コラボ相手はそこらへんのたわしさんの「東方鬼蛇伝」です。
古代スタートという、なかなかにからめずらい構想なので、少し時間がかかりましてね。
皆さんどうもこんにちは。私の名前は
まだまだ駆け出しですが、実は仙人やっています。
私の師匠は邪仙で、年齢1400歳以上の超年増で、我ままで自己中で、無茶ぶりと自分の事が大好きで、善悪や良心の呵責が一切なく非道な行いを簡単に行える所謂サイコパス気質な危険人物……
ですがそれでも毎日楽しく過ごしています。
さぁ、今日も師匠とその手下のキョンシーの芳香と一緒に修業――
「あらぁ?何か今、聞こえた気がしたわねぇ~?
半人前で、仙人モドキで、下半身と脳が直結して、ドジで運が無くて、そのくせお調子者の私の弟子が何か言ったのかしら?」
うぐっ!?師匠、いつからそこに……?
「最初からだぞー!」
いでで!?噛むな噛むな!!
宿儺母禮 空亡
何処までも続く青い空、そして緑の覆う広い大地。
ビルやコンクリートなどなく、人も妖怪も隔てられることすらない神代の時代。
様々な種が入り乱れた力と混沌と自由の時代。
「お主は――さっさと
ザッシュ!!
鎧を纏った黒髪の美女の刀剣の一刀で一人の少年の首から上が飛ぶ!
体を失った頭部は、地面の転がりその赤い血で大地を潤した。
これで戦闘は終わる。圧倒的な力を持った妖怪によって、哀れな犠牲者が一人増えただけのハズ――
「母上……」
「分かっておる……お主は下がっておれ」
その様子を心配そうに見る、ひとりの少年病的なまでに白い肌を覆う蛇のような鱗。
左右で色の違う赤青の瞳。
母と呼んだ存在が敵を倒したというのに、その表情はすぐれない。
ザ……ザザッ……ザザー……
目の前の空間が少しだけ
まるでゲーム画面のバグの様に砂嵐が走る。
「全く持って……理解の及ばんヤツよ!」
「ふぅー!ひどい事するね!」
コキコキと首を鳴らしながら、先ほど倒した青年が出現する。
余りに異常な再生方法に息を飲む二人。
この時代にないハズの白いカッターシャツに黒いズボン、そして頭に何かの骨を思わせる仮面の様なモノの欠片を付けている。
頭の個性的なアクセサリーを除けば、その姿は没個性的とさえいえるだろう。
だが、その姿からにじみ出るの奇妙な違和感。
そう、日本人がアジア系外人を日本人でないのが分かる様に、造花が生花と違うのが分かる様に、食品サンプルが本物ではないと分かる様に。
具体的な点を挙げる事は出来ないが、『彼』が明確に人間ではないと分かっていた。
「面妖な恰好に、面妖な力に、面妖な技……お主は何者だ?」
「面妖ってひどいな……俺は『人間』だよ。君たち妖怪が今までさんざん脅して、奪って、殺して、すりつぶして、餌にしてきた人間だよ。
けど――」
「!? 空亡よ、避けろ!!」
何かが来る。そう確信した妖怪――宿儺 母禮が少年――空亡を突き飛ばした。
「は、母上!?」
「この世界の
天上天下唯我独尊――生まれたときに、そう唱えればまだ俺の人生は面白く成ったのかなぁ?」
全く関係ない事を言いながら、青年はその右腕の掌を見せつける様に開いて見せた。
そこからまるで光源でもあるかのように、白く輝く光が周囲を覆いつくした。
「母上!!母上ぇ!!ご無事ですかぁ!!」
空亡が張り裂けんばかりの声を絞り出し、光で眩む目で自身の母を探す。
「無事だ……心配は無用だ……」
光が消えた後、ふらふらと力なく歩く母禮が姿を見せた。
見る上では何の傷もない状態だ。だが、さっきの光が攻撃だとしたらどうなっていたのか。想像もしたくない。
パチパチパチ……
「おー、すごいすごい。今の技、結構自信あったのに。
いやーけど、死ななくて良かったよ」
控えめな拍手の音と共に、青年が非常にわざとらしい賞賛を送ってくる。
「きっ、貴様!!」
その癪に障る態度に空亡が、怒りをあらわにする。
なんとしてもこの男を始末しなくてはいけない!
