千恋*万花 Another view   作:ケロもり

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日間(加点式・透明)ランキングに乗ったお陰かお気に入り数が増えて嬉しいです。がんばるでぇー


第7話

朝武さんのなんとも雅な舞が終わった後、舞目当ての客が減ったのか俺と茉子はやっと密着した体勢から脱出することができた。少し名残惜しい…

だけど以前として境内には外国人観光客の姿が多く見える。

 

「茉子、人がまだたくさん居るけど境内でまだ何かあったっけ?」

 

「ん?ああ確か御神刀イベントの午後の部があった筈ですよ。」

 

と茉子は人混みの中肩を丸めていたせいか、体を大きく伸ばしながらそう言う。…イッタイ、ダレノセイナンダロウナー

 

「ところで、ヒロくん今何時ですか?」

 

「おぉ、ほれ。」

 

そう言って、俺は左手に付けている時計を茉子に見せる。さっきまで近くにいた顔が改めて近づいてきてちょっとドキッとする。

 

「ああ、もうこんな時間ですか」

 

「なんかあるの?」

 

「まだ、芳乃様たちと食べたお昼ご飯の片付けをしていないんです。」

 

と茉子は少し恥ずかしそうにハニカミながらそう言う。

実は茉子は忍者だがなんと朝武家に仕える忍者の一族だ。まあ、忍者と言っても時代劇のようなことはもうやっておらず、今では朝武家の家事全般をこなしたり………本当はそんなことしてもらいたくないが、祟り神ーー穢れを祓ったりしている。

 

「そうか、じゃあもう帰るのか?」

 

「はい、そうさせてもらいます。」

 

「おう、それじゃあ春祭りの片付け終わったら迎えに行くわ。」

 

「はい、それではまた。」

 

そう言って茉子は神社の脇にある朝武さん家の方に歩いて行った。さて…

 

「玄十郎さんの所に行こ、たぶん将臣もそこだろ。」

 

と軽い気持ちで本殿に足を向けた。

 

 

「ほら、あそこ。」

 

そう廉太郎が指差す方向に本殿の入り口から中を覗くと俺のじいちゃん(廉太郎と小春のじいちゃんでもあるが…)、鞍馬 玄十郎が他の実行委員の人と何やら話しているのが見えた。相変わらず元気そうで何よりだ。

 

「ありがとう、廉太郎」

 

「気にするな、俺とお前の仲だろ。」

 

と、廉太郎が少し顔をキメながらそう言う。

 

「ふっ、ああ」

 

その顔が昔よく見たイタズラを成功させた時の顔に似ていて思わず笑みがこぼれた。

 

「おい、その顔はなんだその顔は」

 

「何でもないよ、ただ昔のことを思い出しただけ。」

 

そう言うがどうやら廉太郎、芦花姉、小春の三人にはピンときていないらしく三人の頭には疑問符が浮かんでいた。その姿にまた笑みがこぼれる。

 

「それにしても、この人だかりは何?」

 

最初中を覗き込んだ時からいた、三十人位の外国人を見て、思わず疑問が口から漏れた。

 

「ああ、あれだろ。」

 

「あれ?」

 

俺は思わず三人の方を向く。

 

「伝説の勇者イベントだよお兄ちゃん」

 

「???…なにそれ。」

 

「あれ?まー坊知らない?ほらあの御神刀岩から引き抜くやつ」

 

「あー、話に聞くぐらいなら…」

 

その後の芦花姉の説明をまとめると、この御神刀イベント最初は人数制限が無かったらしいが海外のサイトや口コミで『リアル・アーサー王伝説』として取り上げられ参加する人数が激増、収集が過去つかなかったことがあるせいで今は事前予約制になったそうだ。ちなみに未だに刀が抜けた人は居ないらしい。

 

「ホントに抜けないの?」

 

「ぜんぜん、びくともしなかったよ」

 

「俺なんてあまりにもウンともスンとも言わないもんだから、腹が立って横に圧力かけたけど何も起きなかった」

 

「おいおい、あまり無茶するなよ…」

 

と廉太郎と小春の御神刀イベントの感想に苦笑いを浮かべる。

 

「それに、玄十郎さんイカサマとかって嫌いだからきっとインチキって訳でもないと思うよ」

 

