主人公同士に実力の差があり過ぎると、実はすこし困ります。
皆さんどうもこんにちは。私の名前は
まだまだ駆け出しですが、実は仙人やっています。
私の師匠は邪仙で、年齢1400歳以上の超年増で、我ままで自己中で、無茶ぶりと自分の事が大好きで、善悪や良心の呵責が一切なく非道な行いを簡単に行える所謂サイコパス気質な危険人物……
ですがそれでも毎日楽しく過ごしています。
さぁ、今日も師匠とその手下のキョンシーの芳香と一緒に修業――
「あらぁ?何か今、聞こえた気がしたわねぇ~?
半人前で、仙人モドキで、下半身と脳が直結して、ドジで運が無くて、そのくせお調子者の私の弟子が何か言ったのかしら?」
うぐっ!?師匠、いつからそこに……?
「最初からだぞー!」
いでで!?噛むな噛むな!!
スンスン……スンスン……
空亡が机の上に乗ったモノを見て、無言で匂いを嗅ぐ。
そこには大よそ人の食べるモノと思えない(少なくとも空亡には)物体が皿に盛られていた。
「……これは、何?」
「カレーって言うらしいぞ、見た目は悪いけどおいしいんだ」
カレーに対して露骨に警戒して見せる空亡を横目に芳香が、スプーンですくって口に運んで見せた。
「むぐ、んぐ……うまい!」
パッと顔が明るくなって、2口、3口とスプーンを運んでいく。
「……ええ……」
空亡が真似してカレーを掬うと、カレー特有のネトッとした感覚がスプーンを伝ってくる。
ふわっと香ってくる劇物的な香りに危険を察知した空亡が無言でスプーンを皿に戻す。
「えっと、空亡さんはコレ苦手かな?」
空亡の正面、苦笑いを浮かべた善が愛想笑いをする。
小さく「ばぁちゃんに悪い事しちゃったな……」なんて、頭を掻いて言う。
「…………」
それを見て今度は空亡が困る。
善を見る限りコレは嫌がらせでも、こちらを騙そうとしているのではなくて本気でもてなそうとしているのが分かる。
まぁ、その『もてなそう』とした結果が皿に鎮座する怪しげな色と香りの物体なのだが……
「馬鹿ねぇ、この子の話じゃ過去の世界――それも西暦以前の時代から来たっていうじゃない?そんな子にコレが受け入れられる訳ないじゃない?」
そう話し、優雅な動作でスプーンを口に運ぶのが善の師匠と名乗る女だ。
不思議な魅力というか蠱惑的というか、動作や言葉の節々にタダモノでは無い雰囲気を纏っている。それは決していい意味だけではなく、空亡の警戒心がひっきりなしで警鐘を鳴らし、平時の自分では明らかに関わる事を拒否する存在だった。
気が付いたら未知の世界、信じがたい事に自身が居た時代よりもずいぶん先の時代らしい。
当然知っている相手など居ないし、どうすべきなのかもわからない。
少なくとも人間は生存しているし、妖怪も昔と比べると大幅に規模が小さくなったが種としては生存しているらしい。
「この食べ物は、少なくても俺のいた時代には無かったものだ……
ねぇ、コレは何?魚?木の実?それとも泥かなんか?」
興味はあるのか、カレーの中の人参やジャガイモを突きながら空亡が説明を求める。
「えっと、これはカレーライスと言って、こっちじゃそんなにメジャーじゃないけど外の世界じゃみんな知ってる食べ物で、子供の好物としても良く上がりますよ?