そんな事を心に決め、殺意を視線に込めるが……
「見逃してくれないかな?俺はさ、此処には休憩に来たんだ。
狭苦しい亜空間の中じゃ、息が詰まっちゃうんだろ?
やっぱり人間はさ、ちゃんと日光浴びないと鬱になるんだよね」
青年の方にはもう戦う気など無かった。
いや、それどころか――
「最初から戦う気なんてなかったんだよね。
キミたちがいきなり襲い掛かってくるから、いけないんだよ?」
「何をほざくか……!
貴様は天災じゃ。嵐、雷、地割れ、貴様は人の形をした厄災。
そんな物があるなら、それを始末するのは当然!!」
母禮が腕を振り上げる!!
その瞬間、青年に炎が巻き付いた!!
「ぐぅ!?あ、あつい!!あー、もう……なんだよ」
青年が炎にダメージを受けたのも僅か一瞬。
パタパタと炎を手で払うと、まるで火の粉を払う様にしてみな消えてしまった。
「やっぱり、此処で狩っとくべきかな?」
青年がポケットから、棒状の物を取り出す。
それは殆ど装飾のない、シンプルなデザインの剣の柄だった。
柄だけ、刀身は無く根元で折れてしまっている。
「じゃ、バイバイ」
ずぶッ!
「な、なにを!?」
青年が母禮の体に、剣をさす。
刀身部分のない剣。それは本来相手に傷を与える事は無いハズだが――
「あ、ああ!!」
母禮の姿が溶ける、そして青年の手に持つ剣に刀身が生まれていく。
黒い刃に、黄色いヒビが入りぼんやりと赤い波動を纏っている。
「は、母上に何をした!?」
「武器にしたんだよ。これは敵を封印して武器にする道具だ。
相手の生き方や能力が武器として形となるんだ。
俺の家には、まだいくつかコレクションがあるんだけど、これほどの物は見たことはないね……君の母親はとても強い妖怪なんだね」
「許さない……よくも、よくも母上を!!」
空亡が慟哭すると共に、地面が嫌な臭いを発して腐り始める。
植物が、地中にいる生物すべてが、死に絶える命なき場所へ変わっていく。
さらに、空亡が氷で剣を作り出し、青年へと切りかかった。
「ッ――」
青年の足は腐敗した地に足を取られ、上空からは空亡がとびかかる。
「ははッ!楽しくなってきた――んな!?」
パキィン!!
青年の母禮を封印した剣が砕ける。
そして母禮が姿を現すと腕を振るって、青年の顔面をつかみ上げた!!
「ふははは!我をこの程度で封印できると思ったか!!我はこの世の神仏すべての敵じゃ、貴様の様な人間モドキに後れを取る訳なかろう!!
この時を待って居ったわ!!ゆくぞ空亡!こ奴を始末する!!」
「はい、母上!!」
炎と雷、氷と腐敗が同時に青年を襲った!!
「じゃ――俺もちょっとだけ本気出しちゃおうかな?」
ドロリとまるで擬音のつきそうな非常に嫌な笑顔を少年が見せた。
そして、ゆっくりと両手を広げて――
幻想郷の墓の中、一人の
「ららんら~ん♪らんらら~♪」
人民帽に赤い中華風に上着に、紺色の白い飾りがついたスカート、そして額に貼られた札が風に揺れている。
「どうした?なんか、妙に上機嫌じゃないか?」
その様子を隣で、落ち葉を掃除していた善が尋ねる。
「おー、丁度お腹が空いてたんだ」
意味ありげに善の集めている落ち葉を見ながら、芳香が嬉しそうにはなす。
その視線は明らかに、この落ち葉で何か食べ物を作る事を期待しているのだろうが……
「焼き芋はやらないぞ?」
「な、なんでだ!?私も掃除したんだぞ!?」
善の一言で芳香が、大きくうろたえた。
「あのなぁ、今日はただ掃除をしただけだ。
それに今日は芋も無いし、焼き芋はまた今度な?」
善がまるで駄々っ子をなだめるように優しい言葉で諫めるが――
「やだぁ!!お腹空いたぞ!!おやつが欲しいぞ!!」
「こら、我まま言うな、最近またお前太って来ただろ?