そんな芦花姉の言葉を言われてみればそうだなと思っていると…

 

「よっす、将臣なんばしとると」

 

と宣言通り帰ってきた穂織のターミ○ーター(自称)が怪しい方言で話しかけてきた。

 

「ヒロ…何処に行ってたんだよ」

 

「流された後、舞を見ながらこの世の幸せについて考えてた」

 

と真面目な顔で訳わかんないことを言っていた。こういう所は昔と変わらない。

 

「よっす、ヒロ」

 

「あっ、ヒロ兄久しぶり」

 

「廉太郎はさっきぶり、小春は久しぶりだな。」

 

そんな当の本人は呑気なことを言っていた。

 

「で、こんなところで何を話してたの?」

 

「将臣がよ、あの岩の御神刀抜けないなんて嘘じゃないかって疑ってな…」

 

「ほーん…」

 

とヒロの質問に廉太郎が答えるとヒロはおもむろに叢雨丸方を向き目を少し細めた。

その目に込められた感情は分からなかったが、俺には何か特別な感情が揺れているような気がした。

 

「将臣、よく見てみろ」

 

次の瞬間、ヒロの目に揺れていた感情は消え失せ何時ものような飄々とした笑顔を俺に向けてきた。

 

「お、おう…なに?」

 

「ほれ、見てみろ」

 

ヒロの指さす方を見ると…

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「アッーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

と俺の太ももと同じぐらいの太さの腕の外国人がそれぞれ個性的な声をあげながら、顔を真っ赤にして叢雨丸を引っ張っていた。あれ!?最後の人、ヒロが人混みに流された時に挟まってた人の片割れのような気がする…あっ、さっきの目はそう言うことか・・・

 

「あんなにしてまでやっている人が本気じゃないわけないだろ」

 

「お、おうそうだな」

 

ヒロ…あんな目をするほどムキムキマッチョマンに挟まれるのが辛かったのか…お気の毒に……

 

「…あれ?何で俺は将臣にそんな生暖かい目を向けられているんだ??」

 

大丈夫俺は判っているからな…

 

「ねえ、外国人達を見て何がわかったの!!ねえ、ねえ!何か怖いんだけど!?」

 

ヒロが何か言っているがヒロが言うことも一理ある。と言うことは叢雨丸は………

…まあ、深く考えても俺には関係無い、俺は志那都荘の手伝いに来ただけなんだから。

五人で本殿の入り口近くで話していると腕に実行委員と書かれた腕章を着けた人に怪訝な目で見られた。いけない、いけない

 

「ずっとココにいてもしょうがないから、じいちゃんに挨拶してくるよ」

 

「おう俺達も行くよ折角ここまで来たし、じいちゃんに一言ぐらいは声かけていくさ」

 

と、廉太郎がそう言う…良かった実はまだ、じいちゃんには昔やっていた剣道を辞めてしまった後ろめたさがあって一人で顔を会わせるのが少し怖かったりする。外見では強がっていたがこれは正に渡りに船なので廉太郎達と行くことにしよう

 

「わかった、じゃあ行こうか。」

 

じいちゃんはこちらに背を向けているので後ろから近づく

 

「お久しぶりです。将臣です。」

 

「む?将臣かちょっと待て、荷物はここに運んでおいてくれ頼む。」

 

と一緒の紙を覗き込んでいた実行委員らしい人に指示をすると改めてこちらの方に向き直った。

七十五を過ぎているにも関わらず背筋はシャキッとしている、きっと毎日の竹刀の素振りも欠かしていないのだろう

 

「将臣…」

 

「は、はいっ!」

 

「…そう緊張するな、別にとって食おうなんて思っておらん。」

 

「は、はい…」

 

じいちゃんはただ厳しいだけの人じゃなく、ちゃんと優しさを持っている人だということは頭では判っているけど小さい頃怒られた記憶がなぁ…

 

「将臣、元気だったか?体調は?」

 

「はい、大丈夫です、母も元気ですよ。」

 

「そうか、ならいい。遠い所までよくきたな。」

 

そう言ってじいちゃんは小さく笑う。良かった機嫌は良いみたいだ…

 

「まだ剣道は続けているのか?」

 