野菜や肉を煮込んで、そこにルー……香辛料を混ぜてさらに煮込む料理です。
此処じゃルーは希少で、命蓮寺のばぁちゃ――知り合いが外界にツテが有るから前に貰った物ですよ」
「へぇー、そうなのか。善、お替り!!」
隣で食べていた芳香が、空っぽになった皿を善に突き出しお替りを催促する。
空亡が見ているだけでもう3度目のお替りだ。
「……いや、多めに作ったけど……そんなにか……」
何とも言えない、顔に影のかかった表情で善が皿を持って台所へ消えて行った。
「……いろいろと不都合かもしれないけど、慣れなさい。
貴方がこの世界で一時的とはいえ、暮らしていくには必要な事よ?」
サラダを突きながら、師匠と名乗った女がそう話す。
何度目かになる苦手意識を感じながら、空亡がカレーを口にする。
その味はとても刺激的だが、それと同時にひどく味気ない味がした。
「…………日の色は変わらないか」
針のむしろの様な食事が終わり、解放された空亡はぼんやりと沈んでいく日を一日中見ていた。
特に何かを命令される事は無い。タダ場所が分からなくなると困るからと石製の道の外(墓場)から外へ出る事は止められていた。
「母上……」
どうしても気になるのは、空亡の儀母の母禮だ。
あの、正体不明の男と戦っている最中から記憶が酷く曖昧だ。
「…………」
空亡が自身の手の指を何かをつかむように開いたり閉じたりする。
――自分はこの手で『アイツ』を倒せたのだろうか?
――母上は無事なのだろうか?
――なぜ、この時代に母上の姿も逸話も何も残っていないのだろう?
――ひょっとしたら、あの時に母上は――
そこまで考えて、空亡が首を振った。
「いや、ありえない。この世界はきっと、母上の居ない世界なんだ。そうに違いない……」
自身に言い聞かせる様に言葉を紡ぎ、深呼吸をする。
慌てても事態は好転しない。ならば、今の自分に出来る事を考えるべきだ。
「ん?」
空亡の視界の端、善が墓の住みへと進んでいく。
「うんうん、良い感じだ……」
そこには小さな畑があり、人参が数本育っていた。
「それは?」
「あ、空亡さん。これは……ちょとした家庭菜園ですよ。
人参代も結構するし……」
善が笑いながら、畑から人参を一本抜いて見せる。
素人仕事だが、穣子監修の元ある程度モノにはなっている。
「なぜ、こんなことを?師匠に言われたのか?」
「違いますよ、私がしたいからです。
これ、とある子の為の畑なんですよ。その子はどうしても俺が守ってやりたくて……
けどまだまだ食事にすら四苦八苦して……人参のグラッセなら柔らかいし食べてくれるし……」
小さく困ったようなはにかんだ顔は、空亡をイライラとさせた。
未知の場所に呼び出された不安もあったのかもしれない。
勝手が違い過ぎて、多少怪しくてもあの仙人と名乗った女のいう事を信用せざる得ないことも理由かもしれない。
いずれにせよ、度重なるストレスが空亡の言葉に棘を生やさせていた。
「お前には、大切なモノがたくさんあるんだな」
「そう、ですね……」
照れたように、泥だらけの手で頭を掻く姿に小さく苛立ちを空亡は覚えた。
だが、なぜ苛立ちを覚えるのかはやはり空亡本人には分からなかった。
「ふん――!」
地面を蹴って、空亡が宙に浮かぶ。
此処に居たくない。そんな風に思って逃げ出した。
「あら、善。彼に何かしたわね?」
後ろに出現した、善の師匠に空亡が驚く。
「急に――」
振り払おうとする空亡の頬に師匠が手を伸ばした。
「貴方は、貴方で何かあった?不安なのは分かるわ。
けど安心して、此処に居る間は私たちが――」
「うるさい!」
空亡は師匠の手を振り払った。
なぜか、どんどん自分が無様に成っていく気がした。
「ふぅん――ずいぶん荒れてるね?環境の変化のせいかな?」
聞きなれない声に、善、師匠、空亡の3人が同じ一点を見る。
輝きだした月が異様に巨大だった。
そして、その月の中に『何か』が居る。
真っ先に反応したのは空亡だった。
「お前は――なんでこんなところに!?」
月をバックに、一人の青年が静止していた。
「いやー、探したよ。まさかこんな所にまで飛ばされていたなんて……
はー、道理で探しても見つからない訳だよ」
つらつらと語る青年の姿を注意深く師匠が観察する。
だがまるで散歩をしていて親しい友人に会ったかのような気安さで、青年は手を振って見せた。
そのあまりに気安い姿と反対に、空亡はまるで呪いでもかけるかのような瞳でその青年を睨みつけた。
「後悔させてやるぞ!!俺と母上に手を出したことを!!」
苛立ちをぶつける様に空亡が言い放った。
合いたくない相手だが、むしろ今はそれが丁度いい。不安や苛立ちを飛ばす様に空亡が飛び上がり青年に襲い掛かる!!
