魔法科高校の聖遺物   作:橘 柚子

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『第一章・魔法科高校と古代魔法師』
『 first place:入学式① 』


「何だってんだ・・・」

 

 

 

鈍く痛む側頭部を手で押さえて、俺はため息を一つ吐いてしまう。

俺は今、国立魔法大学附属第一高校の、大体育館兼講堂の前にいた。

なぜなら今日は、この第一高校の入学式なんだ。

それでも、まだ開式の二時間も前だ。時間の所為で、他の新入生やらその家族はほとんどいない。

来ているとしたら高校の教員か、委員会や生徒会の先輩方か。さっきから、ちらほらと黒い腕章を付けた生徒も通っているし。

 

話を戻すが、どうして俺がこんなに早く来ているかというと。

 

「納得できません」

 

「まだ言っているのか……?」

 

「いい加減にしてくれ・・」

 

俺の目の前で言い合っている二人、俺の義兄、司波達也とその妹、司波深雪のおかげだと断言したい。

入学式のプログラムには、『新入生総代による答辞』と記されている。

そして深雪ちゃんは今年度一年生の学年主席、要するに新入生総代なのだ。

入学式のリハーサルがあると言われて無理矢理、達也に引っ張られた結果がこれだ。

 

 

・・・本当に勘弁してほしいなぁ、愚痴ばっか溢すの。

 

 

まあ、これを口に出すことはしない。

その愚痴が俺たちの代わりに出ているものだと分かっているから、養子の俺にとっては余計に恐縮してしまう。

間違えて言ったらが最後、妹思い(シスコン)の達也に何をされるか分からない。

 

――殺されると分かっていて、誰が好き好んで虎の尾を踏むだろうか、いや踏むわけない。

踏むと思った奴は舌先三寸のお調子者か、正真正銘の根っからの愚か者だ。

 

それに、深雪ちゃんたちには世話を掛けてるから、借りが凄いことになっているはずだ。

その貸し借りを除外しても、間違ってもそんなこと言える立場じゃないんだ、俺は。

この二人には

 

「お兄様方は、御自分が補欠で悔しくはないのですか?」

 

「悔しくはないさ、理由はいくつもあるけどね」

 

「本当はどうだかねぇ・・? ま、俺も心残りとかはないから強くは言わないけどさー」

 

ぶっきらぼうに答える達也を追撃しておいて、さらっと保身をつけておく。

だが、そんな俺たちの態度が、麗しき妹君にはお気に召さなかったようで。

 

「そんな覇気の無いことでどうしますか! 和兄様はともかく、お兄様は本当なら一科でもおかしくはない程の成績だったではありませんか!」

 

余計に怒りのボルテージを上げられてしまった。

だが、俺はともかく達也は深雪ちゃんの兄を務めてきて十数年だから、対処もお手の物だ。

 

「そうかもしれないな。だけど、入学できただけでも今の(・・)俺には十分すぎるよ」

 

「俺はともかくって、その言い方は傷つくんだけど・・・?」

 

「和兄様は一度と刺された方が良いと深雪は思います。・・・ですが、本気になっていたなら和兄様も一科に来れたはずだと思っているのですが、どうでしょうか?」

 

若干、冷静さを取り戻したのか、落ち着いた雰囲気で深雪ちゃんは聞いてきた。

それに俺は、あっけらかんと肩を竦めた。

 

「さぁ? 俺のBS魔法は対人仕様じゃあないし、もう一つは今後一生使いたくもないもんだからねぇ。・・・まあ、使ったとしても無理だったと思うけど?」

 

「そうですか。なら、仕方ないですね。お兄様たちにお説教するのは止めておきます」

 

「そうしてくれるのはありがたいんだが深雪。入学式のリハーサルの時間は大丈夫なのか?」

 

「あ! そうでした! それでは深雪は、行ってきますね!」

 

明るい笑顔で講堂の方へ向かった深雪ちゃんに俺たちは控えめに手を振った。

 

