あっ、8話ですどうぞ(*´∀`)つ
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「おい、待て待て待て、嘘だろおい…」
顔から血の気が引いていく。俺は目の前で起きている出来事が本当だとは思えなかった、いや思いたく無かったという方が正しいか…
「これは流石に笑えねえぞ、叢雨丸が折れた…と言うことはまさか………いや、まだ決まった訳じゃない」
そう自分に言い聞かせるようにそう言う。辺りを見ると廉太郎達は居なくなっており、玄十郎さんも『まさか…将臣が…』と厳しい顔で考えこんでいた。こういう時に頼りになるムラサメ様を探すがどうやら近くに居ないらしい。
「よし、よし、落ち着け俺。心はホットに頭はクールにだ。ムラサメ様は時期に会える…だったら」
俺の為すことはただ一つ…
「悪い将臣、後でな」
とこの状況をイマイチ飲み込めないでいる将臣に一言残すと俺は本殿の出口に向かって走り始めた。
後ろから『待って、置いてかないでぇぇぇぇぇ!!』と情けない声が聞こえたが無視無視、さてと
「まずは安晴さんのところに行かないとな」
家に居てくれよと願いながら朝武さん家に体を向けた。安晴さんは朝武さんーー芳乃さんの父親で建実神社の神主であり、俺の親父の酒飲み友達だ。よく神社のお正月のゴタゴタが終わった後ウチで飲んでいるのを毎年見かける。
50㍍走6秒後半の鈍足を駆使して神社の隣にある朝武さん家の玄関に到着した時俺の息はそこそこ上がっていた。やっぱ俺体力無さすぎぃ!!少し運動しよう。と心の中でそう決心すると息を整えるのもソコソコに多少無礼だが朝武さん家の玄関の扉を勝手に開ける。
「はあ、はあ……誰か居ますか!!?」
と中に向かって大きな声で呼び掛けると
「はーい、何事ですか……ってヒロくん!?」
と家事をしていた茉子がお茶の間から顔を出し目丸くしながらそう言う。どうやら俺が血相を変えて息を荒らげているのに驚いているようだった。そんな顔もかわい…いや、今はそんなこと思っている場合じゃない。
「安晴さんいる?」
「安晴さまなら…」
そう茉子はお茶の間の方に視線を送るとすぐに
「ん?誰か呼んだかな…って大則くん!?ど、どうしたんだいそんなに息を荒らげて?しかも顔色も悪いし…」
と安晴さんがヒョコっと顔を覗かせた。しかも叢雨丸が抜けたことで気が動転している俺の心配もしてくれる。優しい…だが、今はそんなことに感動している場合じゃない
「安晴さん実は…」
「実は?」
「叢雨丸が伝説の勇者で将臣が折れて引っこ抜いて大変なんです!!」
「「うん???」」
と茉子と安晴さんは揃って首をかしげる
「と、取り敢えず叢雨丸が大変なのはわかったから落ち着いて」
「ヒロくん落ち着いて下さい、はい、お水です。」
「あ、ありがとう」
茉子から水を受け取り半分ほど一気に飲んだ後、深呼吸をする、ひっ、ひっ、ふー…よし
「将臣…俺の友達なんですけどソイツが叢雨丸を…」
「叢雨丸を…?」
「叢雨丸を、へし折りました。」
「へー、へし折……って、エエエエエエエエエエエエ!?」
と安晴さんは最初俺の言っている事が理解出来なかったらしく少し遅れてリアクションをする。わかる、俺も最初は目の前の光景が信じられなかった。それは茉子も同じらしく目を見開いている。
「安晴さん落ち着いて深呼吸です!ひっ、ひっ、ふーですよ!」
「ひっ、ひっ、ふー」
「……二人が落ち着いて下さい。それは女子しか使う機会がないですよ…」
そう茉子は落ち着いた様子で言う
「「何で茉子(くん)はそんな落ち着いて居られるんだよ(い)!?」」
と俺と安晴さんが茉子に向かって驚きの目を向けると
「あ~、いわゆる自分よりも焦っている人を見ると逆に落ち着くっていうやつですね。」
そう茉子は言うと『あはー』と苦笑いを溢す。そんな茉子の苦笑いを見ると俺と安晴さんが焦っていたのが変に可笑しなことの様に感じられて俺達は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「オッホン、でその件の将臣くん?…は何処に?」
「将臣なら神社の本殿に居ると思います。」
「他に見た人は?」
「廉太郎に小春、そして芦花姉さん。あと玄十郎さんも見ています」
「玄十郎さんも本殿にいるのかい?」
「…すいません。自分テンパってて確認してません。」
と俺が安晴さんに気まずそうに謝ると…
「プッ、安定のヒロくんクオリティ…」
「う、うるへぇ…」
茉子がすかさず俺を煽ってきた。いつかやり返す。『やられたらやり返す、倍返しだ!!』と某銀行マンのセリフを心の中で言っていると、俺の携帯が鳴った。
「ん?………って親父!?」
おもむろに携帯を見ると俺の親父からだった。電話に出ても良いものかと安晴さんの方にチラリと目線を向けると安晴さんは『出ていいよ』と大きく一つ頷いた。俺は「ありがとうございます」と言うと電話にでた。
「もしもし、親父どったん?」
『あっ、出た出た。どうだい、茉子ちゃんと春の甘いアバンチュールを楽しんで……』
「ふん!!」
…どうやら間違い電話らしい、俺は相手に電話をかけて早々セクハラしてくる様な人は知らない……それにしてもどうして茉子とのラッキースケベを知っているんだ、え、こわっ!