その空亡の態度と言葉に青年の目がすっと、細くとがった。
「いいよ――そこまで言うなら、遊んであげるよ。けど俺が力を使うと少し困るんだよ。主にコッチがさ。最近漸く安定した来たんだ。また『道』がズレるのは困る――
けど、少しなら良いかな?うん……きっと大丈夫……
そう言うと青年は何でもない様に笑って見せた。
「!?」ゾワッ!
「――!!」ゾゾワ!
その瞬間――世界の何か『大切なモノ』が歪む気がした。
ソレが何なのか分からない、明日が来るという根拠のない安心が、空が落ちてこないという常識か、それともこの世界の根幹そう……
目の前に居るのが何なのか、
凄まじく人間に酷似した、人間とは似ても似つかぬ未知のニンゲン。
そんなプレッシャーがその場の全員を包む。
「ああ、漸く転送が終わったよ」
青年がそう言って、自身の右腕を動かした。
何かが違った。その腕は明らかに何か違う物を感じた。
パキッ……ペキッ!
氷が割れる様な音がして、青年の首にひびが入る。
その姿に善がギョッとする。
「あっちゃ、いきなりか……
この体はね?実は仮の『入れモノ』なんだよ。俺の本体は別の場所に居るんだ。
キミたちにわかりやすく言うと、式に自身の精神を埋め込んだもの……かな?
けど、この腕は違うよ?俺の腕を転送した正真正銘の腕さ……もっとも、残念な事にこの体は耐えられないんだけどね?」
青年がカッターを肘まで上げると腕から肩にかけて体にひびが走っていた。
「さぁ――久しぶりの戦いだ。少しは楽しませてよ?」
青年はポケットからカードの束を取り出して、ばらまくとカードが空中で円を描いて青年の周囲を回り始めた。
「はぁ!!」
空亡が腕を振るうと同時に、氷の剣が出来上がっていた。
それを振るい、冷気をまき散らしながら青年にとびかかる。
「氷の剣か~、かっこいいし冷気での相手の動きの弱体化も狙えるし、実際かなり強いよ……ねぇ!!」
青年が不意に、周囲を取り囲んでるカードを適当につかむと瞬時にカードが
そして、青年はそれを振るい、空亡の剣を受け止めた。
「何を考えているんだ?武器の選択はどう考えても――」
「さぁ――ね?」
青年は斧に力を籠め空亡を退かし距離を取る様に後退した。
「わぁ――お!もうか……」
青年の右手から霜が地面に落ちる。
空亡の武器は氷の剣、対して青年の武器は片手で扱えるサイズの斧だ。
氷の剣は先ほど青年が言ったように、冷気を纏っている。
その冷気は青年の手に斧を通して伝っていた。
「けど――この距離はこの武器にとって一番向いている距離なんだよ」
青年が斧を振り上げ、空亡に向かって投擲する。
「投擲用の斧?」
不意を突かれたとはいえ、それを食らう空亡ではない。
あっさりと斧を剣で弾き落とすが――
「ほいッ!2投目!!」
そのすぐ後に、2本目の斧が飛んでくる。
「ん――」
「まだまだ!」
青年が斧を投げる、投げ続ける。
この武器の特性なのかいくら投げても決して斧は無く成らず、投げた次の瞬間には手の中に次の一投分が握られている。
「ああ、うっとおしぃ!!ハぁ――!!」
空亡が力を込めた瞬間に、指先から光がほとばしる!!
それは雷、彼の母親と同じ様に、金属に引かれる特性を持った恐るべき自然現象!!
雷は空中にある斧の刃から刃へと、飛び移り青年の手にある斧に向かった!!
