しばらくして車がいっぱいになると扉が閉まり、動き出す。
周囲の人たちの反応は大きく分けて二つに分かれていた。
一つは未だに呆然としている人たち。もう一つはまるで楽しいことであるかのように、近くの人と笑いながら話す人たち。
こんな事態になってしまって何が楽しいのだろうか。それとも何か知っているのだろうか。
俺はたまたま隣に座っていた、楽しそうな雰囲気を醸し出している人に話かけてみた。
「な、なぁ。なんだか楽しそうだけど何か知ってるのか?」
「おや、あなたはこの姿のことを知らないフレンズなのですか」
そう言ってこちらに顔を向けたのは灰色の羽のようなものを持つ人だった。
「フレンズ……?」
「そうなのです。私はアフリカオオコノハズクのフレンズです。ハカセと呼んで欲しいのです」
「……ハカセ?」
「ハカセです。我々はかしこいので!」
そう言ったハカセの顔は非常に満足げであった。その言葉を聞いた近くの楽しそうな人たちもおお、と感嘆の声を上げ、小さな拍手が起きる。
「あなたはきっとけものフレンズという作品を知らないのです。端的に言えば我々は皆その作品のキャラクターと同じ容姿になっているのです。我々はヒトの特徴を得た獣、フレンズになっているのです!」
そうしてけものフレンズとやらの良さを語り始めたハカセ。語尾の『です。』が外れているところ、先ほどの話し方はキャラ作りということだろうか。
しかし、フレンズか……。もしかして俺も何かの動物がモデルになった存在になっているのだろうか。
「ハカセ、俺がその、けものフレンズ? の何のキャラか教えてくれないか」
「……いいですよ。あなたは……ホッキョクオオカミのフレンズです!」
……言われてもピンと来なかった。
「アニメ未登場のキャラまで私は全キャラ網羅しているから答えられるのです。賢いので!」
まあ、これ以上聞いても仕方ないだろう。思い入れのあるキャラになって今は熱冷めやらぬという状態だ。俺のような作品を全く知らない人間からすれば、ただただ不安なだけであるし、容姿が全く別になってしまうというのは自分という個性の喪失に等しい。
説明が成されるにせよ何にせよ、早く元の姿に戻りたいものだ。
……戻れるよな?
今更ながらに不安が募ってくる。大丈夫なはずだ。常識的に考えればあんな光の粒に触れた程度で姿が変わるなど有り得ないだろう。
そうして、現状に現実味が帯びてきたところで車が停止する。
降りるとそこはどこかの体育館のようだった。
冬ということもあり、床はとても冷たい。なのに、その冷たさが心地よく感じる。ヘソ出しという服装なのに何故か冷気が気持いい。
一方で大きな耳をしたフレンズ? などは寒そうに腕をこすり合わせている。
ひんやりとした体育館に、非常に寒がるフレンズもいれば、むしろ暑いと言わんばかりに服をパタパタとしているフレンズもいて、反応は多種多様だ。
次々と様々な姿かたちをしたフレンズが運ばれてくる。
そうして手持ち無沙汰に待つこと小一時間。
壇上に一人の男が現れた。
「えー、皆様非常に混乱されているかと思いますが、まずはご清聴ください。」