げんだいフレンズ   作:井戸ノイア

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5話

 あの事件からひと月ほどが経った。

 未だに元の姿に戻る当ては無いようだが、ほとんどのフレンズ化した人々は元の生活へと戻ることが出来ていた。研究資料を世界中に公開し、現在は各国が解決にあたっているらしい。

 ほとんどの、と言うように一部のフレンズは元の生活に戻れないでいる。

 理由は様々だが、一番の原因は環境。

 その際たるものが俺たち、ホッキョク組だ。

 

「あー、ずっと部屋にいるだなんてなんだかニートになった気分だな」

 

 クマが愚痴を言う。致命的なことに、フレンズ化するとそれまでの常識はあっても、思考は動物寄りになるのか、名前という個の概念を覚えられなかった。故に、クマさん、ウサギさん、キツネなどと種の概念で相手を捉えている。

 

「でも、今の感覚だとこれが普通に思えてしまうので、怖いですよねぇ」

 

 ウサギさんはカタカタとパソコンを打っていた手を止めて言った。会社員だったウサギさんと、クマさんはここでも可能な限りは仕事をしていたいらしい。

 大学生組の俺とキツネはというと、暇を持て余していた。勉強もしたくないし、かといってこの冷凍室から出ても暑さですぐに参ってしまう。まだ、外気温は大丈夫だが、ほぼ全ての建物が足を踏み入れた瞬間アウトだ。

 

「あのう、もう少し温度下げても良いですか? もっと涼しいほうが好きなんですよ」

「キツネは何かと温度を下げようとするの止めよう」

 

 こんな感じで暇過ぎて室温をどんどん下げる毎日だ。今は-30度まで来ている。当然、食材の保存に向くような温度は通り過ぎているので、中身は撤廃され、俺たち四人用の部屋となっている。置いてあるソファーや絨毯は気温のせいでカッチコチ。全く柔らかくない。

 テレビとパソコンは隣の部屋に置いてあり、壁に開けられた穴から手だけを出して操作する形だ。極寒の地では電子機器もまともに動かせないらしい。

 当然食べられるものも制限されるのかと思えばそこは違った。例の科学者は俺たちに関することだけは積極的に協力をするようで、監視の元ジャパリまんなる、万能食を作り出したらしい。今は一日の終わりに意見を提出することで、好きな味のジャパリまんを出して貰える。これがまた美味しくて、毎日同じ味を食べたとしても飽きがトンと来ない。

 いちおう頼めば料理も出してくれるのだが、極寒のこの場所では熱いものなど一瞬で冷めてしまうし、元となった動物ごとに食べられないものなどもあってややこしい。故にジャパリまんには感謝している。

 

「けど、いい加減だらだらしてるだけじゃ駄目だ。何かしないと」

「勉強したくないです。働きたくないです。何もしたくないです」

 

 キツネはここに来て、サボり癖が爆発していた。一日のほとんどを寝たり、ゴロゴロして過ごしている。まぁ、俺も似たようなものだから、人のことは言えないのだが。

 

「だいたい、どこの建物にも入れないのにやれることも無いじゃないですか。もう少し暖かくなってくると、外に出ることも困難になりますよ」

「そうなんだけど。……よし、出られるうちに外に遊びに行こう」

 

 唐突の閃きから俺はキツネを引きずって外へ出かけることにした。部屋の出入りに関しては特に制限も無い。

 

「それじゃぁ、行ってくる」

「くれぐれも建物にだけは入らないようにしろよ。人の時の癖で入っちまうかもしれないからな」

「そうですよー、気をつけてくださいね。私たちはもう少し仕事があるので、楽しんで行ってらっしゃいですぅ」

「あー、クマもウサギも助けてくださいーーーー」

 

 ずるずる、嫌がるキツネを引きずった。




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