「――惜しい!」
青年が斧を投げると、再び斧はカードに戻り空中に浮遊する他のカードの群れへと帰る。
目的を失った雷は元へと落ちて消えた。
「はぁ……押せると思ったんだけどな?仕方ない、仕方ない、
何でもないと言いたげに、青年が浮かぶ他のカードを手に取る。
今度のカードは白に金色の差し色の着いたボウガンへと変化した。
「あー、これかぁ……」
困ったように青年が顔を歪める。
「お前まさか――どの武器が来るか分かんないのか?」
空亡が青年に聞く。
今の武器がさっき召喚されたなら青年は斧で剣を受け止めるなんて行為はしなかった。
戦いとして理に適う戦法は、最初からこの武器で遠距離からの攻撃をすべきで仮に空亡が同じ立場なら、近づく事すらしなかっただろう。
明らかどころか露骨すぎる武器の捨拾選択のミス。いやこれはミスではなく――
「そうだよ?このカードはランダムに武器が隠れてる。毎度毎度受け取った瞬間、決定するから何が来るか分からないんだよ」
「ふざけているのか……?」
空亡の目に怒りが灯る。
「ふざけてるのかって?当たり前じゃないか。
ふざけるさ。だって俺には君と戦う理由がない。
君が憎い訳では無いし、殺してでも奪いたい道具を持っている訳でもない。
なのに、なぜ殺す必要が?ただの運動ただの手合わせ、それだけだろ?
少なくとも俺に戦う理言うがあるとすれば……君の力が少し面白いから、かな?」
「――――――ッ!」
空亡は何も考えずに、剣を振るい飛び出してきた。
まるで大人が子供の遊びに付き合う様な言い草は、空亡を怒らせるのに十分だった。
その行為は明確な間違いだと気づかないほど――
「ほっと!」
「ぐふっ!?」
カードを投げすて高速で接近してきた青年の腕が、空亡の腹に深々とめり込んだ。
目を見開き口から逆流した胃液が吐き出される。
「げっほ、ごほっ!?」
今にも崩れ落ちそうな膝を抱えて、空亡は目の前の男を見る。
届かない。空亡の中にそんな言葉が不意に浮かんだ。
コイツは雷の様に捕まえられない、雨粒の様に数を数えきれない、雪の様に捉えきれない、嵐の様に攻撃が止まない。災害の一種の様に決して制御できないモノだと感じた。
皮肉な事にそれは、かつて空亡も『厄災』と呼ばれる存在であったが故の感想だった。
「お前が立ちふさがるなら……俺は――」
「立ちふさがってあげないよ。むしろ君の為に道を開けてあげている」
指を指すその先には、空間にひびが入り穴が開いている。
「君はあそこに飛び込めば帰れるよ。俺は君の邪魔をしない。
さ、帰りたいなら帰りなよ。この戦いに意味なんて無いんだからね」
穴を見て空亡が立ち止まる。
その先には確かに、自分が居た場所の景色が見えている。
「重ねて言うけど、嘘じゃないよ。俺は君を攫う気は無かったんだ。本来戦う気も無かった、こうなったのは不幸な事故さ。
さ、帰りなよ。邪魔はしない。止めもしない。さ、帰って良いんだよ?」
「…………」
空亡は無言でその穴を覗いたが――
「なぁ――善。お前は、お前ならどうする?」
この時始めて、空亡が善の事を見た。
ずっと、何も聞かず目の前の男だけを見ていたのに、始めて善に意見を求めた。
「こんな時、私はどうするか決めてます。
体の力を抜いて、何も考えない様にして一回深呼吸ですそして――やりたい事を何も考えずやります。衝動と本能ですよ」
「貴方はその結果碌な事にならないけど……偶には役に立つのよね。
ねぇ、たまには何も考えずバカに成ってみても良いんじゃないかしら?」
善の師匠までもが、口を出してくる。
「――どうしたの?帰らないの?」
青年の言葉を受け、目を閉じてゆっくり深呼吸をする。
そして自身の心にと問いかける。
『俺は、どうしたい?』
その答えは、すでに決まっていた。
そして空亡がゆっくりと目を開ける。
「ああ、帰るよ。けど、アンタを一発殴ってからだ!!」
空亡の全身から、妖力がほとばしる!!
