げんだいフレンズ   作:井戸ノイア

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前編


10話

「本日、長野県にて、ツチノコが発見されました。体長は50cmほどで……」

 

 テレビを見ていたらそんなニュースが流れていた。最近、絶滅した動物が目撃されたなどのニュースが多かったのだが、捕獲されたのは初めてだ。そういえば、ここにはツチノコはいないな。もちろん、いない種のほうが多いが。

 そうして過ごしていると珍しくキタキツネが話しかけてくる。

 

「ねぇねぇ、ここでゴロゴロするのも飽きたし、外行こうよ」

「ばれるから無理」

「そんなこと言ったって、大した遊び道具も無いし、そろそろ身体を動かしたいよ」

 

 我がままを言うキタキツネ。そもそもキタキツネが見つかると面倒だからという理由で匿っていたはずなのだが。外に出るのだって、ここにいて家族が心配するのではないかと聞いて連れ出そうとしても、いつも家族とか興味無いと返されて行かなかったのに。

 

「ここに勤めていたけど、実家は近い?」

「うーん、そう遠くは無いよ」

「実家に一度顔を出すというなら、外に出ることを考える」

「えぇ」

 

 露骨に嫌そうな顔をするキタキツネ。そんな俺たちを見かねたのか、熊手で素振りをしていたクマさんが声をかけてきた。なお、クマさんは仕事を完全に諦めた模様。数日前、遂に音を上げて投げ出した。

 元々、数日で仕事場から解雇通知が来ていて、泣いていたところを見かねた職員がここの帳簿などをまとめることを頼んでいた。しかし、日が経つにつれて嫌々行うようになり、とうとう辞めてしまった。

 最近では素振りをしたり、逆立ちをしてみたりと、運動することに精を出している。

 

「運動したいなら組手でもするか? 最近、力の使い方も分かってきてな」

「あーあー、急に実家に顔を出したくなってきたな」

 

 見かねた訳では無かったか。クマさんに勝負をお願いされて死にかけた俺を見ていたからか、グイグイと俺の腕を引っ張って逃げ出そうとする。クマさん強いからなぁ。

 

「分かったから落ち着け」

 

 と、キタキツネが落ち着くまで数分。同じキツネ同士通じるものがあるようで、ホッキョクギツネが介抱をしている間に俺は偵察をしてきた。周囲に職員の影無し、入口には常に警備員が控えているが問題は無い。フレンズの身体能力ならば壁を乗り越えることだって可能だ。

 

「大丈夫そう?」

「大丈夫。出て来て」

 

 キタキツネが外に出てきて建物の裏へと回る。そして、数メートルはある壁をピョンとひとっ飛び。無事に見つからずに外に出ることが出来た。

 その後を追って俺も乗り越え、ホッキョクギツネも乗り越える。クマさんとウサギさんは俺たちがいないことに職員が気づかないように誤魔化す役として残ってもらった。

 

「無事に出れたー」

「良かったです」

「さて、キタキツネの実家に行こう」

「……本当に行くの?」

「当たり前だ」

 

 まだ若干嫌がっているキタキツネだが、案内を始める。別に俺たちが行く必要は無いが、放っておくと、逃げそうだしな。

 

「そういえば、二人とも実家に戻ったことあるの?」

「私たちは全員ありますよ」

「どんな反応された?」

 

 そう言われて思い出そうとする。ホッキョクギツネも思い出そうとして……二人同時に同じ結論に至った。

 

「「覚えてない(です)」」

「人に行かせようとして覚えてないの……」

 

 人だった頃の思い出はたくさんある。しかし、フレンズになってから記憶がそう長くは続かなくなった。何度も会っていたり、続けていたりすることは覚えているが、一度きりのことなどそうは覚えてはいない。そして、それをどうでも良いと思っている自分がいる。

 

「それでも、一度は会うべき。俺たちのためじゃなくて、家族のために」

「そうです。私たちはこんな姿になってしまったけれど家族はきっと心配しています」

「そうかもしれないけど……」

 

 まあ、俺も行った時は知らない親戚の葬儀に出ているような気分だったからな。面倒な気持ちはよく分かる。しかし、俺の姿を見て泣いたり、異常は無いか聞いてくる人を見るとやっぱり一度は行かなきゃと思うのだ。

 そうやって話して歩いていると、キタキツネがこっち、と言って駅に入っていく。

 

「ちょっと待ってください。電車を使うのですか?」

「うん? そうだけど」

「……無理」

 

 キタキツネは大丈夫かもしれない。

 だが、俺たちが暖房の効いた電車なんて乗れるか!

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