「ど、どうしたんですか?」
俺が携帯に向かって密かに冷や汗をかいていると茉子がおずおずと聞いてくる。
「茉子、これは確認なんだが…」
「はい何でしょう?」
「常陸家以外に今、忍者って居ないよな?」
「?…ええ、そうですよ。でもなぜそんなことを?」
「えーと、あのー、そのー…き、禁即事項です?」
「……はあー、取り敢えず下らない事と言うことだけは分かりました。」
「まあ、そんなつれない事言うなヨ。後でお前の大好きな風呂上がりのアイス、奢ってあげるからヨ」
「何故ラップ風?でも、ほんとですかそれはちょっと嬉し…」
「奢ると言っても、4日前茉子の家に調味料借りに行った時に冷凍庫に入っていたやつだけど」
「え、盗んだんですか?盗んだんですね!」
「失礼な盗んではいない。俺の胃の中に入るまで借りておくだけだ!!」
「何を盗人猛々しい事言ってんですか!!どうりで最近アイスの減りがなんとなく早いなーって思ってましたよ!!」
「あれは大変なものを盗んでいきました…俺の・・・食欲です…」
「当たり前ですよねぇ!そら私のアイス食べているんですからお腹は膨れますよねぇ!」
「はっはっはっ、相変わらず二人とも仲がいいね」
俺達の会話を側で静観していた安晴さんはそう朗らかに笑う。
親父が俺と茉子のことを知っている事から穂織にも他にも草の者的な人が居るんじゃないかと疑ったが茉子の反応だとそんな事は無さそうだ。
それにしても他の忍者が居ないとすると……はっ、まさか親父が忍者であることも微レ存…?
そんな俺の頭の中で再現された親父は何故か茉子の忍者の衣装を着ていた、やめろこっち見るな、ウインクするな、脛毛が気持ち悪い…
恐らく俺の中では忍者と言えば茉子の忍者衣装の方が見る機会が多いからなんだろうが今は俺のムダな妄想力が恨めしい…そう思って頭を振って妄想をかき消しながら改めて思ったことがある…
「やっぱ、茉子は美人なんだな……ってはっ!!」
「なっ、と、と、と、突然何を言うんでしゅか!!」
「いや、お、俺はわざと言った訳じゃっ!つい心の中の言葉が漏れたと言うかなんと言うか…ってこれ俺墓穴掘ってる!?」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
と茉子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。こういう時になんて声をかけるべきか判らず俺がアワアワしているなか安晴さんは、「いや~若いね~」と生暖かい目を向けて何も言おうとしない。
この混沌とした状況を救ってくれたのは皮肉にもこんな状況を作った人によってだった
そう、俺の親父からの電話である
『ちょっと、大則!いきなり切るなんて酷くないかい!?なんかそう言う所お母さんそっくり!』
「……おう、ありがとう」
『あれ?なんか疲れてる?』
「親父に対する怒りと感謝の気持ちが混在してるだけだ」
『なんか、理不尽!?嫁にはパシらされるし、息子には心当たりの無い怒りをぶつけられる果たして僕の救いは何処に…』
「…で、親父は何で電話してきたの?」
少し親父がかわいそうになってきた。お袋たまにはデレてやれよ…
『それはもちろん息子の恋路の確認と言うのはう…』
「あっ、思い出した…何で茉子と何か会ったこと知ってんの?」
と茉子と安晴さんに聞こえないように小声で聞く。
『えっ、ホントに何かあったのかい!?』
「えっ、嘘、カマかけ!?」
『どこまで進んだんだい!A越えた?越えちゃった!?お母さーん、大則が!大則が…』
「お袋にはやめっ…!」
『え~』
「え~じゃない、そんな事は無かったから…」
『何があったか詳しく聞いても?』
「それは飲めない相談だ。で、散々逸れたけど何で連絡してきたの?」
俺は少しげんなりしながら言う。
『あー、玄十郎さんから叢雨丸が折れたとか何とか聞いたから今、建実神社に向かっているよ』
「しっかりしろよ専門家」
『大則だって研究家だろう』
「俺は親父のまとめた資料を読んで知ってるだけだよ。まあ、親父が呼ばれるのはなんとなく予想してた」
俺の親父はまあ、話せばいろいろ複雑なんだが要は穂織の呪いの研究のパイオニアだ。家は無駄に歴史が長いせいでその手の資料が割りとある。玄十郎さんはおそらく叢雨丸が抜けたことによる呪いの影響について聞くつもりなんだろう。
『大則も建実神社に居るんだろう?後でね。』
「わかったじゃあ後で」
そう言って俺は電話を切った。玄十郎さんも親父に電話したってことは時期にこっちに来るだろう。さて…
「親父も今、こっちに向かっているらしいんで全員揃ったら一回話し合いましょうか。」
「そうだね、その件の将臣くんの待遇をどうするか考えないといけないし…それに呪いについても…ね」
「では私、芳乃様呼んできますね♪」
安晴さんの顔が少し暗くなるが、茉子があえて明るい声を出して空気を変える。茉子の持ち前の明るさはホントこういう時にありがたい。
「…茉子くんに気を使わせたかな。ゴメンね大則くんも辛いのに」
「いえ、一番辛いのは安晴さんでしょうし…」
茉子を見送りながら安晴さんはそう言う。
穂織の呪いはいろんな所に影を落としている。俺たちがそれを気にしないで生きていけるのは一体いつになるのだろうか…そんなことを考えてしまったのを忘れるように俺はコップに残った水を煽った。
水はこの春の陽気のせいかぬるく感じられた。
すごく今さらだけど茉子の「あはっ」の使い処に悩むZE!
読んでみたい話を教えて下さい。※需要調査も兼ねてます
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