その瞬間、空亡を中心に周囲に居た鳥や獣、さらには下級の妖怪が身の危険を察知して逃げ出した。
「コレって――!?」
「へぇ、これほどの妖気はちょっと無いわね」
善が妖気に怯み、師匠は不敵な笑みを浮かべる。
「あ、ああ……ああああ!!」
妖力の噴射と共に、空亡が飛ぶ!!
作戦も戦略も無い!!あるのはスカした顔に拳を叩き込むという
「いいよ、いいよ!!面白く成って来た!!なら……俺も!!」
青年が力を込めて、腕を背後に伸ばす。
何か全く理外の力が青年の腕に、風を纏う様に集まっていく。
「ああああああ!!!ああああああ!!!」
「【魔弾】――
二つの力がぶつかり合う!!
閃光と風、そして衝撃が走り善が目を開けた時は――
「はぁ、はぁ……これでも――」
「……すごいね……ああ、すごいよ」
地に膝を付く空亡と、腕から血の様なモノを流す青年。
「はは、君のか、ち、だ」
青年の体全身にひびが入り、そのまま血を流す腕を残して消える。
そしてその腕も空間に引きずり込まれる様に消えて行った。
「いや、本当に良い物を見せてもらったよ」
拍手をしながら、空亡の後ろから無傷の青年が出現する。
「お前!?」
「お前じゃない――俺の名前は
亜空間にある俺の本体に傷をつけたのは久方ぶりだ。だから、君になら名前を教えてもいいと思った」
杯正はそう言って、空亡を蹴飛ばし空間の穴へと落とした。
「本当に興味の尽きない子だった。信奉する母親さえいなければ真剣に、仲間にスカウトしたのに……
君はどう?仙人の弟子さん?」
「いえ……師匠が居るので……それに芳香や他にも……」
「あはっはっは!そうだね、このまま幸せに生きても良いんじゃないかな?
またいつか……そうだね、今度は敵として会えることを期待しているよ」
杯正の体にノイズが走って消えていた。
元の世界へと帰ったのだろう。
そうして、善にとっての嵐の様な数日はあっさりと終わりを告げた・
「空亡。コレ、空亡!起きぬか!!」
「は、母上様……?」
目を覚ますと、元の世界。
何時のまにか夕焼けを背に母禮が空亡をゆすっていた。
「よう目を覚ました。探しておったのだぞ?」
「す、すいません……」
「まぁいい。あ奴も此処には居らん。
次こそは殺してやろうと思ったが……逃げたか?
まぁいい、まぁいい。時がたてばまた会えるだろう。その時の楽しみとしておくか……」
そう言って、本当に楽しみにしている様に話す。
そして、傍らにあった袋を持ちあげカランと音がする。
「空亡旅に行くぞ――このより遥か彼方、東に人間どもが集落をつくったらしい。
面白い力を持つ人間が居るそうだ。暇つぶしがてら寄ってみるぞ」
母禮が腰の刀を抜いて、東の方角を指した。
「東極の島国だ。面白い物が見れる事を期待するか」
そのまま母禮は荒野を歩き始めた。
母禮の影が日に当たりゆっくりと地を這うように伸びていく、やがてその影は空亡を置いて先へと進んでいった。
(もし……もし、あの男が明確に悪意を持って俺や、母上を狙ったらどうなっていたんだ?)
不意にそんな言葉が、胸中に飛来する。
勝てただろうか?母禮を守れただろうか?
あの仙人モドキはきっと、自身の師匠に何があっても助けるだろう。
それがどんな無謀な事でも、不可能と思えることでも……
すこし、ほんのすこしだけ彼と自分は近い部分を持っていた気がする。
(もっと、もっと力を手にしなくては――)
「おい、空亡。何をしている、早く来い」
母禮の声を聞き、母上が倒される訳ないと
そして大切な人に名を呼ばれ――
「はい、母上様!」
歩き出した母禮の後を嬉しそうに、空亡が追って走り出した。
未来の世界で見たのと同じ色をした夕焼けが二人を包んでいた。
終盤はほぼ完全に善が空気ですね……
あー、活躍させたげたい!!
之にて今あるコラボはすべて終了です。
募集したい方が居れば、気軽にメッセージくださいね。