・・・さすがにこの年で大手を振るのは、恥ずかしい。

 

「さて、深雪も行ったことだ。俺たちはどう時間を潰すかが問題だな」

 

「そうだねぇ。でも、俺は寝るだけだからどうってことはないよ?」

 

「それが原因で入学式に遅れるってオチは要らないからな? そんなことになれば、監督不行き届きで俺が深雪に怒られるんだ、勘弁してくれ」

 

未来のことが予知できているような口ぶりで話す達也に、俺はムッとした。

 

「いやいやいや。まだそうなった決まってないじゃないか。それなのに俺に何を言っても無駄な気がするんだけど」

 

適当に軽口を叩き合いながら、休憩できる場所を探すために俺たちは歩き始めた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「ふぅ・・・。何と言うか、良い場所だここは」

 

転寝をするのに適しそうだった桜の木の幹に寄りかかっていた俺は、意図せずに呟いていた。

春の柔らかい日差しに絶妙に体を撫でてくれる風。本当に絶好の昼寝日和だな。

 

「お前がそう言うことを言うなんてあり得るんだな。変なものでも食べたのか?」

 

木の下にあるベンチに座っている達也は苦笑していた。

 

「良いじゃないかよ、俺が何言ったって」

 

「なら、体調でも悪いのか?」

 

「いや、至って体は健康で指数はオールグリーンですとも」

 

「じゃあ、夜に幽霊でも見たのか?」

 

「それもいつも見てるんだけど?」

 

肩を竦めて体から力をぬく。

 

俺の目は特殊中の特殊で、俺が初めての発現者だという。

名称を『魔導の視野(マギグラム・サイト)』というんだが、どうしてもこれを聞くと背中がむず痒くなる。

だって、この名前のセンスって、いかにも中二病かオタクだろ?

そんで、この名前は俺が付けたモノじゃないとだけ、言っておきたい。

大まかな効果は、達也の言った幽霊との完全な意思疎通。

今となっては、思念だけで会話することもできるようになった。

 

そして、俺が見ているのは厳密にいえば、幽霊とは違う分類と言われている。

現代魔法では『独立情報体』、または『孤立情報体』と呼ばれる存在――『精霊』たちだ。

その中でも、情報の世界に干渉する力が一際強く、淋しがりなヤツが多く見えているだけだと思う。

悪意の持っているヤツは、本能で潰しているしな。

 

「そうだったな。まあ、良いか。お前がおかしいのはいつもだからな」

 

お前の中じゃ、どこまで俺は変人扱いされるんだよ。

 

「ソイツは心外だ」

 

「日頃の行いせいじゃないのか?」

 

「否定はしない」

 

俺にはどうしてか、時たまに常識から隔絶された行動をとってしまう癖がある。

具体的には放浪――徘徊ともいう――や絶叫か。

それが無意識で行われるから、中々自分で抑える事が出来ない。

達也が言っているのは、これらの奇行の事だろうな。

 

「だが、自覚があるだけマシか」

 

「ありがてぇ」

 

ま、それでも今まで見捨てられなかったのは、完全にこの兄弟の懐が広いおかげだろうな。確実に。

そこは、感謝しておかないと。

 

「じゃ達也。お前の端末が鳴ったら起こしてちょうだいよ?」

 

「・・・はぁ、全く。了解だ、その代わり、どんな起こし方でも文句はナシだからな?」

 

「委細承知ってか」

 

達也のため息を半ば聞き流して、俺は意識を手放していった。




おはようございます、橘 柚子です。

はい、やっと来ました。本編第一章が始まります。
何とか投稿出来た、それで今は燃え尽きてますね。
その所為で作者はこれからどうしようか全く思い浮かんでいませんが。
それでも、頑張っていきますよ~!


批評や感想、誤字脱字などのご指摘があれば、メッセージをお願いします。

このような拙い文章ではありますが、楽しんで読んで頂ければ幸いです。
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