ダイエットするって言ったばかりだろ?」
「良いじゃない、少しくらい食べても。
無理な我慢は体に毒よ?それにお芋が無いなら、代わりにりんごを焼いてみましょうよ。この前、善がそんな料理の載ってる本読んでたじゃない?」
いつの間にか善の後ろに師匠が立っていた。
何時も唐突に現れるが師匠の出現方法は、何年たった今でも慣れることは出来ない。
「りんご……焼きりんごの事ですか?
えっと、アレ普通に焼いただけじゃないんだよな……
アルミホイルとか当然無いし……あ、けど蒸し焼きなら……水分の多い葉っぱで作る料理があったから……」
善がぶつぶつ言いながら、家の中へと入って行く。
どうやら師匠の一言でやる気になった様だった。
「うふ、善は私には甘いのよね」
「ただ怖いだけじゃないのか~?」
「芳香ちゃん!?」
にんまり笑う師匠に芳香のツッコミが容赦なく入る。
「そんな訳ないじゃない?私と善は心の奥底から繋がっているわ。
そう、それはまるで熟練夫婦の様に――」
再び師匠が笑みを取り戻して朗々とうっとりしながら語り始める。
「外の世界じゃ熟年離婚が流行っているって聞いたぞ?」
「芳香ちゃぁあああん!?どこでそんな事聞いたの!?」
再度放たれる芳香の強すぎるツッコミに師匠がうろたえる。
(最近芳香がますます、私の手を離れてきた気がするわね……
やっぱり善の影響が大きいのかしら……?
いいえ、それとも……)
少し不安になりつつも師匠は芳香を眺める。
「あら?」
「お?」
その時、二人の見ている前で空間が突如歪み始めて――
その頃善は、台所で右往左往していた。
ガチャガチャと台所を漁り使えそうなものは無いかと探している。
「お!ジャガイモが出てきたな……
そうだよ!ジャガバターも良いんじゃないか?うんうん、これなら芳香も――
あーけど、甘いモノスイッチ的な物女の子には有るらしいし……
持って行って気分じゃないって言われるかな?
やっぱりりんごを持って行って――」
チョイ、チョイ
その時善のズボンが引っ張られた。
善が気が付き後ろを振り返る。
「やぁ、今日は気分がいいのかな?芳香がわがまま言ったから、急遽おやつになりそうな物を用意してるんだ。一緒に食べるだろ?」
目の前の人物を善が見下ろした。
その人物は一瞬考えるようなそぶりを見せて、首から紐で下げたメモ帳を手にしてカリカリとペンをすすめる。
『にんじんがいい』
未だに上手く声が出ず、体の動きはぎこちないが下手な字で確かにそう書かれていた。
「はいはい、本当に好きだね。
今夜はすりおろしたヤツじゃなくて、甘く煮たのを夕飯に出してあげるからね?」
「!?」
善の言葉に感動したのか、片方だけの耳がピィンと立ち包帯で覆われていない方の目がキラキラと輝いた。
パチパチパチ!
余程うれしかったのか、両手を叩いて飛び上がるのだが――
ドタンッ!!
「!?!???」
「危ない!!」
急にバランスを崩したとおもったら、膝から崩れ落ちた。
善はそれをある程度予測していたのか、両手で優しく空中で受け止めていた。
頭を地面に打ち付けるのは避けることが出来た様だ。
「まったく、まだまだ体は不安定なんだよ?
