げんだいフレンズ   作:井戸ノイア

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けものフレンズへの持論が言いたかったのだ


最終話

 ガチャリ

 手に持った鍵を玄関で使えば、そんな音と共に扉が開く。

 

 時刻は深夜。

 目の前の家は一見、どこにでもあるような、普通の民家だ。

 しかし、その中身は違う。ここには、俺たちをフレンズに変えた科学者が住んでいるらしい。

 

 あの電話は中嶋さんからのものであった。

 以前、事件を起こした人間に会いたいというお願いをしてから、彼は施設に通いつめ、ここのことを聞き出してくれた。

 あれだけ多くの人間を巻き込んだのだから、刑務所にいるかと思った。何でもフレンズ化の原理は全てを発表しても、誰も理解出来ず、未だに全てのフレンズの命を握っているに等しい状態であるため、こんなところいるらしい。

 周囲には俺以外の人影は無い。深夜は皆、寝てしまうので抜け出すのも容易であった。

 

 

 廊下を進むと、明かりの灯った部屋が見えてくる。

 俺はドアノブを回して中に入った。

 

 中にいたのは白衣を着た痩せこけた一人の男だった。眼鏡をかけ、部屋には最低限の灯りだけが置かれ、ビーカーに向かって真剣に睨んでいる。

 その眼には生気があまり感じられない。

 俺が入ってきた音に気付いたのか、一瞬こちらを見て、目を見開かせて、それからまたビーカーに向き直った。

 

「いつかは来ると思っていたよ」

 

 男はこちらに視線を向けずに話し始める。

 

「それで、何かな? そんな姿にしたことに対して復讐でもしに来たのかね?」

「いや、そんなつもりは毛頭無い」

「いや、分かっているんだ。君たちは与えられた環境に文句を言わない。過ぎたことは仕方ないと前を向かって生きている。フレンズとは、そういうものだ」

「何が言いたいんだ?」

「君ももう分かるだろう。君たちは誰一人として現状をそのままに受け入れ、あらゆる事柄に見返りも求めない。それなのに人類は被害者である君たちにさえ、技術を求め、未知を求め、兵器を求め、窮屈な暮らしを強いている。人の欲望は留まるところを知らずに、醜い争いを続けるだろう。最初は、ただの憧れや、より良い人類のためにと研究をしていた。しかし、君たちを見ているうちに気付いてしまったのだ。どれだけ、人類が進歩しようとその醜さは変わらない。だったら……全ての人間が君たちのような存在になれば、それはそれは素晴らしい世界だとは思わないかね?」

 

 そう言い切ってこちらに視線を向けた男の眼は澱んでいた。ある種の狂気に飲まれているようで、それだけが、正しいことであると思い込もうとしているような。

 

「だが、誰も共感してくれない。こんなにも醜い世界を救済するためだというのに、誰も! なあ、私はどうしたら良いんだ? どうしたら私は、この世界を救済出来る?」

 

 本当はこんなに重たい話をするつもりじゃ無かったんだけどなぁ。俺の持っているじゃぱりマンへの疑いなどが解ければそれで良い、と思ったらこんな話になっている。まあ、これだけフレンズを求めているなら、変なものは入れてなさそうだけどさ。

 

「そうだなぁ……」

 

 気恥ずかしさから頭を掻き、俺は思っていることを告げた。

 

「なんていうかさ、人間を悪と断定してるみたいだけどさ。人間にだって良い人はたくさんいるんだよ。それを一緒くたにして、駄目なんて言うのは間違っていると思う。もちろん、悪い人もいれば良い人もいる。けど皆人間なんだから、良い所もあれば悪いところもあるのは当然なんだよ。皆、得意なことが違う。大事なのは、皆の良い所を認め合って行くことだと俺は思う。まあ、それが一番難しいことではあるんだけどさ」

「そうか……。そうだよなぁ。私もけものフレンズを見て、皆自分の良いところを活かして生きていることに感銘を受けたんだよなぁ。ああ、最初に見た時は楽しかったな」

「まだ、やり直せるさ。フレンズは誰一人として、貴方を恨んでなんかいないはずだ。俺も、嫌な勉学から開放されて、清々してるよ」

「ははは、やっぱり優しいな。ありがとう、こんな私の話に付き合ってくれて」

 

 それから少しだけ雑談して、フレンズ化の謎理論に驚いたり、じゃぱりマンの効能について知ったりして、夜は更けていった。

 そして、施設に戻ると、周囲がまだ暗い中、ホッキョクギツネだけは起きて俺を待っていた。

 

「ようやく帰って来ましたね。待ちくたびれましたよ」

「すまん、すまん。思ったより話が長引いたんだ」

「まあいいです……おや、後ろにいるのは?」

「ああ、紹介するよ。新しくここに来ることになった……」

 

「ギンギツネよ。よろしくお願いするわ」




ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
人生で初めての1万字オーバー小説の完結です。

こうやって書いていて、一つ心境の変化がございまして。
折角感想を頂いたのに、ネタなどが分からずに返すのが苦手ということで返信を怠っていたことを深く、反省致しました。
感想は小説の原動力であり、また最も感謝を告げなければいけないことに気付きました。数ヶ月前の感想への返信などは迷惑かと思いますので、ここでお名前を上げさせていただきます。

chisa様、変わり者様、ボルドーワイン様、一般読み手様、鯖鮭様、リヌ様、ひね様様、Nyarlan様

 本当にありがとうございました。
 そして全ての読んでくださった方々へ感謝の念を。
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