女が、青年の背に抱き着いた。
「うーん、剣を手に入れて交渉に使ったトコまでは良かったんだけどね?
いやー、またしばらくはこのメンバーかな?」
「えー、詰まんない!」
フノイが頬を膨らませて見せた。
「あっはっは、そう言わないでよ。
まだまだ、世界は無数にあるんだよ?
暇つぶし出来そうな世界を探してあげるからさ」
「ぶー、絶対だよ?」
「ああ、勿論だよ。僕も不思議でわくわくする事が大好きだからね」
青年と幼女が二人で小さく嗤った。
すてふぁにぃは置いてきた!!
置いてきて来たんだ……置いてきて来たんだぁぁあああああああああ!!
なんだかんだ言って、作品の登場頻度で言えば、トップ5だと思う。