無理しちゃダメじゃないか?どこか、おかしい所は無いかな?」
善はそう言って、その子の体を触り始めた。
頭に、胸に、腕に、足……
その動きに、その子の顔が少しだけ赤くなる。
「よし、と。大きな出血は無いかな?とりあえず包帯と細胞の活性化で――ん?」
今まで撫でていた子が、再び指を動かし『こっちに顔を寄せろ』とジェスチャーで伝える。
善はそのジェスチャーに従い、その子の口元に耳を近づける。
そしてその子は、善の耳に何かを囁いた。
「どうしたの?――――いや!?そんなつもりは無いからね!!普通に医療行為だよ!?」
囁かれた言葉に反発して、善がそこから頭を退かす。
その子は、善のそんな様子を見ながら隠し持っていた本を取り出す。
そこには『初心者にもカンタン!うさぎの飼い方』とタイトルが載っている。
パラパラと素早くページをめくると、目当ての場所で指を止める。
見ろ。といわんばかりにそのページを善に見せる。
「えーと、なになに?『うさぎは場合によっては想像妊娠します。相手はオスうさぎとは限らず飼い主の場合も』――――まてまてまてまて!!
自分で想像妊娠ってわかってるじゃない!?それって、もはや想像妊娠じゃなくない!?」
善の言葉を聞き流しながら、その子は頬を赤く染めて自身のお腹を慈愛に満ちた優しい手つきで撫で始める。
「あー、誰も中に居ませんよっと。
一体どこでそんな事覚えて――十中八九師匠か……」
善がため息を付いて、その子の頭を撫でる。
「今はまだ、ぎこちないけど……絶対芳香と同等以上の体を作るからね?」
「あ、……り、が……う」
その子はそう言って、台所を出ていった。
「まだまだ、学ぶことはたくさんあるな……
って、いけないいけない!!芳香の事をすっかり忘れてた!」
善がその子を見送った後、急いで台所からリンゴと砂糖、そしてジャガイモを持って走り出した。
「師匠ー、芳香ー、何か食べれそうなもの持ってきて……え?」
善が目の前の光景に、持っていたジャガイモとリンゴを落とす。
目の前に居る人物が、2人から3人に増えていた。
角の生えた、少年だろうか?真っ白い肌にヘビが体を這いまわったような痣の様なものが出来ており、様々な観点で人間では無い事が容易に想像できる。
妖怪だろうか?ならば、なぜ急に此処に出てきたのか、目的はなんなのか、様々な要素が善の脳裏に疑問符を産む。
「どうしたんですか?彼?」
「急に降って来たぞ!」
「そうなの、さっきから目を覚まさなくて……」
珍しく師匠が心配そうに顔を覗く。
「えっと、とりあえず町に?けど、どう見たって妖怪だし……」
この少年の所在をどうするか、善が困ったように考え込む。
「あ!善、いい方法を思いついたぞ!
お昼はこいつにしよう!」
「食うな!!食おうとするんじゃない!!」
「大丈夫だぞ?私は好き嫌いしない性格なんだ!!」
「さすが芳香ちゃんね。何でも食べて良い子良い子」
相当お腹が空いてきたのか、様々な事に対して躊躇が無くなって来た芳香の言葉に、善が再度大声を上げる。
よしよしと、師匠が撫でている隙に素早くリンゴを剥いて芳香の口に押し込んだ!!
「むぐ!?甘いぞ~」シャリシャリ
とりあえず、腹ごしらえとばかりにその場で切ったリンゴを芳香に与える。
流石に見ず知らずの妖怪を調理して出す気にはなれなかった。
「はぁ、師匠このえっと、人?どうします?」
「そうね、とりあえず家で面倒見ましょう。
眠っていても分かるこの力……恩を売っておけば後々と、ね?」
こちらを見ながら、師匠がウインクして見せる。
「わぁお!打算100%ですね!」
「じゃ、この子のお世話お願いね?」
胸中に尋常ではない、不安感を抱えながら善が苦い顔で頷いた。
善の心労など知らぬと言わんばかりの表情で、その少年は眠り続けていた。
今回は、少し短いかな?
次回以降本格的に絡んでいく予定です。