げんだいフレンズ   作:井戸ノイア

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ホッキョククマ(カチ、カチ……温情で仕事は貰っているが、とてもじゃないが、仕事しているなんて言えないタイピング速度だ……)

ホッキョクウサギ(カタカタカタ、なにかこうなる前よりも調子が良いんですよねぇ~)


6話

 冷凍室を出るとやはりというか、外のほうが暖かい。

 まだ冬だから熱が篭るというほどではないが、夏は本当に一歩も出られなくなるだろう。

 

「ねぇ、やっぱり外は暑いですよ。戻りましょうよ」

「止めろよ、変な目で見られる」

 

 冬に外が暑いなどただの変人だ。

 と言っても発言よりも物珍しさで見られるような気もするが。大勢の人がフレンズになったとはいえ、せいぜい100人程度。その全員が東京に固まっているわけでもないため、好奇の目線に晒されることはあるかもしれない。

 しばらく歩くことでフレンズ用の施設の出口が見える。冷凍室を始めとして、熱帯の環境や、砂漠の環境などを再現している施設で、現在は20人程のフレンズが暮らしているらしい。生活するために必要なものや、お小遣いという形で自由に出来るお金を貰える変わりに、定期的に血液採取や運動能力テストなどを行っている。

 出入り口に立っている看守さんに散歩に行く旨を伝えて外に出る。攫われる危険なども多少はあるため、目的を伝えることは必須だ。

 

「ところで。キツネはそろそろ自分の足で歩け」

「えぇ、めんどくさいです。外に連れ出したのはオオカミなんですから、最後まで引きずってってください」

「キツネはそれでいいのか……」

 

 もはや引きずられることに抵抗もせずにずるずると地面を擦るキツネ。パソコンで自分たちの元となったキャラは調べたが、こんなに物ぐさな性格ではなかったはずなのだが。動物の習性を無意識にしていたり、キャラクターの口調に気づけば段々近づいていっているとはいえ、元の性格の影響は受けるということなのか。

 そういえば、自身の容姿という個性が変化してしまってもそんなに気にならないのは既に動物的思考に寄っているからかもしれない。どこまでフレンズの影響を受けるのかは全くもって謎である。

 

「それで、無理やり外に連れ出しておいてどこに行くつもりですか」

 

 引きずるのを止めて手を離したら地面にぐでんと伸びていたキツネはようやく立ち上がった。どうやら、諦めて付き合う気になったらしい。

 

「まだ、あまり決めてないな。だが、目的が一つある。せっかくだからけものフレンズのDVDを借りて皆で見よう」

「それって、店に入る必要がある気がするのですが」

「覚悟を決めて少しくらいなら大丈夫なはず……」

 

 俺たちはまだアニメ「けものフレンズ」を見ていない。誰もアニメに登場していないことは知っているのだが、何だかんだ見る機会が無くここまで来てしまった。例え登場はしなくても、単純に元となったアニメを知りたいという気持ちが強い。

 

「というわけでビデオショップに行こう」

 

 近場は、と持ってきた自分の携帯で調べようとする。電源ボタンを押して起動させるとパスワードが要求される。ここからが勝負だ。オオカミになったせいか文明の利器を扱おうとすると非常に集中しなければならない。簡潔に言えば不器用。

 テレビのリモコンを操作すれば何故か全く関係無いボタンを押してしまい、パソコンを触ればキーボードは全く打てない。携帯で数字を打つのにも一苦労だ。これでも最初よりはだいぶ早くなった。

 

「ふぅ……」

「何やってるのですか。ちょっと貸してください」

「あっ」

 

 と、横からキツネに携帯を取られた。そしてキツネは片手でポンポン画面を操作して、すぐにビデオショップの場所を調べ上げてしまった。

 

「本当にオオカミは不器用ですね」

「仕方ないだろ! 指が勝手に動くんだ!」

「吼えないでください。うるさいです」

 

 最近はこれでも少しは操作出来るようになってきたんだ。なお、字に関しては書くことを諦めた。ひらがなを書いたはずがピカソになっているのはどうしようもない。

 

「そんなに落ち込まないでください。ほら、行きますよ」

「くぅ~ん」

 

 

 

 

 そして歩くこと十数分。変な時間に出てきたからか、全く人に会うことなくビデオショップに到着した。

 自動ドアの横に立ってキツネと相談する。

 

「さて、来たわけだ。きっと店内は暖房がかかっている」

「うん。だからがんばってください」

「まぁ、誘ったのは俺だから頑張る。大丈夫そうだったら帰りにアイスも買って帰ろう」

 

 キツネは入口が見える位置で待っていてくれる。後は俺が覚悟を決めるだけだ。

 自動ドアの前に立つ。ドアが開いていくのがやけにゆっくりに感じる。次の瞬間、感じたのはとてつもない熱気。まるで突然熱湯に叩き落とされたかのような熱さが襲ってくる。

 まだ入ってもいないのに、息が苦しくなってくる。俺はたまらずドアの前から退避した。

 

「何してるんですか」

「いや、あれは無理だ。キツネも立ってみれば分かる」

「そんな大げさな……」

 

 そのすぐあと、キツネも撃沈されて戻ってきた。

 

 

 

「どうする」

「諦めるしかないんじゃないですか」

「クッ、ここまで来たのにあと少しが遠い……」

 

 ヒソヒソと店の前で相談をする。すると、俺たちの行動を訝しんだのか中から店員が外にやって来た。

 

「あの、どうなさいましたか?」

 

 キツネは扉に背を向けていたからか、気付かなかったようで耳をビクンと伸ばして驚いていた。ちょっと面白い。

 

「ああいや、DVDを借りようと思ったのだけれど熱くて店に入れなくて」

「ああ、もしかしてフレンズの方ですか? 初めて見ました。暑くて入れないというのはそれが理由でしょうか」

「元々北極に棲むような動物が元になっているから暑さには弱い」

 

 そう説明すると店員は少し考えてから、良ければ借りて来ましょうか? と返してきた。

 

「いいのか?」

「はい、そういう理由でしたら仕方ないですし、カードと借りたいDVDの題名を教えていただければ持ってきますよ」

「お願いすればいいんじゃないですか? どうしたって店に入れないのは事実ですし」

「そうだな……少し悪い気もするが、頼む」

 

 こうして、俺たちは無事にDVDを借りることが出来た。

 

「ありがとう」

「いえいえ、これくらいお安いご用です」

 

 用も済んだのでキツネと帰ろうとすると、店員が呼び止めてくる。何だろうかと聞けば、仕事には全く関係無いが良ければ耳を触らせて欲しいと頼まれた。

 耳、そういえばこんなものが付いているというのに今まで意識したことが無かったな。先ほどの驚いた時もキツネの耳がビクリとしていたし、案外俺も無意識の内に動かしているのかもしれない。

 俺はふにふにと柔らかい自分の耳を触りつつ、あまり乱暴にしないならと応えた。

 

「では失礼して……わぁ、もふもふです」

 

 ぽふ、と頭の上に手が置かれわしゃわしゃと撫でられる。意外と気持ちが良い。犬が撫でられる時はこんな気持ちなのだろうか。

 

「オオカミの顔はもうとろとろですね」

「わふぅ」

 

 ふさふさ

 

 このあと、キツネも撫でられてとろけたり、流石にコンビニに入るのは諦めて、トボトボと帰ったりして、北極組でけものフレンズの視聴をした。

 作りは荒いが面白かった。




アニメとかアプリの情報とか見ると、フレンズは意外と様々な地域で活動出来るようですが、本作品ではその動物に合った環境から離れた環境ほどに大ダメージを負うという設定になっています
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