「…いえ、もう二年前位からもう……」

 

もしかしたらじいちゃんに『中途半端にしよってからに!!!』と怒鳴られるんじゃないかと内心ビクビクしていると

 

「そうか…、まあ元々健康のために始めさせた事だ壮健ならばよい」

 

と怒られなくて少しホッとした。

 

「ところでじいちゃん、志那都荘の手伝いはどうすればいい?」

 

「明日からで構わん、今日は折角の春祭りだ廉太郎や小春…あと写田くんも居るのかせっかくだ楽しんでこい。」

 

そう言ってじいちゃんは笑いながら腕をくんで言った。さらについでに俺の荷物も預かってくれると言う、初めての春祭りに少し気分が高揚した。

 

「そう言えばじいちゃんあの刀ってホントに抜けないの?」

 

俺は叢雨丸を見ながらそう言う。

 

「お前が疑う気持ちもわかるがペテンではない。」

 

「じゃあ何か抜くコツでもあるの?」

 

「コツでは無く、資格がな…」

 

「??」

 

資格とは何か良くわからないが取り敢えず抜けないのは本当らしい。

 

「そういえば…将臣は、参加したことが無かったな」

 

「え、うん」

 

「なら、やっていくか?」

 

「でも、事前予約制じゃ…」

 

「全員終わったあとなら一人位は融通がきく、せっかくだ、記念だと思ってやればいいそれに写田くん達もやっているしな。」

 

「あー、そういえば廉太郎達もそんなこと言ってたな…」

 

と先ほどの会話を思い出しながらそう言う。

 

「じゃあやってみるよ」

 

「うむ、わかった」

 

そう言ってじいちゃんは叢雨丸の近くにいた実行委員に声を掛けるとその人は笑顔で会釈しながら本殿を後にした。

 

「将臣こい」

 

「うん」

 

そうして俺は叢雨丸の前に立った、間近で見て改めて気づいたが叢雨丸の刀身はギラギラと怪しい光を発しており、やはり本物の刀なんだなと改めて思った。一応御神刀なんだから一礼くらいはしておこう。

 

「じゃあ、触るね」

 

「うむ」

 

じいちゃんの返事の後におもむろに柄に触れる。軽く引っ張る感じ抜ける気はさらさらしない。

 

「ふんっ」

 

と少し力を加えた瞬間……………

 

 

 

『パッキィィィィィィィィィィィィン!!!』

 

 

 

といい音を鳴らして、岩に刺さっている半分を残して上半分が取れた…って折れたぁぁぁぁ!?

 

「「えええええええええええええ!!」」

 

その音に一拍おいて廉太郎と小春の声が聞こえる。その隣にいるヒロに目を向けると…

 

(何かヒロもすごい顔でこっち見てるぅぅぅぅぅ!!)

 

じいちゃんも厳しい顔で何かブツブツ言ってるし、助けて芦花姉!と最後の希望として芦花姉をすがるように見ると

 

「あー、まー坊私ちょっと買わなきゃいけないものがあるの思い出したから…」

 

「あっ、私も一緒に行くよお姉ちゃん」

 

「あ、俺も」

 

と逃走しようとする芦花姉に便乗するように小春と廉太郎が出ていく。従兄妹の裏切りもの、この人でなし!!

 

「ま、まってせめてそばに居るだけでも…」

 

「将臣安心しろ」

 

そう廉太郎が言った後、いい笑顔で

 

「骨は拾ってやる」

 

と言いながら本殿を出て行った。あいついつかぶん殴ってやる。

最後に残ったヒロを恐る恐る見ると

 

「悪い将臣、後でな」

 

と早口でそう言うと本殿の出口の方へ凄い早さで走って行った。

 

「待って、一人にしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

この日の春祭りでは神社の方で二回、男の情けない声が聞こえたとか聞こえていないとか…




やっと将臣くんが叢雨丸を折りましたね、ここまで長かった…
書いてて気づきましたが人数多いと全員しゃべらせるのが大変ですね。今回は少し難産でした。

読んでみたい話を教えて下さい。※需要調査も兼ねてます

  • 日常系
  • 主人公たちの昔話
  • デート回
  • 男子会 定期レポート
  • 穗織人、都会へ行く
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